73 / 125
第75話 王都武闘大会、初陣の喝采
しおりを挟む
Cランク冒険者となり、ギフトレベルも【3割】へと成長を遂げたアルト。
彼は王都アステリアでの活動基盤を固めつつ、次なる目標、Dランク、いや、いずれはさらにその上を見据え、日々の鍛錬と情報収集に励んでいた。
そんな折、王都全体がにわかに活気づき始める出来事が起こった。
年に一度、王国で最も盛大に開催される「建国王祭」が間近に迫っていたのだ。
街の至る所に色とりどりの旗が飾られ、楽団の陽気な音楽が鳴り響く。
そして、その建国王祭の数ある催しの中でも、特に冒険者たちの注目を集めるイベントがあった。
王都冒険者ギルドが主催する、「王都武闘大会」である。
ギルド本部の巨大な掲示板には、大会の開催を告げる羊皮紙が、ひときわ大きく張り出されていた。
『建国王祭奉納 王都武闘大会 開催! ランクB以下の冒険者よ、集え! 力と技を競い、最強の栄誉と莫大な賞金を掴み取れ! 上位入賞者には、王立騎士団への推薦、有力貴族からの後援の道も開かれる!』
その告知文は、多くの冒険者たちの心を熱くさせた。
アルトもまた、その一人だった。
「武闘大会か……」
掲示板を見上げ、アルトの胸は自然と高鳴った。
今の自分の実力が、この王都の数多いる猛者たちを相手に、どこまで通用するのか。
手に入れたばかりの黒き剣「黒曜」、腕に装着したバックラー、そして3割へと成長したギフト【ダメージ反射】。
それらを、魔物相手ではなく、技術と経験を持つ人間相手に、この大舞台で試してみたい。
もちろん、Cランクになったばかりの自分が、簡単に勝ち進めるとは思っていない。
上位には、Bランクという、自分よりも遥かに格上の冒険者たちも参加するだろう。
優勝など、夢のまた夢だ。
それでも、この大会に参加することで得られる経験は、計り知れないものがあるはずだ。
強者たちの戦いを間近で見ること、そして、自分自身の限界を知ること。
それは、今後の成長にとって、何物にも代えがたい財産となるだろう。
その話をギフト研究家のエリアーヌにすると、彼女は案の定、目をキラキラと輝かせた。
「まあ!王都武闘大会ですって!?素晴らしいじゃありませんか、アルトさん!ぜひ、ぜひ参加なさってくださいまし!」
彼女は興奮気味に続ける。
「ああいった極限の緊張状態、観衆の視線、そして強敵との真剣勝負!それこそ、あなたのギフトに眠る未知なる力…あの神秘的な麻痺効果が、再び発現する最高の機会かもしれませんわ!ああ、考えただけでもゾクゾクしますわね!わたくし、最前列でしっかりと応援、いえ、観察させていただきますから!」
エリアーヌの(研究者としての興味が大部分を占めるであろう)熱烈な後押しも、アルトの決意をさらに固めさせた。
アルトは、迷うことなく武闘大会への参加登録を済ませた。
参加資格はランクB以下。
Cランクになったばかりのアルトも、問題なく参加できる。
大会までの残された数週間、彼はこれまで以上に厳しい訓練に没頭した。
故郷の師、バルガスの教えを思い出す。
特に対人戦における間合いの重要性、相手の呼吸や視線の動きを読む洞察力、フェイントを見抜き、それに対応する技術。
アルトは、ギルドの訓練場で、仮想の敵を相手に、剣と盾の連携を繰り返し練習した。
防御から攻撃へ、攻撃から防御へ、流れるような動きを体に叩き込む。
ギフトとの連携も、対人戦を強く意識して磨き上げた。
相手の武器による攻撃を、剣や盾で受け止め、カウンター反射で武器ごとダメージを与え、相手の攻撃のリズムを崩す。
衝撃波(仮)による牽制や、一瞬の目くらましのタイミング。
そして、もしもの時の切り札となるかもしれない、あの麻痺効果の発動条件の模索…。
エリアーヌも、時折訓練場に顔を出し、アルトの動きやギフトの発動状態を熱心に観察し、魔物学や古代遺物の知識に基づいた、独自の(そして時に突拍子もない)アドバイスを送ってくれた。
そして、ついに大会当日がやってきた。
王都の中心に位置する、巨大な円形闘技場(コロッセオ)。
そこは、朝から熱狂的な観衆で埋め尽くされ、地鳴りのような歓声と期待感で満ち溢れていた。
闘技場の上空には、王国の旗や、有力貴族の紋章旗、そして冒険者ギルドの旗などが、青空の下で勇壮にはためいている。
楽団の奏でる、血沸き肉躍るような勇ましい音楽が、会場全体の興奮をさらに高めていた。
観客席には、王都の一般市民や商人たちに混じって、ひときわ華やかな衣装を身にまとった貴族たちの姿や、整然と隊列を組んで観戦する王立騎士団の銀色の鎧も見える。
この大会が、単なる冒険者の腕比べではなく、王国全体が注目する一大イベントであることがうかがえた。
闘技場の地下にある、広大な控え室。
そこには、アルトと同じように、この大会で己の力を証明しようと集まった、数多くの冒険者たちがひしめいていた。
歴戦の風格を漂わせる屈強な戦士。
影のように素早い動きを見せる斥候。
神秘的なローブに身を包み、杖を携えた魔術師。
その誰もが、確かな実力と、勝利への渇望を漂わせている。
アルトは、その場の圧倒的な熱気と、強者たちの放つオーラに少し気圧されながらも、同時に、武者震いにも似た興奮を禁じ得なかった。
やがて、予選トーナメントの一回戦の組み合わせが発表された。
アルトの名前が呼ばれ、対戦相手が告げられる。
相手は、アルトと同じくCランクに所属する冒険者。
腰に下げたプレートには、長槍の紋章が刻まれている。
体格が良く、頑丈そうな鎧を身に着けた、経験豊富そうな男だった。
観衆の大歓声に迎えられ、アルトは闘技場の中央へと歩み出た。
足元の硬く踏み固められた土の感触。
観客席から降り注ぐ、無数の視線。
初めて経験する、大舞台の空気だ。
対峙する槍使いの男。
その目には、確かな実力への自信と、同時に、アルト(まだ若く、王都では見慣れない顔だ)に対する、わずかな油断の色が見て取れた。
「両者、前へ!礼!」
審判を務める、ベテランのギルド職員の声が響く。
アルトと槍使いは、互いに向き合い、騎士の礼に基づいた短い挨拶を交わす。
「始めっ!!」
審判の鋭い声と共に、試合開始のゴングが鳴り響いた!
槍使いは、その長いリーチを最大限に活かし、試合開始と同時に鋭い突きを連続で繰り出してきた。
風を切る穂先が、アルトの顔面、胸元、足元へと、立て続けに襲いかかる!
(速い!そして、的確だ!)
アルトは冷静に、ショートソード「黒曜」と、左腕のバックラーを巧みに使い、その槍の穂先を捌いていく。
受け流し、弾き、あるいはステップで回避する。
魔物相手の戦いとは、明らかに勝手が違う。
相手には知恵があり、技術があり、そして駆け引きがある。
対人戦の難しさと面白さ。
アルトは、試合の序盤で、早くもその洗礼を受けていた。
相手の突きをバックラーで弾き返し、アルトは一瞬の隙を突いて懐に潜り込もうとする。
しかし、槍使いも熟練者だ。
巧みに間合いをコントロールし、アルトに決定的な攻撃の機会を与えない。
槍の石突き(柄の末端)を使った牽制や、足払いなども織り交ぜてくる。
観客席からは、一進一退の攻防に、大きな歓声が上がっていた。
焦れたのか、あるいはアルトの実力を侮ったのか。
槍使いが、渾身の力を込めた一撃、体を大きく捻り、薙ぎ払うような軌道を描く横殴りの突きを放ってきた。
その動きは大きいが、威力は絶大だ。
(ここだ!)
アルトはその攻撃を、あえてバックラーで受け止めた。
左腕に、骨が軋むほどの衝撃が走る。
しかし、耐えられる!
そして、受け止めた瞬間に、全神経を集中させ、ギフトを発動!
「反射ッ!!」
盾越しに放たれたカウンター反射の衝撃が、槍の穂先から柄を通して、槍使い自身の腕へと逆流する!
「ぐおおっ!?」
槍使いは、予期せぬ内部からの衝撃に、驚愕の声を上げた。
腕が痺れ、槍を持つ手に力が入らない。
体勢が、大きく崩れる。
アルトはその決定的な隙を見逃さなかった。
素早く踏み込み、ショートソード「黒曜」を閃かせる。
狙いは、相手の胴鎧の隙間。
アルトの鋭い一撃が、槍使いの脇腹を浅く、しかし確実に捉えた!
「ぐっ……ま、参った……」
槍使いは、脇腹を押さえながら、苦痛に顔を歪め、降参の意を示した。
「勝者、アルトォォーーッ!!」
審判が高らかに勝者の名を告げると、闘技場全体から、アルトの勝利を称える大きな拍手と歓声が沸き起こった。
派手さこそなかったかもしれない。
堅実な守りから、一瞬の隙を突いてカウンターで仕留める。
しかし、その戦いぶりは、観客に強い印象を与えた。
特に、攻撃を受け止めてそのまま相手に返すという、【ダメージ反射】のユニークな戦法は、多くの人々の興味を引いたようだ。
貴賓席の一角。
壮年の貴族が、隣に座る、厳つい顔つきの騎士団長らしき人物に、興味深そうに囁いていた。
「ふむ、なかなか面白い若者がいたものだな。あの最後の妙な技は……ギフトであろうか?」
騎士団長もまた、鋭い目で、闘技場を後にするアルトの後ろ姿を見つめていた。
「ええ。詳細は不明ですが、防御からの反撃に特化した、興味深い力のようですな。名前はアルト…覚えておきましょう」
高ランクの冒険者たちも、アルトの戦いに注目し、その実力と将来性を評価し始めていた。
王都武闘大会での初戦を、見事な勝利で飾ったアルト。
控え室に戻ると、安堵感と共に、確かな達成感が彼を満たした。
しかし、他の試合の様子を目の当たりにすると、上位の冒険者たちのレベルの高さに、改めて身が引き締まる思いだった。
剣技、魔法、特殊なギフト…そのどれもが、アルトの想像を遥かに超えている。
上位への道は、限りなく険しいだろう。
この大会で、自分の力を試し、何かを掴みたい。
アルトの心は、次なる戦いへの期待で燃えていた。
彼は王都アステリアでの活動基盤を固めつつ、次なる目標、Dランク、いや、いずれはさらにその上を見据え、日々の鍛錬と情報収集に励んでいた。
そんな折、王都全体がにわかに活気づき始める出来事が起こった。
年に一度、王国で最も盛大に開催される「建国王祭」が間近に迫っていたのだ。
街の至る所に色とりどりの旗が飾られ、楽団の陽気な音楽が鳴り響く。
そして、その建国王祭の数ある催しの中でも、特に冒険者たちの注目を集めるイベントがあった。
王都冒険者ギルドが主催する、「王都武闘大会」である。
ギルド本部の巨大な掲示板には、大会の開催を告げる羊皮紙が、ひときわ大きく張り出されていた。
『建国王祭奉納 王都武闘大会 開催! ランクB以下の冒険者よ、集え! 力と技を競い、最強の栄誉と莫大な賞金を掴み取れ! 上位入賞者には、王立騎士団への推薦、有力貴族からの後援の道も開かれる!』
その告知文は、多くの冒険者たちの心を熱くさせた。
アルトもまた、その一人だった。
「武闘大会か……」
掲示板を見上げ、アルトの胸は自然と高鳴った。
今の自分の実力が、この王都の数多いる猛者たちを相手に、どこまで通用するのか。
手に入れたばかりの黒き剣「黒曜」、腕に装着したバックラー、そして3割へと成長したギフト【ダメージ反射】。
それらを、魔物相手ではなく、技術と経験を持つ人間相手に、この大舞台で試してみたい。
もちろん、Cランクになったばかりの自分が、簡単に勝ち進めるとは思っていない。
上位には、Bランクという、自分よりも遥かに格上の冒険者たちも参加するだろう。
優勝など、夢のまた夢だ。
それでも、この大会に参加することで得られる経験は、計り知れないものがあるはずだ。
強者たちの戦いを間近で見ること、そして、自分自身の限界を知ること。
それは、今後の成長にとって、何物にも代えがたい財産となるだろう。
その話をギフト研究家のエリアーヌにすると、彼女は案の定、目をキラキラと輝かせた。
「まあ!王都武闘大会ですって!?素晴らしいじゃありませんか、アルトさん!ぜひ、ぜひ参加なさってくださいまし!」
彼女は興奮気味に続ける。
「ああいった極限の緊張状態、観衆の視線、そして強敵との真剣勝負!それこそ、あなたのギフトに眠る未知なる力…あの神秘的な麻痺効果が、再び発現する最高の機会かもしれませんわ!ああ、考えただけでもゾクゾクしますわね!わたくし、最前列でしっかりと応援、いえ、観察させていただきますから!」
エリアーヌの(研究者としての興味が大部分を占めるであろう)熱烈な後押しも、アルトの決意をさらに固めさせた。
アルトは、迷うことなく武闘大会への参加登録を済ませた。
参加資格はランクB以下。
Cランクになったばかりのアルトも、問題なく参加できる。
大会までの残された数週間、彼はこれまで以上に厳しい訓練に没頭した。
故郷の師、バルガスの教えを思い出す。
特に対人戦における間合いの重要性、相手の呼吸や視線の動きを読む洞察力、フェイントを見抜き、それに対応する技術。
アルトは、ギルドの訓練場で、仮想の敵を相手に、剣と盾の連携を繰り返し練習した。
防御から攻撃へ、攻撃から防御へ、流れるような動きを体に叩き込む。
ギフトとの連携も、対人戦を強く意識して磨き上げた。
相手の武器による攻撃を、剣や盾で受け止め、カウンター反射で武器ごとダメージを与え、相手の攻撃のリズムを崩す。
衝撃波(仮)による牽制や、一瞬の目くらましのタイミング。
そして、もしもの時の切り札となるかもしれない、あの麻痺効果の発動条件の模索…。
エリアーヌも、時折訓練場に顔を出し、アルトの動きやギフトの発動状態を熱心に観察し、魔物学や古代遺物の知識に基づいた、独自の(そして時に突拍子もない)アドバイスを送ってくれた。
そして、ついに大会当日がやってきた。
王都の中心に位置する、巨大な円形闘技場(コロッセオ)。
そこは、朝から熱狂的な観衆で埋め尽くされ、地鳴りのような歓声と期待感で満ち溢れていた。
闘技場の上空には、王国の旗や、有力貴族の紋章旗、そして冒険者ギルドの旗などが、青空の下で勇壮にはためいている。
楽団の奏でる、血沸き肉躍るような勇ましい音楽が、会場全体の興奮をさらに高めていた。
観客席には、王都の一般市民や商人たちに混じって、ひときわ華やかな衣装を身にまとった貴族たちの姿や、整然と隊列を組んで観戦する王立騎士団の銀色の鎧も見える。
この大会が、単なる冒険者の腕比べではなく、王国全体が注目する一大イベントであることがうかがえた。
闘技場の地下にある、広大な控え室。
そこには、アルトと同じように、この大会で己の力を証明しようと集まった、数多くの冒険者たちがひしめいていた。
歴戦の風格を漂わせる屈強な戦士。
影のように素早い動きを見せる斥候。
神秘的なローブに身を包み、杖を携えた魔術師。
その誰もが、確かな実力と、勝利への渇望を漂わせている。
アルトは、その場の圧倒的な熱気と、強者たちの放つオーラに少し気圧されながらも、同時に、武者震いにも似た興奮を禁じ得なかった。
やがて、予選トーナメントの一回戦の組み合わせが発表された。
アルトの名前が呼ばれ、対戦相手が告げられる。
相手は、アルトと同じくCランクに所属する冒険者。
腰に下げたプレートには、長槍の紋章が刻まれている。
体格が良く、頑丈そうな鎧を身に着けた、経験豊富そうな男だった。
観衆の大歓声に迎えられ、アルトは闘技場の中央へと歩み出た。
足元の硬く踏み固められた土の感触。
観客席から降り注ぐ、無数の視線。
初めて経験する、大舞台の空気だ。
対峙する槍使いの男。
その目には、確かな実力への自信と、同時に、アルト(まだ若く、王都では見慣れない顔だ)に対する、わずかな油断の色が見て取れた。
「両者、前へ!礼!」
審判を務める、ベテランのギルド職員の声が響く。
アルトと槍使いは、互いに向き合い、騎士の礼に基づいた短い挨拶を交わす。
「始めっ!!」
審判の鋭い声と共に、試合開始のゴングが鳴り響いた!
槍使いは、その長いリーチを最大限に活かし、試合開始と同時に鋭い突きを連続で繰り出してきた。
風を切る穂先が、アルトの顔面、胸元、足元へと、立て続けに襲いかかる!
(速い!そして、的確だ!)
アルトは冷静に、ショートソード「黒曜」と、左腕のバックラーを巧みに使い、その槍の穂先を捌いていく。
受け流し、弾き、あるいはステップで回避する。
魔物相手の戦いとは、明らかに勝手が違う。
相手には知恵があり、技術があり、そして駆け引きがある。
対人戦の難しさと面白さ。
アルトは、試合の序盤で、早くもその洗礼を受けていた。
相手の突きをバックラーで弾き返し、アルトは一瞬の隙を突いて懐に潜り込もうとする。
しかし、槍使いも熟練者だ。
巧みに間合いをコントロールし、アルトに決定的な攻撃の機会を与えない。
槍の石突き(柄の末端)を使った牽制や、足払いなども織り交ぜてくる。
観客席からは、一進一退の攻防に、大きな歓声が上がっていた。
焦れたのか、あるいはアルトの実力を侮ったのか。
槍使いが、渾身の力を込めた一撃、体を大きく捻り、薙ぎ払うような軌道を描く横殴りの突きを放ってきた。
その動きは大きいが、威力は絶大だ。
(ここだ!)
アルトはその攻撃を、あえてバックラーで受け止めた。
左腕に、骨が軋むほどの衝撃が走る。
しかし、耐えられる!
そして、受け止めた瞬間に、全神経を集中させ、ギフトを発動!
「反射ッ!!」
盾越しに放たれたカウンター反射の衝撃が、槍の穂先から柄を通して、槍使い自身の腕へと逆流する!
「ぐおおっ!?」
槍使いは、予期せぬ内部からの衝撃に、驚愕の声を上げた。
腕が痺れ、槍を持つ手に力が入らない。
体勢が、大きく崩れる。
アルトはその決定的な隙を見逃さなかった。
素早く踏み込み、ショートソード「黒曜」を閃かせる。
狙いは、相手の胴鎧の隙間。
アルトの鋭い一撃が、槍使いの脇腹を浅く、しかし確実に捉えた!
「ぐっ……ま、参った……」
槍使いは、脇腹を押さえながら、苦痛に顔を歪め、降参の意を示した。
「勝者、アルトォォーーッ!!」
審判が高らかに勝者の名を告げると、闘技場全体から、アルトの勝利を称える大きな拍手と歓声が沸き起こった。
派手さこそなかったかもしれない。
堅実な守りから、一瞬の隙を突いてカウンターで仕留める。
しかし、その戦いぶりは、観客に強い印象を与えた。
特に、攻撃を受け止めてそのまま相手に返すという、【ダメージ反射】のユニークな戦法は、多くの人々の興味を引いたようだ。
貴賓席の一角。
壮年の貴族が、隣に座る、厳つい顔つきの騎士団長らしき人物に、興味深そうに囁いていた。
「ふむ、なかなか面白い若者がいたものだな。あの最後の妙な技は……ギフトであろうか?」
騎士団長もまた、鋭い目で、闘技場を後にするアルトの後ろ姿を見つめていた。
「ええ。詳細は不明ですが、防御からの反撃に特化した、興味深い力のようですな。名前はアルト…覚えておきましょう」
高ランクの冒険者たちも、アルトの戦いに注目し、その実力と将来性を評価し始めていた。
王都武闘大会での初戦を、見事な勝利で飾ったアルト。
控え室に戻ると、安堵感と共に、確かな達成感が彼を満たした。
しかし、他の試合の様子を目の当たりにすると、上位の冒険者たちのレベルの高さに、改めて身が引き締まる思いだった。
剣技、魔法、特殊なギフト…そのどれもが、アルトの想像を遥かに超えている。
上位への道は、限りなく険しいだろう。
この大会で、自分の力を試し、何かを掴みたい。
アルトの心は、次なる戦いへの期待で燃えていた。
13
あなたにおすすめの小説
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる