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崖下
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これは俺がまだ大学生で、バイクでツーリングにハマってた頃の話だ。
その日も、友人Aと二人で、海岸線を走ってたんだ。
天気も良くて、最高のツーリング日和だった。
途中、ナビにも載ってないような、細い脇道を見つけた。
「おい、ちょっと行ってみようぜ」
Aが面白がって言い出して、俺も特に反対しなかった。
道はどんどん狭くなって、鬱蒼とした森の中に入っていく。
しばらく進むと、突然視界が開けて、断崖絶壁の上に出たんだ。
眼下には、荒々しい波が打ち寄せる海が広がってる。
絶景といえば絶景なんだけど、なんだか空気が重いっていうか、嫌な感じがする場所だった。
柵も何もない、本当にただの崖っぷち。
「うわー、すげえ景色だな!」
Aは興奮して崖のギリギリまで近づいて、下を覗き込んでる。
「おい、危ないぞ!」
俺が注意したけど、Aは聞く耳を持たない。
俺も気になって、少し離れた場所から崖下を見下ろしてみた。
高さは、ゆうに50メートル以上はあるだろうか。
崖の下は、ゴツゴツした岩場になってて、波が砕け散ってる。
よく見ると、岩場のあちこちに、ゴミみたいなものが引っかかってるのが見えた。
流木とか、漁具の残骸とか。
その中に、何か、人間の服みたいな色のものが見えた気がした。
気のせいか…?
目を凝らそうとしたけど、距離があってよく分からない。
「おーい、なんかあそこに祠みたいなのあるぞー」
Aが、少し離れた場所を指差して言った。
見ると、崖の端の方、草木に隠れるようにして、小さな石の祠がポツンとあった。
古びてて、もう何年も手入れされてないみたいだ。
俺たちは興味本位でその祠に近づいてみた。
祠の中には、何も祀られてなかった。
ただ、石の台座の上に、誰が置いたのか、古びた子供の靴が片方だけ、ポツンと置かれていた。
気味が悪いな、って思った。
「そろそろ行こうぜ」
俺が言うと、Aも頷いて、バイクに戻ろうとした、その時だった。
崖の下の方から、風に乗って、微かに声が聞こえてきたんだ。
「お…い…で…」
女の声のような、子供の声のような、そんなか細い声。
俺とAは顔を見合わせた。
「今の…聞こえたか?」
「ああ…」
まさか、こんな場所に人がいるわけない。
空耳か?とも思ったけど、二人同時に聞いたんだから、間違いじゃない。
俺たちは急に怖くなって、バイクに飛び乗って、一目散にその場所を離れた。
帰り道、Aがポツリと言った。
「なあ、あの崖下にあったのってさ…もしかして…」
俺も同じことを考えてた。
あの服みたいな色のもの。
そして、祠にあった子供の靴。
嫌な想像が頭をよぎったけど、口には出さなかった。
それから数日後。
俺は、夜中にふと目が覚めた。
部屋の窓が開いてて、そこからヒューヒューと風の音が入ってくる。
閉めたはずなのに…?
そして、その風の音に混じって、またあの声が聞こえてきたんだ。
「お…い…で…こっち…おいで…」
明らかに、あの崖で聞いた声だ。
俺は恐怖で体が動かなかった。
声は、すぐ窓の外から聞こえてくる。
そして、窓の外の暗闇の中に、ぼんやりと、白い何かが揺れてるのが見えた。
人の形をしてるような、してないような。
それが、ゆっくりとこっちに近づいてくる。
俺は必死で目を閉じて、布団を頭まで被った。
どれくらいそうしてただろうか。
気づいたら朝になってて、声も気配も消えていた。
でも、窓はやっぱり開いたままだった。
俺はすぐにAに電話した。
そしたらAも、同じような体験をしたって言うんだ。
夜中に窓が開いてて、あの声が聞こえてきたって。
俺たちは、あの崖で、何かヤバいものを呼び覚ましてしまったのかもしれない。
それ以来、俺たちは二人とも、海に近づくのが怖くなった。
そして、夜中にふと目が覚めると、今でも耳の奥で、あのか細い声が聞こえてくるような気がするんだ。
「おいで…」って。
あの崖の下には、一体何があるんだろうか。
そして、あの声の主は、今も誰かを呼んでいるんだろうか。
その日も、友人Aと二人で、海岸線を走ってたんだ。
天気も良くて、最高のツーリング日和だった。
途中、ナビにも載ってないような、細い脇道を見つけた。
「おい、ちょっと行ってみようぜ」
Aが面白がって言い出して、俺も特に反対しなかった。
道はどんどん狭くなって、鬱蒼とした森の中に入っていく。
しばらく進むと、突然視界が開けて、断崖絶壁の上に出たんだ。
眼下には、荒々しい波が打ち寄せる海が広がってる。
絶景といえば絶景なんだけど、なんだか空気が重いっていうか、嫌な感じがする場所だった。
柵も何もない、本当にただの崖っぷち。
「うわー、すげえ景色だな!」
Aは興奮して崖のギリギリまで近づいて、下を覗き込んでる。
「おい、危ないぞ!」
俺が注意したけど、Aは聞く耳を持たない。
俺も気になって、少し離れた場所から崖下を見下ろしてみた。
高さは、ゆうに50メートル以上はあるだろうか。
崖の下は、ゴツゴツした岩場になってて、波が砕け散ってる。
よく見ると、岩場のあちこちに、ゴミみたいなものが引っかかってるのが見えた。
流木とか、漁具の残骸とか。
その中に、何か、人間の服みたいな色のものが見えた気がした。
気のせいか…?
目を凝らそうとしたけど、距離があってよく分からない。
「おーい、なんかあそこに祠みたいなのあるぞー」
Aが、少し離れた場所を指差して言った。
見ると、崖の端の方、草木に隠れるようにして、小さな石の祠がポツンとあった。
古びてて、もう何年も手入れされてないみたいだ。
俺たちは興味本位でその祠に近づいてみた。
祠の中には、何も祀られてなかった。
ただ、石の台座の上に、誰が置いたのか、古びた子供の靴が片方だけ、ポツンと置かれていた。
気味が悪いな、って思った。
「そろそろ行こうぜ」
俺が言うと、Aも頷いて、バイクに戻ろうとした、その時だった。
崖の下の方から、風に乗って、微かに声が聞こえてきたんだ。
「お…い…で…」
女の声のような、子供の声のような、そんなか細い声。
俺とAは顔を見合わせた。
「今の…聞こえたか?」
「ああ…」
まさか、こんな場所に人がいるわけない。
空耳か?とも思ったけど、二人同時に聞いたんだから、間違いじゃない。
俺たちは急に怖くなって、バイクに飛び乗って、一目散にその場所を離れた。
帰り道、Aがポツリと言った。
「なあ、あの崖下にあったのってさ…もしかして…」
俺も同じことを考えてた。
あの服みたいな色のもの。
そして、祠にあった子供の靴。
嫌な想像が頭をよぎったけど、口には出さなかった。
それから数日後。
俺は、夜中にふと目が覚めた。
部屋の窓が開いてて、そこからヒューヒューと風の音が入ってくる。
閉めたはずなのに…?
そして、その風の音に混じって、またあの声が聞こえてきたんだ。
「お…い…で…こっち…おいで…」
明らかに、あの崖で聞いた声だ。
俺は恐怖で体が動かなかった。
声は、すぐ窓の外から聞こえてくる。
そして、窓の外の暗闇の中に、ぼんやりと、白い何かが揺れてるのが見えた。
人の形をしてるような、してないような。
それが、ゆっくりとこっちに近づいてくる。
俺は必死で目を閉じて、布団を頭まで被った。
どれくらいそうしてただろうか。
気づいたら朝になってて、声も気配も消えていた。
でも、窓はやっぱり開いたままだった。
俺はすぐにAに電話した。
そしたらAも、同じような体験をしたって言うんだ。
夜中に窓が開いてて、あの声が聞こえてきたって。
俺たちは、あの崖で、何かヤバいものを呼び覚ましてしまったのかもしれない。
それ以来、俺たちは二人とも、海に近づくのが怖くなった。
そして、夜中にふと目が覚めると、今でも耳の奥で、あのか細い声が聞こえてくるような気がするんだ。
「おいで…」って。
あの崖の下には、一体何があるんだろうか。
そして、あの声の主は、今も誰かを呼んでいるんだろうか。
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