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第六十四話:最後の攻防と目覚める厄災の胎動
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銀仮面の指揮官の宣告と共に、祭壇の周囲に潜んでいた「黒曜の爪」の兵士たちが、一斉にアレンたちへと襲いかかってきた。
その数は、前回を遥かに凌駕し、ゆうに五十名を超えるだろうか。
彼らの手にする黒曜石の武器は、不気味な紫色のオーラを纏い、明らかに以前よりも強力な魔力を帯びている。
空に渦巻く暗紫色の雲と呼応しているかのように、その力は増しているのかもしれない。
「怯むな! 陣形を組め! アレン君とリナさんを絶対に守り抜け!」
レグルスが、歴戦の勇士らしい鋭い声で檄を飛ばす。
ガストン隊長の部下である兵士たちと、ミストラル村の若者たちが、アレンとリナを中央に庇うように円陣を組み、迫り来る敵を迎え撃つ。
カイトとティムは、その円陣のやや前方、最も激しい攻撃が予想される位置で剣を構え、その瞳には鋼のような決意が宿っていた。
「アレン、あの黒曜石の武器……何か変だ。
普通の金属とは違う、嫌な感じがする」
カイトが、敵の剣先を睨みつけながら低く唸る。
アレンもまた、その異様なオーラに気づいていた。
「おそらく、あの空の渦から力を得ているんだ。
みんな、直接武器を受け止めようとせず、動きを読んで避けることを優先してくれ!」
アレンは、戦況を冷静に見極めながら、的確な指示を飛ばす。
そして、彼は背負っていた「エネルギー照射装置」の試作品を構え、その照準を、敵兵士が密集している一点に合わせた。
黒曜石の欠片が組み込まれた装置の先端が、微かな唸り音と共に青白い光を帯び始める。
「いけっ!」
アレンが叫ぶと同時に、装置から放たれた一条の光線が、敵兵士の持つ黒曜石の剣の一つを直撃した。
破壊するほどの威力はない。
しかし、光線が触れた瞬間、その剣から放たれていた紫色のオーラが掻き消え、敵兵士は驚愕の表情でよろめいた。
「やった……! あの光には、黒曜石の魔力を一時的に中和する効果があるのかもしれない!」
アレンの仮説は的中した。
彼の発明品は、直接的な武器とはならずとも、戦況を有利に導くための重要な「切り札」となり得るのだ。
彼は、続けざまに光線を放ち、敵の武器の力を削ぎ、カイトたちの戦いを援護する。
「トム、ティム、音響爆雷を! 敵の連携を乱すんだ!」
トムとティムも、アレンの指示に応じ、改良型の音響爆雷を次々と敵陣へと投げ込む。
甲高い炸裂音と閃光が、敵兵士たちの聴覚と視覚を奪い、その統制された動きに明らかな混乱を生じさせた。
リナもまた、ただ守られているだけではなかった。
彼女は、負傷した兵士の手当てを迅速に行いながら、アレンが用意していた特殊な薬草の粉末、吸い込むと激しいくしゃみを誘発し、一時的に戦闘不能にするものを、風向きを読んで敵陣へと散布する。
その効果はてきめんで、前線で戦っていた敵兵士の何人かが、くしゃみを連発しながらその場に崩れ落ちた。
カイトの剣技は、まさに獅子奮迅の活躍であった。
アレンのエネルギー照射装置によって魔力を弱められた敵の武器を恐れることなく、その黒曜石の刃を持つ長剣で次々と敵を斬り伏せていく。
彼の動きは、まるで舞を舞うかのようで、その周囲には敵兵の骸が積み上がっていく。
ギデオンやガストン隊長も、その勇姿に鼓舞され、歴戦の経験を活かして的確に敵を屠(ほふ)っていく。
しかし、敵の数はあまりにも多い。
そして何よりも、祭壇の上に立つ銀仮面の指揮官は、この乱戦の最中にも、冷静に「黒曜の書」を掲げ、何らかの呪文の詠唱を続けていた。
空の暗紫色の渦は、その詠唱に呼応するかのように、さらに激しく回転速度を増し、その中心からは、まるで生きているかのような、巨大な黒い影が、ゆっくりと地上へと降下し始めている。
「まずい……! あれが、『厄災の主』の……!」
アレンは、その光景に戦慄を覚えた。
それは、まだ完全な姿を現してはいない。
しかし、その影から放たれる圧倒的な絶望感と邪悪な気配は、アレンたちの心を直接的に蝕んでいくかのようであった。
兵士たちの中には、その気配に耐えきれず、武器を取り落としてその場にへたり込んでしまう者も現れ始めた。
「しっかりしろ! アレン君が、何とかしてくれるはずだ!」
レグルスが、必死に兵士たちを鼓舞するが、戦況は明らかに悪化しつつある。
「黒曜の爪」の兵士たちは、その「厄災の主」の降臨を間近に感じ、まるで狂戦士のように、さらに激しく襲いかかってきたのだ。
「アレン……! もう、時間が……!」
カイトが、押し寄せる敵を必死に食い止めながら叫ぶ。
彼の体にも、既に無数の小さな傷が刻まれている。
アレンは、唇を噛み締めた。
エネルギー照射装置は、敵の武器の魔力を一時的に中和することはできても、あの降下してくる巨大な影そのものに効果があるかは未知数。
そして、「黒曜の書」の予言にあった「星の血脈を受け継ぐ者の魂」とは、一体何を意味するのか。
その答えが見つからない限り、根本的な解決には至らない。
(考えるんだ……何か、何か方法があるはずだ……! あの書物、あの儀式、そしてあの黒曜石の欠片……!)
アレンの脳裏に、これまでの情報が目まぐるしく交錯する。
そして、彼は一つの可能性に思い至った。
それは、あまりにも危険で、そして成功の保証などどこにもない、最後の賭け。
「リナ、カイト、ティム、そして皆さん! 僕に……僕に少しだけ時間をください! あの儀式を止める方法が、一つだけあるかもしれません!」
アレンは、仲間たちにそう叫ぶと、エネルギー照射装置をティムに託し、自らは仕掛け杖と、そして懐に忍ばせていた数枚の羊皮紙の断片を手に、祭壇へと向かって走り出した。
彼の背後では、カイトたちが、文字通り命を賭して、アレンへの道を切り開こうと奮闘している。
銀仮面の指揮官は、祭壇へ向かってくるアレンの姿を認め、嘲るような笑みを浮かべた。
「来たか、小僧。
自ら贄となりにか? それとも、最後に我々の偉大なる主に忠誠を誓うか?」
「どちらでもない!」
アレンは、叫び返した。
「僕は、あなたたちの企みを阻止しに来た! そして、この世界を、僕たちの大切な村を、守るために来たんだ!」
その数は、前回を遥かに凌駕し、ゆうに五十名を超えるだろうか。
彼らの手にする黒曜石の武器は、不気味な紫色のオーラを纏い、明らかに以前よりも強力な魔力を帯びている。
空に渦巻く暗紫色の雲と呼応しているかのように、その力は増しているのかもしれない。
「怯むな! 陣形を組め! アレン君とリナさんを絶対に守り抜け!」
レグルスが、歴戦の勇士らしい鋭い声で檄を飛ばす。
ガストン隊長の部下である兵士たちと、ミストラル村の若者たちが、アレンとリナを中央に庇うように円陣を組み、迫り来る敵を迎え撃つ。
カイトとティムは、その円陣のやや前方、最も激しい攻撃が予想される位置で剣を構え、その瞳には鋼のような決意が宿っていた。
「アレン、あの黒曜石の武器……何か変だ。
普通の金属とは違う、嫌な感じがする」
カイトが、敵の剣先を睨みつけながら低く唸る。
アレンもまた、その異様なオーラに気づいていた。
「おそらく、あの空の渦から力を得ているんだ。
みんな、直接武器を受け止めようとせず、動きを読んで避けることを優先してくれ!」
アレンは、戦況を冷静に見極めながら、的確な指示を飛ばす。
そして、彼は背負っていた「エネルギー照射装置」の試作品を構え、その照準を、敵兵士が密集している一点に合わせた。
黒曜石の欠片が組み込まれた装置の先端が、微かな唸り音と共に青白い光を帯び始める。
「いけっ!」
アレンが叫ぶと同時に、装置から放たれた一条の光線が、敵兵士の持つ黒曜石の剣の一つを直撃した。
破壊するほどの威力はない。
しかし、光線が触れた瞬間、その剣から放たれていた紫色のオーラが掻き消え、敵兵士は驚愕の表情でよろめいた。
「やった……! あの光には、黒曜石の魔力を一時的に中和する効果があるのかもしれない!」
アレンの仮説は的中した。
彼の発明品は、直接的な武器とはならずとも、戦況を有利に導くための重要な「切り札」となり得るのだ。
彼は、続けざまに光線を放ち、敵の武器の力を削ぎ、カイトたちの戦いを援護する。
「トム、ティム、音響爆雷を! 敵の連携を乱すんだ!」
トムとティムも、アレンの指示に応じ、改良型の音響爆雷を次々と敵陣へと投げ込む。
甲高い炸裂音と閃光が、敵兵士たちの聴覚と視覚を奪い、その統制された動きに明らかな混乱を生じさせた。
リナもまた、ただ守られているだけではなかった。
彼女は、負傷した兵士の手当てを迅速に行いながら、アレンが用意していた特殊な薬草の粉末、吸い込むと激しいくしゃみを誘発し、一時的に戦闘不能にするものを、風向きを読んで敵陣へと散布する。
その効果はてきめんで、前線で戦っていた敵兵士の何人かが、くしゃみを連発しながらその場に崩れ落ちた。
カイトの剣技は、まさに獅子奮迅の活躍であった。
アレンのエネルギー照射装置によって魔力を弱められた敵の武器を恐れることなく、その黒曜石の刃を持つ長剣で次々と敵を斬り伏せていく。
彼の動きは、まるで舞を舞うかのようで、その周囲には敵兵の骸が積み上がっていく。
ギデオンやガストン隊長も、その勇姿に鼓舞され、歴戦の経験を活かして的確に敵を屠(ほふ)っていく。
しかし、敵の数はあまりにも多い。
そして何よりも、祭壇の上に立つ銀仮面の指揮官は、この乱戦の最中にも、冷静に「黒曜の書」を掲げ、何らかの呪文の詠唱を続けていた。
空の暗紫色の渦は、その詠唱に呼応するかのように、さらに激しく回転速度を増し、その中心からは、まるで生きているかのような、巨大な黒い影が、ゆっくりと地上へと降下し始めている。
「まずい……! あれが、『厄災の主』の……!」
アレンは、その光景に戦慄を覚えた。
それは、まだ完全な姿を現してはいない。
しかし、その影から放たれる圧倒的な絶望感と邪悪な気配は、アレンたちの心を直接的に蝕んでいくかのようであった。
兵士たちの中には、その気配に耐えきれず、武器を取り落としてその場にへたり込んでしまう者も現れ始めた。
「しっかりしろ! アレン君が、何とかしてくれるはずだ!」
レグルスが、必死に兵士たちを鼓舞するが、戦況は明らかに悪化しつつある。
「黒曜の爪」の兵士たちは、その「厄災の主」の降臨を間近に感じ、まるで狂戦士のように、さらに激しく襲いかかってきたのだ。
「アレン……! もう、時間が……!」
カイトが、押し寄せる敵を必死に食い止めながら叫ぶ。
彼の体にも、既に無数の小さな傷が刻まれている。
アレンは、唇を噛み締めた。
エネルギー照射装置は、敵の武器の魔力を一時的に中和することはできても、あの降下してくる巨大な影そのものに効果があるかは未知数。
そして、「黒曜の書」の予言にあった「星の血脈を受け継ぐ者の魂」とは、一体何を意味するのか。
その答えが見つからない限り、根本的な解決には至らない。
(考えるんだ……何か、何か方法があるはずだ……! あの書物、あの儀式、そしてあの黒曜石の欠片……!)
アレンの脳裏に、これまでの情報が目まぐるしく交錯する。
そして、彼は一つの可能性に思い至った。
それは、あまりにも危険で、そして成功の保証などどこにもない、最後の賭け。
「リナ、カイト、ティム、そして皆さん! 僕に……僕に少しだけ時間をください! あの儀式を止める方法が、一つだけあるかもしれません!」
アレンは、仲間たちにそう叫ぶと、エネルギー照射装置をティムに託し、自らは仕掛け杖と、そして懐に忍ばせていた数枚の羊皮紙の断片を手に、祭壇へと向かって走り出した。
彼の背後では、カイトたちが、文字通り命を賭して、アレンへの道を切り開こうと奮闘している。
銀仮面の指揮官は、祭壇へ向かってくるアレンの姿を認め、嘲るような笑みを浮かべた。
「来たか、小僧。
自ら贄となりにか? それとも、最後に我々の偉大なる主に忠誠を誓うか?」
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アレンは、叫び返した。
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