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★ルート分岐(ノエルエンド編)★
ノエルの思い ②
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「ままー!」
ルルテラがよちよちと走って来る。
僕は両手を広げて可愛い我が子を抱きしめた。
「お散歩は楽しかった?」
「たのちかったー!うしゃぎしゃんがいたにょ」
まだ回り切らない舌で懸命に話すルルテラ。ああなんて可愛い!こんな可愛い子がこの世にいるなんて!
「女王様!まだ承認頂きたい書類が残ってます!」
……アーロンに見つかった。
「ごめんねルルテラ、また夜に遊ぼうね」
「いーよ!にょえるとあしょんでうー!」
「可愛いねえ!ルルテラ!」
もう一度ぎゅうと抱きしめて名残惜しい気持ちを抑えノエルに引き渡す。ノエルは笑いながらルルテラを引き取った。
僕は政務に追われ彼女の面倒が見られないので、昼間は乳母達に任せっぱなしだ。
たまにこうやって護衛騎士から王室騎士団長になったノエルがルルテラを執務室に連れて来てくれたりするのが楽しみの一つになっている。
何気ない毎日が幸せだなと思える余裕がやっと少し出来てきた。それでも日々大変ではあるけれど。
夜はルルテラと一緒に寝るようにしているが、それでも寝かしつけてから再び仕事に戻る日も多い。今日も同じようにベッドから抜け出してそっと寝室のドアを出る。
「アリス様」
「ノエル!」
びっくりした。なんでドアの前に立ってたの。
「お休み下さい。いい加減働き過ぎです」
「分かってるけどさ、旧国境の橋が崩落しそうって連絡あったでしょ?あの予算を組みたいんだよね」
「……手伝います」
「……ありがとう」
あー、見つかってしまった。
こうなったらさっさと予算案だけ終わらせてしまうしかない。他にもやってしまいたい事あったんだけどなー。
僕は仕方なく覚悟を決めて、執務室を目指した。
ノエルとはルルテラを産んでからずっと変わらない関係で続いている。正直好きな気持ちもあるし一緒にいたいと思ったりするけど、なんだか照れ臭くてどうしたらいいかわからない。
それにルルテラもまだ小さいし……なんて言い訳かな。
多分僕は怖いんだ。ノエルをこれ以上好きになってしまったら、もしいなくなった時どれほどつらいだろう。
ノエルは王室騎士団だ。戦争でも起これば真っ先に戦地に行くだろう。それで何かあったら?
リカルドやルドルフを思い出して居た堪れない気持ちになる。
もう何も失いたくない。
傷付きたくない。
それならば最初から大事な人なんて作らなければいい。逃げているだけと言うのはわかってる。それでも僕の胸の傷はまだ瘡蓋さえ張ってない。
「お疲れ様でした」
「手伝ってくれてありがとう」
優秀な助手のお陰で随分早く資料が出来上がった。
「少しだけ飲みませんか」
「いいよ。珍しいね」
「たまにはいいかと思いまして」
ノエルは普段酒を飲まない。何かあったのかと心配になったがカレンダーを見てハッとした。
明日はリカルドの命日だ。
時計の針はそろそろ十二時を指そうとしている。
差し出されたグラスを僕は黙って受け取った。
「もう三年になるんですね」
「本当に早いね」
ノエルがじっと僕を見る。その瞳に揺らぐ暖炉の火が綺麗で思わず目を逸してしまった。
「アリス様」
「なに?」
近づいてくる顔に驚き後ずさりをすると、彼はふっと笑って僕の髪を撫でる。
「酔っ払ってるのか」
「そうかもしれません」
ノエルはそう言いながら、ソファーに僕を押し倒した。
ルルテラがよちよちと走って来る。
僕は両手を広げて可愛い我が子を抱きしめた。
「お散歩は楽しかった?」
「たのちかったー!うしゃぎしゃんがいたにょ」
まだ回り切らない舌で懸命に話すルルテラ。ああなんて可愛い!こんな可愛い子がこの世にいるなんて!
「女王様!まだ承認頂きたい書類が残ってます!」
……アーロンに見つかった。
「ごめんねルルテラ、また夜に遊ぼうね」
「いーよ!にょえるとあしょんでうー!」
「可愛いねえ!ルルテラ!」
もう一度ぎゅうと抱きしめて名残惜しい気持ちを抑えノエルに引き渡す。ノエルは笑いながらルルテラを引き取った。
僕は政務に追われ彼女の面倒が見られないので、昼間は乳母達に任せっぱなしだ。
たまにこうやって護衛騎士から王室騎士団長になったノエルがルルテラを執務室に連れて来てくれたりするのが楽しみの一つになっている。
何気ない毎日が幸せだなと思える余裕がやっと少し出来てきた。それでも日々大変ではあるけれど。
夜はルルテラと一緒に寝るようにしているが、それでも寝かしつけてから再び仕事に戻る日も多い。今日も同じようにベッドから抜け出してそっと寝室のドアを出る。
「アリス様」
「ノエル!」
びっくりした。なんでドアの前に立ってたの。
「お休み下さい。いい加減働き過ぎです」
「分かってるけどさ、旧国境の橋が崩落しそうって連絡あったでしょ?あの予算を組みたいんだよね」
「……手伝います」
「……ありがとう」
あー、見つかってしまった。
こうなったらさっさと予算案だけ終わらせてしまうしかない。他にもやってしまいたい事あったんだけどなー。
僕は仕方なく覚悟を決めて、執務室を目指した。
ノエルとはルルテラを産んでからずっと変わらない関係で続いている。正直好きな気持ちもあるし一緒にいたいと思ったりするけど、なんだか照れ臭くてどうしたらいいかわからない。
それにルルテラもまだ小さいし……なんて言い訳かな。
多分僕は怖いんだ。ノエルをこれ以上好きになってしまったら、もしいなくなった時どれほどつらいだろう。
ノエルは王室騎士団だ。戦争でも起これば真っ先に戦地に行くだろう。それで何かあったら?
リカルドやルドルフを思い出して居た堪れない気持ちになる。
もう何も失いたくない。
傷付きたくない。
それならば最初から大事な人なんて作らなければいい。逃げているだけと言うのはわかってる。それでも僕の胸の傷はまだ瘡蓋さえ張ってない。
「お疲れ様でした」
「手伝ってくれてありがとう」
優秀な助手のお陰で随分早く資料が出来上がった。
「少しだけ飲みませんか」
「いいよ。珍しいね」
「たまにはいいかと思いまして」
ノエルは普段酒を飲まない。何かあったのかと心配になったがカレンダーを見てハッとした。
明日はリカルドの命日だ。
時計の針はそろそろ十二時を指そうとしている。
差し出されたグラスを僕は黙って受け取った。
「もう三年になるんですね」
「本当に早いね」
ノエルがじっと僕を見る。その瞳に揺らぐ暖炉の火が綺麗で思わず目を逸してしまった。
「アリス様」
「なに?」
近づいてくる顔に驚き後ずさりをすると、彼はふっと笑って僕の髪を撫でる。
「酔っ払ってるのか」
「そうかもしれません」
ノエルはそう言いながら、ソファーに僕を押し倒した。
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