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第三章 貴方となら何でも出来る気がしました
42・アルヴェリオの告白
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その後、アルヴェリオから聞いた話にライネルは衝撃を受けた。
「アシュレイが……アルヴェリオ様のお父様、バロウズ前男爵様を陥れたってことですか……?」
ライネルの問いに、アルヴェリオはゆっくりと頷いた。
手元のカップの中で、冷めかけた紅茶が微かに揺れる。
「そう断言はできない。だが、俺は確信している」
その低い声には、怒りとも悲しみともつかぬ感情が滲んでいた。
アルヴェリオは視線を窓の外に向ける。
夜の雨が静かにガラスを打ち、淡い光がカーテンを透かしていた。
「当時、養父は“王室財務局管理地の徴税代行”を任されていた。
国庫から農地整備のための資金が送られ、
彼がそれを地方に再分配する──そういう仕組みだ。」
ライネルは黙って頷く。
その金の流れを操作できるのは、つまり財務局。
そして主計官であるアシュレイ。
「だが、その資金の一部が行方不明になった。
帳簿上では『バロウズ男爵が受領し、使用済み』になっていたが、
実際に金が届いた記録も、使われた形跡もなかった。」
「……帳簿を改ざんされた、ということですか?」
「恐らく」
アルヴェリオは片手で額を押さえた。
「当時、財務局の管理書類にはバロウズ男爵の署名が残っていた。
それは確かに彼の筆跡だった。だが、養父は覚えがないと言っていた。
しかも監査の直前、内部告発のような匿名の手紙が王宮に届いた。
『バロウズ男爵が基金を横領している』と」
ライネルは息をのんだ。
「そんな……」
「王宮は当然調査を始めた。だが、調べる者も財務局の人間だった。
アシュレイの部下たちだ。
彼らが提出した“証拠”は完璧すぎた。
男爵は潔白を主張したが、領収書や金袋、帳簿……
どれを見ても“受け取った”としか思えないよう仕組まれていた。」
「それで、男爵様は……?」
「今までの誠実な仕事ぶりが評価され、極刑は免れたが、
当主を降りて今は追放のような形で辺境にいる。」
(アシュレイ……!アルヴェリオ様のお父様になんてことを……。しかも素知らぬふりで、自分が陥れた人の息子と結婚するなんて、面の皮が厚すぎる)
「男爵は“自分の判断で署名をした”と罪を認め、『誰も責めるな』と言い残して全てを背負った。
……だが、そんなことをする人じゃない。
あの人は清廉潔白で、いつも領地の民のことを思っていた。」
ライネルは胸の奥が痛くなった。
静かに息を詰めるようにして問う。
「証拠は、何か残ってないんですか?」
「巧妙に隠され、処分されている。だが……」
「……だが?」
「アシュレイは狡猾だ。人を使って悪事を働くが、恐らく仲間でさえも信用していないだろう。
彼らがいつ裏切るか分からないと考えているはずだ。」
「……ということは」
「ああ、その時のために、彼らが行った悪事の証拠を隠し持っているはずだ。」
「裏切ろうとした者を脅すため……ですね?」
「ああ、そうだ。」
アルヴェリオの声がかすかに震えた。
それは怒りではなく、長年の無念が滲む音だった。
「だから俺は、ずっと探している。
――養父の名誉を取り戻す手がかりを。」
沈黙が流れる。
雨音が静かに二人の間を満たした。
ライネルは拳を握り、まっすぐにアルヴェリオを見た。
「……僕も探します。その証拠。」
アルヴェリオは驚いたように目を上げ、
やがて、わずかに微笑んだ。
「ありがとう。だが、それは俺たちのやるべきことだ。」
「でも!あんな人でも実の兄です!
申し訳なくて、じっとしていられませ──えっ?!」
ライネルが最後まで言い終わらないうちに、
アルヴェリオは彼をぎゅっと抱きしめた。
ダンスの時よりも深く、近く。
ライネルはアルヴェリオの香りに満たされる。
「ど、どうしたんですか……」
「その気持ちだけで充分だ。」
「アルヴェリオ様……」
(どうしよう。こんなにくっついてたらドキドキしてるのが伝わって恥ずかしい!)
「あの……もうそろそろ離してもらっても」
「……なぜこの話をしたと思う?」
「えっ?それはアシュレイがどんなに悪党かって知らしめるためですか……?」
(最初から知ってるけどね)
何しろずっと一緒に暮らして来たのだ。アシュレイの底意地の悪さや狡猾さについては、三日三晩でも語れる自信がある。
「……俺はアシュレイと近々婚約するだろう。奴を油断させ、懐に入り込む為に」
「……はい」
「だからライネルには知っておいて欲しかった。俺とアシュレイの関係に愛情なんてないってことを」
(……それって)
「アシュレイが……アルヴェリオ様のお父様、バロウズ前男爵様を陥れたってことですか……?」
ライネルの問いに、アルヴェリオはゆっくりと頷いた。
手元のカップの中で、冷めかけた紅茶が微かに揺れる。
「そう断言はできない。だが、俺は確信している」
その低い声には、怒りとも悲しみともつかぬ感情が滲んでいた。
アルヴェリオは視線を窓の外に向ける。
夜の雨が静かにガラスを打ち、淡い光がカーテンを透かしていた。
「当時、養父は“王室財務局管理地の徴税代行”を任されていた。
国庫から農地整備のための資金が送られ、
彼がそれを地方に再分配する──そういう仕組みだ。」
ライネルは黙って頷く。
その金の流れを操作できるのは、つまり財務局。
そして主計官であるアシュレイ。
「だが、その資金の一部が行方不明になった。
帳簿上では『バロウズ男爵が受領し、使用済み』になっていたが、
実際に金が届いた記録も、使われた形跡もなかった。」
「……帳簿を改ざんされた、ということですか?」
「恐らく」
アルヴェリオは片手で額を押さえた。
「当時、財務局の管理書類にはバロウズ男爵の署名が残っていた。
それは確かに彼の筆跡だった。だが、養父は覚えがないと言っていた。
しかも監査の直前、内部告発のような匿名の手紙が王宮に届いた。
『バロウズ男爵が基金を横領している』と」
ライネルは息をのんだ。
「そんな……」
「王宮は当然調査を始めた。だが、調べる者も財務局の人間だった。
アシュレイの部下たちだ。
彼らが提出した“証拠”は完璧すぎた。
男爵は潔白を主張したが、領収書や金袋、帳簿……
どれを見ても“受け取った”としか思えないよう仕組まれていた。」
「それで、男爵様は……?」
「今までの誠実な仕事ぶりが評価され、極刑は免れたが、
当主を降りて今は追放のような形で辺境にいる。」
(アシュレイ……!アルヴェリオ様のお父様になんてことを……。しかも素知らぬふりで、自分が陥れた人の息子と結婚するなんて、面の皮が厚すぎる)
「男爵は“自分の判断で署名をした”と罪を認め、『誰も責めるな』と言い残して全てを背負った。
……だが、そんなことをする人じゃない。
あの人は清廉潔白で、いつも領地の民のことを思っていた。」
ライネルは胸の奥が痛くなった。
静かに息を詰めるようにして問う。
「証拠は、何か残ってないんですか?」
「巧妙に隠され、処分されている。だが……」
「……だが?」
「アシュレイは狡猾だ。人を使って悪事を働くが、恐らく仲間でさえも信用していないだろう。
彼らがいつ裏切るか分からないと考えているはずだ。」
「……ということは」
「ああ、その時のために、彼らが行った悪事の証拠を隠し持っているはずだ。」
「裏切ろうとした者を脅すため……ですね?」
「ああ、そうだ。」
アルヴェリオの声がかすかに震えた。
それは怒りではなく、長年の無念が滲む音だった。
「だから俺は、ずっと探している。
――養父の名誉を取り戻す手がかりを。」
沈黙が流れる。
雨音が静かに二人の間を満たした。
ライネルは拳を握り、まっすぐにアルヴェリオを見た。
「……僕も探します。その証拠。」
アルヴェリオは驚いたように目を上げ、
やがて、わずかに微笑んだ。
「ありがとう。だが、それは俺たちのやるべきことだ。」
「でも!あんな人でも実の兄です!
申し訳なくて、じっとしていられませ──えっ?!」
ライネルが最後まで言い終わらないうちに、
アルヴェリオは彼をぎゅっと抱きしめた。
ダンスの時よりも深く、近く。
ライネルはアルヴェリオの香りに満たされる。
「ど、どうしたんですか……」
「その気持ちだけで充分だ。」
「アルヴェリオ様……」
(どうしよう。こんなにくっついてたらドキドキしてるのが伝わって恥ずかしい!)
「あの……もうそろそろ離してもらっても」
「……なぜこの話をしたと思う?」
「えっ?それはアシュレイがどんなに悪党かって知らしめるためですか……?」
(最初から知ってるけどね)
何しろずっと一緒に暮らして来たのだ。アシュレイの底意地の悪さや狡猾さについては、三日三晩でも語れる自信がある。
「……俺はアシュレイと近々婚約するだろう。奴を油断させ、懐に入り込む為に」
「……はい」
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