3 / 8
彼に似合う自分に
しおりを挟む
「えっ?!大地をお持ち帰りした?!」
小学校からの親友である浩二が、驚いた顔で僕を見た。
仕事帰りにカフェに誘ったのは僕の方だ。
大地とのこれからについて、話を聞いてもらいたかったから。
「それにしても、相手が大地とはね」
大地のことは浩二も知っている。
何しろ僕をミックスバーに誘ってくれたのは浩二なのだから。
その後も僕に付き合ってバーに通ううちに、先に大地と仲良くなったのは浩二の方だった。
「お持ち帰りなんて、変な言い方やめろよ」
僕はそっと周囲の様子を窺う。
「だってびっくりしてさ。あいつ、初めて見た時からオーラあったじゃん?派手でも厚かましくもないけど、不思議と人の目を惹きつけるっていうか……けどさ」
分かってる。
僕如きが、付き合ってもらえるような相手じゃない。
下げた視線の先には、地味なパンツに古臭い履きつぶした靴。
全体的に見ても、華やかさなんてひとかけらもない容姿だ。
「不釣り合いなのは分かってる。でも、好きになっちゃったんだ」
「……そうか。それなら応援する」
浩二は、手にした飲み物を勢いよくストローで吸った。
「……それ、なに?」
「あ?これ?ブラックティーのカスタム。ホワイトモカ追加してる」
「……そう」
なんの呪文だろう。
僕は、いつものブラックコーヒーを一口飲んだ。
「どした?今まで、そんなの聞いたことなかっただろ?……さては、大地に似合う自分になりたいとか?」
「うるさいよ」
……図星だ。腹立つくらいに。
揶揄うような声を無視して、店内のメニュー表を見る。
名前だけでは想像もつかない、舌を噛んでしまいそうな飲み物が並んでいた。
(大地は、平然と頼みそうだもんな)
だって、次はカフェでデートなのだ。
もちろん楽しみだけど、それ以上に緊張の方が大きかった。
「それにしても、ようやく律にも春が来たか」
「……そんなんじゃない」
「いやー、ほんと心配してたんだよ。いい人に会えてよかったな」
「……ありがとう。それより、親みたいな顔で見るのやめてくれる?」
「そうだな。でも嬉しいんだよ。このままじゃ、お前は一生一人なんじゃないかって思ってたから」
「……うん」
浩二は、僕が男しか好きになれないことを知っている。
中学生になった頃、自分のセクシュアリティに戸惑い、
泣きながら浩二に相談したのがきっかけだった。
僕自身でさえ受け入れ難かった現実を、浩二は難なく受け止めてくれた。
彼がいなければ、僕は自分で自分を認めることさえ難しかっただろう。
「なんだよ、そんな暗い顔すんなよ。大地は、律のいいところを見つけてくれたんだろ?」
「……そうかな」
僕に、いいところなんてあるのかな。
仕事は地味な事務職だし、見た目も同じく地味で平凡。
アプリで出会いを探したこともある。
けれど、待ち合わせ場所に着くたびに、
相手の落胆した顔を見るのが嫌になって、いつの間にかやめてしまった。
「好きな相手と、一生を誓えるような恋がしたいんだろ?大地なら安心だろ。自信持てよ」
「……そうだね」
彼と、ずっと一緒にいられたら、どんなに幸せだろう。
そのためには、僕は何をしたらいいのかな。
「あ」
テーブルの上のスマホが、メッセージの着信を知らせる。
画面に表示されたのは、
今、まさに考えていた人の名前だった。
小学校からの親友である浩二が、驚いた顔で僕を見た。
仕事帰りにカフェに誘ったのは僕の方だ。
大地とのこれからについて、話を聞いてもらいたかったから。
「それにしても、相手が大地とはね」
大地のことは浩二も知っている。
何しろ僕をミックスバーに誘ってくれたのは浩二なのだから。
その後も僕に付き合ってバーに通ううちに、先に大地と仲良くなったのは浩二の方だった。
「お持ち帰りなんて、変な言い方やめろよ」
僕はそっと周囲の様子を窺う。
「だってびっくりしてさ。あいつ、初めて見た時からオーラあったじゃん?派手でも厚かましくもないけど、不思議と人の目を惹きつけるっていうか……けどさ」
分かってる。
僕如きが、付き合ってもらえるような相手じゃない。
下げた視線の先には、地味なパンツに古臭い履きつぶした靴。
全体的に見ても、華やかさなんてひとかけらもない容姿だ。
「不釣り合いなのは分かってる。でも、好きになっちゃったんだ」
「……そうか。それなら応援する」
浩二は、手にした飲み物を勢いよくストローで吸った。
「……それ、なに?」
「あ?これ?ブラックティーのカスタム。ホワイトモカ追加してる」
「……そう」
なんの呪文だろう。
僕は、いつものブラックコーヒーを一口飲んだ。
「どした?今まで、そんなの聞いたことなかっただろ?……さては、大地に似合う自分になりたいとか?」
「うるさいよ」
……図星だ。腹立つくらいに。
揶揄うような声を無視して、店内のメニュー表を見る。
名前だけでは想像もつかない、舌を噛んでしまいそうな飲み物が並んでいた。
(大地は、平然と頼みそうだもんな)
だって、次はカフェでデートなのだ。
もちろん楽しみだけど、それ以上に緊張の方が大きかった。
「それにしても、ようやく律にも春が来たか」
「……そんなんじゃない」
「いやー、ほんと心配してたんだよ。いい人に会えてよかったな」
「……ありがとう。それより、親みたいな顔で見るのやめてくれる?」
「そうだな。でも嬉しいんだよ。このままじゃ、お前は一生一人なんじゃないかって思ってたから」
「……うん」
浩二は、僕が男しか好きになれないことを知っている。
中学生になった頃、自分のセクシュアリティに戸惑い、
泣きながら浩二に相談したのがきっかけだった。
僕自身でさえ受け入れ難かった現実を、浩二は難なく受け止めてくれた。
彼がいなければ、僕は自分で自分を認めることさえ難しかっただろう。
「なんだよ、そんな暗い顔すんなよ。大地は、律のいいところを見つけてくれたんだろ?」
「……そうかな」
僕に、いいところなんてあるのかな。
仕事は地味な事務職だし、見た目も同じく地味で平凡。
アプリで出会いを探したこともある。
けれど、待ち合わせ場所に着くたびに、
相手の落胆した顔を見るのが嫌になって、いつの間にかやめてしまった。
「好きな相手と、一生を誓えるような恋がしたいんだろ?大地なら安心だろ。自信持てよ」
「……そうだね」
彼と、ずっと一緒にいられたら、どんなに幸せだろう。
そのためには、僕は何をしたらいいのかな。
「あ」
テーブルの上のスマホが、メッセージの着信を知らせる。
画面に表示されたのは、
今、まさに考えていた人の名前だった。
174
あなたにおすすめの小説
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
長年の恋に終止符を
mahiro
BL
あの人が大の女好きであることは有名です。
そんな人に恋をしてしまった私は何と哀れなことでしょうか。
男性など眼中になく、女性がいればすぐにでも口説く。
それがあの人のモットーというやつでしょう。
どれだけあの人を思っても、無駄だと分かっていながらなかなか終止符を打てない私についにチャンスがやってきました。
これで終らせることが出来る、そう思っていました。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ
MITARASI_
BL
I
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
Ⅱ
高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。
別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。
未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。
恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。
そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。
過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。
不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。
それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。
高校編のその先を描く大学生活編。
選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。
続編執筆中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる