転生ゲーマーは死亡確定のサブキャラから成り上がる~最序盤で魔物に食い殺されるキャラに転生したので、レベルの暴力で全てを解決します~

おさない

文字の大きさ
9 / 117

第8話 少しだけ成長する

しおりを挟む

 しばらくして、川から上がったゾラはびしょ濡れのまま膝を抱えてうずくまった。

「あの……大丈夫ですか……?」

 心配になったルーテは、彼女の顔を覗き込みながら問いかける。

「どうしてだよ……見せちゃったじゃん。これじゃあ……まるでボクが……!」
「元気を出してください。ゾラさんはあくまで勘違いして露出しただけで、変態というわけではありません!」
「言わないでよ! ……もういい……動けるようになったんだったら……帰ってくれ……」
「………………………………」

 いつもはゲームのことしか考えていないルーテでも、流石に落ち込んでいる幸薄そうな少女を放置して帰還する気にはならなかった。

 「よいですかルーテ。困っている人には迷わず救いの手を差し伸べてあげてください」と、シスターからも教えられている。

「あの、ゾラさんは……行く宛てとかあるんですか?」
「ないよ。……だから盗賊団に居たんだ」

 ゾラは、さらに続けた。

「あそこの連中は……大体みんなそうだよ。身寄りも仕事も金もないから……人から盗むクズになって生き延びるんだ」

(世知辛いですね。ゲームなのに)

 ルーテはぼんやりとそんなことを考える。

(原作でモンスター扱いだったとしても……皆ちゃんとした人間なんですね。問答無用で魔法を撃つのは良くありませんでした……)

 そして少しだけ反省した。ルーテが一歩だけ他者に歩み寄り、まともな人間に近づいた瞬間である。

 常日頃から彼の奇行に頭を悩まされているシスターが知ったら、涙を流して喜ぶだろう。

「でもまあ……ボクは使えなさ過ぎて盗みもできなかったけど……」
「逃げ足はすごく早かったですよ!」
「何それ……なぐさめてるの……?」
「はい!」
「はぁ……なんかお前と話してると力が抜けるな……」

 ゾラは少しだけほほ笑んだ。彼女が初めて見せる年相応の笑顔である。

 図らずもルーテは、一人の少女の閉ざされた心を開きつつあった。

「とにかく、行く当てがないなら決まりですね」
「何が……?」
「僕と一緒に孤児院へ行きましょう! ゾラさんみたいな子が沢山いますよ!」
「お前……孤児院に住んでたの……?」
「はい!」

 ルーテは再び元気よく返事をし、ゾラに手を差し伸べる。

「…………行かない」

 しかし、ゾラはそれを拒絶した。

「どうしてですか?」
「分かるだろ……ボクは盗賊をやってたんだ。もう普通には戻れないんだよ……」

 笑顔を消して俯くゾラ。開き始めた心の扉が、再び閉まろうとしていた。

「……今更そんなこと言われたって……」
「そういうのは向こうに到着してから悩んでください! 僕は無断で孤児院を抜け出してるんです! 早く戻らないと先生に怒られてしまいますっ! ああっ、見てください! お日様がもうあんなところにっ!」
「えぇ……?」

 ゾラは、困惑して何も言えなくなる。その腕をルーテが引っ張った。

「とにかく急ぎますよ! 逃げ足の速さをここで発揮して下さい!」
「うえぇ? ま、待って?!」

 かくして、ルーテは半ば強引に彼女のことを連れ帰るのだった。

 *

「……おはようございます。ルーテ」
「おはようございます先生!」
「良い挨拶です」

 ダンジョンの探索を終え孤児院へと帰還したルーテは、玄関口で先生と対峙していた。

「……もう、みんな朝食を食べ終わりましたよ? いつまで経っても戻ってこないあなたのことをとても心配しています。……早朝に外を出歩くことに関しては大目に見ますが、朝食までには戻ってきてください」
「誠に申し訳ございませんでした……」
「しばらくあなたは外出禁止ですね」
「…………はい」

 ルーテは小さな声で返事をして俯く。

(言いつけは破れません……)
 
 何度も説明した通り、彼はこれでも孤児院でのルールを守っているつもりなのである。

「それで、話は変わりますが……」

 シスターは、ゾラの方を見ながら続けた。

「あなたは……どちら様ですか? 村の子ではないようですが……」
「え、えっと、その…………ボクは……」

 シスターに問いかけられ言葉に詰まるゾラ。彼女は自分の意志でここへ来たわけではないので、無理もない。

「ゾラさんは身寄りがなくて盗賊をしていた可哀そうな子です! だから僕が捕まえてここへ連れてきました」

 ルーテは横からそう説明した。

「え、うそ? それ言っちゃうの?!」

 自分の素性を全てばらされ、あたふたするゾラ。持って来た荷物を手に取り、その場から逃げ出そうとする。

 しかし、ルーテに手を握られているのでどこへも行けない。

 ――この裏切り者。

 追い詰められたゾラは、涙目でルーテの背中を睨みつけた。

「なるほど、良くわかりました…………ルーテ、あなたは門限を破りましたが、私の教えをしっかりと守ったのですね」

 するとシスターはそう言って、ルーテの頭を優しくなでる。

「はい! ですので外出禁止を――」
「それとこれとは別です」
「あぅ…………」
「……ですがまあ……私にバレなければ良しとしましょう。上手くやってください」
「……はい!」

 みるみるうちに明るい顔になり、元気な返事をするルーテ。

(早速【隠密】の効果を試せそうです!)

 シスターは「門限さえ守らせればそれほど遠くまではいけないだろう」と、この時考えていた。

 しかし、早朝からお昼前までの時間で二つのダンジョンを攻略し、成り行きで盗賊団を壊滅状態にし、お目当ての指南書まで手に入れ、おまけにゾラを連れて帰って来たルーテ相手には甘すぎる縛りだと言わざるを得ない。

「全く……私も甘いですね」

 甘々である。

「それと……ゾラ」
「え、えっと……はいっ!」

 突然シスターに名前を呼ばれ、ゾラは気をつけの姿勢になった。

「今日からあなたはこの孤児院で暮らす家族です。後で中を案内しますね」
「え…………?」
「どうかしましたか?」
「だ、だって、ルーテが言っただろ?! ボクは盗賊なんだ! えっと、だからその……捕まえるんじゃないのか……?」
「私はこの国の法ではなく、神の教えに従います。――食事の後で懺悔室へ来てくださいね、ゾラ」

 そう言って微笑むシスター。

「うぅ……ルーテぇっ!」

 ゾラは思わず近くに居たルーテに抱きつく。

(法律を破らないといけない時はそうやって言えば良いんですね! 勉強になります先生!)

 それに対して、ルーテは内心で物騒なことを考えながら、何も言わずにただじっとしていた。

(……これにて一件落着ですね。僕もあまり怒られなくて良かったです)

 かくして、ルーテの活躍により孤児院に新しい家族が増えたのであった。


 ……一方そのころ、近隣の町では「一瞬で盗賊団を壊滅させた」という、世にも恐ろしい小さな悪魔の噂が流行するのだが、それは関係のない話である。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...