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第18話 嫉妬するイリア
しおりを挟む孤児院の裏手には、アレスノヴァのワープ地点である遺跡がひっそりと佇んでいる。
遺跡は周囲を木々に囲まれていて、近づかないと存在に気づくことができないので、子供たちの秘密基地として利用されているのだ。
ルーテはそこへワープして戻って来ると、膝から崩れ落ちる。
「散々な目に遭いました…………」
そして、ただ一言だけ呟いた。
体の隅々まで明丸に洗われてしまったルーテからは、良い香りがほんのりと漂っている。
おまけに、顔からは未だに湯気が立ち上っていた。
(とにかく……無事で良かったです……)
見慣れた場所へ帰ることができたので、安心して胸をなで下ろすルーテ。
孤児院へ戻る為に、ポータルの外へ出て遺跡を後にする。
外は満点の星空だった。
雲一つない夜空に、星々が燦然《さんぜん》と輝いている。
ルーテは空を見上げながら、感動した様子で言った。
「綺麗なテクスチャですね……!」
そして、孤児院へと戻り眠りにつくのだった。
*
――そして翌朝。
「ルーテ」
ルーテは朝食を食べ終えた後で、イリアに呼び止められる。
「はい、何でしょうか?」
「ついて来て」
「え?」
そして問答無用で右手を掴まれ、孤児院の地下にある物置きへと連れ込まれるのだった。
「あの……こんな所で一体何を……?」
「………………」
「い、イリア……?」
イリアは、何も言わずにルーテのことを壁際へと追い込み、じっと観察する。
「――昨日の夜、どこに行っていたの?」
しばらくして、そう問いかけてきた。
「え? ……ええと……その……」
「言えないところ……? もしかしてルーテ、何か悪いことしてるの……?」
「そ、そういう訳ではないのですが……」
なんと説明すれば良いか分からず、たじろぐルーテ。
「どうして分かったんですか……?」
「あなたから女の子みたいな匂いがするわ」
「はい……?」
イリアは困惑するルーテの首元に鼻を近づけながら続ける。
「昨日寝る前はここのお風呂の匂いだったのに、起きたら変わっていたの。そうしたら普通、誰でも気づくでしょう?」
「どう考えても、そんな事に気づくのはイリアだけだと思いますが……?」
「……ねえ、教えてルーテ。この女の子の匂いは何? 夜中にこっそり抜け出して女の子に会いに行くなんて……そういうのは良くないと思うわ」
まくし立てるように問いかけてくるイリア。
(匂いで分かるなんてスキルは存在しません。……となると、もしかしてこれもバグ……?)
一方、ルーテはそんなことを考えていた。
(――とにかく不可解すぎます……メインキャラクターが謎の挙動をしないでください……!)
道理の通じないイリアに対して恐怖を感じたルーテは、咄嗟《とっさ》の判断でその場から撤退しようとする。
しかし、イリアは両手を壁についてルーテの逃亡を阻止した。
「どうして逃げようとするの? 私はお話しをしてるだけよ?」
「あ、あの、イリア……? 誤解をしているみたいですが、僕は別にこっそり抜け出して女の子と会っていた訳ではありませんよ? というか、そもそも女の子と一緒に居た記憶が……」
ルーテはそこまで言いかけて口籠る。
「……あることにはありますね」
「あのねルーテ。私たち……家族よね? 家族に隠しごとは良くないと思うわ」
「…………はい」
「……ルーテもお年ごろだから……その、女の子を好きになったりするのは仕方のない事だと思うけれど……私は心配なの。いくらなんでも、夜中に抜け出してまで会いに行くのはだめよ……! 二人でこっそり会って……手をつないで夜空を見て……最後に目を閉じて……あんなこととかしちゃったりするだなんて……! 不純だわ!」
一人で勝手に盛り上がって顔を赤らめるイリア。
(想像力がたくましいですね……)
ルーテは、そんな彼女に冷ややかな視線を送った。
「待ってください。……確かに女の子? とは一緒に過ごしましたが、イリアの言ったようなことはしていません」
「ほ、本当に……?」
「はい。僕はただ修行をしていただけです」
頷きながらそう答えるルーテ。
「しゅ……修行……? どうして夜にそんなことするの……?」
一方、イリアは大いに困惑していた。
「落ち着いて下さいイリア」
「お、落ち着いてなんかいられないわ! るーちゃんにそんな大変なことをさせるなんて……その女の子は一体何を考えているの?!」
「いえ……強くなることを望んでいるのは僕ですので……」
「私……るーちゃんのことが分からないわ……! どうしてそんなに強さを求めるの……?」
そう言って、ルーテに詰め寄るイリア。
「――イリア達になら、そろそろ話しても良いかもしれませんね」
ルーテは独り言のように呟く。
「……………………?」
「マルスとゾラをここへ呼びましょう。――三人にだけ、僕が知っている事を話します」
かくして、ルーテはこの先に起きる魔物の襲撃を皆へ打ち明けることにしたのだった。
(……僕の話を信じて貰える程度には好感度が高まっていると良いのですが……)
――ちなみに、ルーテが孤児院の皆と遊んで好感度を稼いでいたのはこの時の為である。
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