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第20話 魔導研究所
しおりを挟むルーテが行おうとしている金策の方法は「魔物の素材を集めて売る」という、極めて単純なものだ。
しかし、売り方にコツがある。
特定の地域でしか出現しない魔物の素材を、別の場所で売るのだ。
例えば、先ほど倒したコボルトロードは、アルカディア王国の森林系ダンジョンにのみ生息するレアモンスターである。
こいつがドロップする牙や爪は、鳴子ノ国だと本来の二倍以上の値段で売却することができるのだ。
――だが残念なことに、今回倒したコボルトロードは何もドロップしていない。
(まずは……ドロップ率を上げる【解剖】の指南書が欲しいですね。これを取りに行きましょう)
ルーテはそう考え、アレスノヴァを起動した。
【解剖】の指南書は、ウムブラにあるダンジョン『魔導研究所跡地』を探索すれば確実に入手することができる。
本来であればメインストーリーの中盤に訪れることになるダンジョンで、推奨レベルは35。
(やっぱり、推奨レベルよりちょっと低いくらいの方がスリリングで楽しいですよね!)
近頃修行ばかりで少しだけ退屈していたルーテにとっては、絶好の場所だった。
かくして、ルーテはアレスノヴァを操作してウムブラへとワープする。
*
――半年間の調査の結果、彼が拾ったアレスノヴァに移動先として登録されている遺跡は、全部で十一か所であることが分かった。
まずはルーテが暮らす「アルカディア王国」に三か所、隣の資源大国「タルシス」に二か所、「鳴子」には一か所、砂漠と交易の国「エリュシオン」が一か所、そして魔導大国である「ウムブラ」に二か所、ラストダンジョンがある暗黒大陸「ヘラス」に一か所だ。
残りの一か所は「タルシス」「アルギュレ」「クリュセ」の国境沿いに存在する巨大なダンジョン、『マリネリス大峡谷』の中である。
これらは、どれもメインストーリーを最短で攻略した際に必ず通過する必要がある遺跡だ。
他にも浮遊大陸の都市である「タオファ」や、海底に沈んだ都市「ユートピア」等の場所に遺跡が存在しているが、そこはメインストーリーの攻略において必ずしも通過する必要が無いため、登録されていない。
(前のデータでRTAでもやっていたのでしょうか……?)
ゲームに侵食された思考回路を持つルーテはそう考えていた。だが、そもそもこの世界に前のデータが存在するのかは不明である。
「まあ、今はそんなことを考察している場合ではありませんね」
ワープを済ませ、ウムブラの遺跡へとやって来たルーテ。この遺跡から少し歩いた場所に『魔導研究所跡地』は存在する。
(とにかく外へ出ましょう)
ルーテはポータルを後にし、反応しない自動ドアを魔法でこじ開けて遺跡の外へ出た。
ウムブラはまだ早朝で、外には雪が降り積もっている。おまけに、少し強い風が吹いていた。
比較的暖かいアルカディアで、ショートパンツを着用して過ごしているルーテには想像を絶する寒さである。
「………………………………」
ルーテはこじ開けた扉を無理やり閉めた。
「――暖を取れ、フォクス」
そして、すかさず魔法を高速詠唱する。
準備を整えた後で、再び閉めた扉をこじ開けた。
「ふぅ……危うく凍え死ぬところでした!」
ウムブラはほぼ一年中雪の降り積もる寒冷地である。魔法等による対策なしで長時間外を出歩けば急速に体温を奪われ、HPが尽きてゲームオーバーだ。
しかしルーテに抜かりはない。こういった状況に備えて、あらかじめ体温を保つための魔法を習得している。ただ、使うのを忘れていただけだ。
「ええと……研究所は……」
気を取り直して、ダンジョンを探すために雪原を見渡すルーテ。
すると、遠方の小高い丘に古びた屋敷が建っているのを発見した。
「……ありました!」
あれが『魔導研究所跡地』である……はずなのだが、様子がおかしい。
「跡地……という感じではありませんね……」
記憶にあるダンジョンの姿との違いに首をかしげるルーテだったが、すぐに気付く。
――魔道研究所も、孤児院と同じく大地の亀裂から発生した魔物によって滅ぼされる場所なのだ。
(つまり……まだダンジョン化していないということでしょうか……?)
疑問に思ったルーテは、人が居るのか確認するために屋敷へ向かって歩き始めた。
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