転生ゲーマーは死亡確定のサブキャラから成り上がる~最序盤で魔物に食い殺されるキャラに転生したので、レベルの暴力で全てを解決します~

おさない

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第22話 記憶喪失のミネルヴァ

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 階段を降りると、その先は薄暗い広間になっていた。

 床には魔導書の断片や、血の付着した怪しげな器具が散乱している。

 そして、人間ではない何かの叫び声やうめき声のようなものが、微かに聞こえてくるのだ。

「研究所というよりは不気味な地下牢獄みたいですね……」

 ルーテはそう呟く。

 ここは、原作屈指のホラー系ダンジョンなのである。

(やはり、ここに来ると別のゲームをしているみたいな感覚になりますね……怖いのは苦手なのですが……)

 意外にも、ルーテには「ホラーゲームが苦手」という弱点があった。幽霊には暴力が通じず、経験値にできないからである。

「お願いですから……幽霊だけは出て来ないでくださいね……?」

 そう祈りながら、周囲にモンスターが潜んでいないことを一通り確認し、気を引き締めてダンジョン攻略を開始するルーテ。

 ちなみに、先ほどの研究者が死に際に言った「実験体」が何を指しているのかは把握していない。

(……遭遇したモンスターを片っ端から倒していけば問題ありません!)

 しかし、ルーテはそう考えていた。

「それでは、探索開始です!」

 そうして広間を通り抜け、正面にある通路に足を踏み入れた瞬間。

「ぐおおおおおおおおおッ」

 いきなり壁を突き破って現れた凶悪な魔物「キマイラクローン」が襲い掛かってくる。

「大氷よ覆い尽くせ、グラキエス」
「ぐぎゃああああああッ」
「旋風よ切り刻め、ウェルテクス」
「ギイイイィィィィッ」
「大火よ焼き尽くせ、イグニス」
「ジュッ」

 そして、モンスターはルーテの魔法によって消し炭になった。

 その瞬間、ルーテはレベルが30になる。

「幸先が良いですね! この調子でどんどん進んで行きましょう!」

 レベル以上に強力な魔法を習得している彼にとって、このダンジョンのモンスターは敵ではないのだ。

 *

 ――それから少しして。

「…………迷いました」

 順調にダンジョンの攻略を進めていたルーテだったが、気づいたら迷子になっていた。

「原作とマップが違います……!」

 彼が現在探索しているのは、まだ崩壊が進んでいない研究所なので、前世の記憶があまり役に立たないのである。

「この研究所って……こんなに広かったんですね」

 そんなことを呟きながら、ダンジョン内を彷徨い歩くルーテ。

「ぐおおおおおおおおおッ!」
「イグニス」

「ぐぎゃああああああッ!」
「グラキエス」

「ギイイイイイイィィィィッ!」
「ウェルテクス」

 その間に遭遇したモンスター達は、一匹残らず彼の経験値になった。

 ――そうこうしているうちに、ダンジョン内からモンスターの気配が消え去る。

 目的はおそらく達成され、ルーテはレベル31となったが、それでもまだ帰り道が見つからなかった。

「生存者も見つかりませんし……ここだとアレスノヴァも使えません……。詰みました……」

 迷いすぎてどうしようもなくなり、思わず呟いたその時。

「……何してるですか?」
「わあ!」

 ルーテは、突然背後から声をかけられた。

 驚いて叫びながら振り返ると、そこには白い服を身に纏った銀髪の少女が立っている。

「そんなに大きな声を出すなです」

 その少女は、紫色の瞳を怪しく輝かせながら言った。

「び、びっくりしました……」
「そんなにおどろかれると……傷つくのです……」

 しょんぼりとした顔になって俯く少女。

(背後を取られるなんて……不覚です。ただ者ではありませんね……!)

 一方、ルーテはそんなことを考えていた。

「……なんとか言えです」
「ごめんなさい。まさかこんな所に子供が居るとは思わなかったので……驚いてしまいました!」
「お前が……言うなです」

 少女は不機嫌そうに唇を尖らせる。

「ところで……一つお聞きしたいのですが、あなたはどちら様ですか? 研究員の人には見えませんが……」
「……それを覚えていたら、お前みたいな怪しい奴になんか話しかけていないのです」

 ルーテの問いかけに対し、そう答える少女。

「何も……覚えていないんですか?」
「だからそうだと言っているのです!」

 どうやら、彼女は記憶喪失らしい。

「まったく……やっとバケモノじゃないまともな人間を見つけたと思ったのに、ミネルヴァについて何も知らないなんて…………使えない奴です!」

 そう言って頬を膨らませ、そっぽを向く少女。

 しかし、その目には涙の跡があるので、つい先程まで一人で居るのが心細くて泣いていたことは明白だった。

 彼女の態度はただの照れ隠しである。

「…………! 名前……ミネルヴァさんって言うんですか……?」
「――ヒトに名前を名乗らせたいなら、そっちから先に名乗ったらどうです?」
「なるほど……それもそうですね。――挨拶が遅れてすみません。僕はルーテといいます」

 ルーテが言うと、少女は少しだけ柔らかい表情になった。

「ちゃ、ちゃんと挨拶できたことは褒めてやるです」

 彼が怪しい者ではないとはっきり分かり、警戒が解けたのである。

「……ミネルヴァの名前はミネルヴァなのです。覚えていることはそれだけで……気付いたらこの不気味な場所に倒れて居たのです。……よろしくです」
「……そうですか。では、やはりあなたは僕が討ち倒すべき敵ということですね」

 ルーテはそう言いながら少女――ミネルヴァに近づき、腕を掴む。

「……え?」
「……ラスボス発見です! いざ、尋常に勝負!」
「ええええええええええええええええ?!」

 ――ミネルヴァ。

 それは、『レジェンド・オブ・アレス』において、大地の亀裂や魔物の大発生の元凶となった存在――ラスボスの名前である。
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