32 / 117
第28話 中ボス狩り
しおりを挟む「風よ象《かたど》れ、ラミナ」
ルーテは即座に風の刃を生成し、戦闘態勢に入る。
「風よ舞え、アウラ」
そして自らの素早さを上昇させ、シスターへ向かって一直線に突撃した。
「…………は?」
あまりにも一瞬の出来事だった上に子供からの反撃を想定していなかったので、シスター――トワイライトは反応が遅れる。
その一瞬の隙にルーテは間合いへと踏み込み、≪一閃≫を発動した。
「――――っ!」
対して、反射的に短剣を振るうことで攻撃の軌道を逸らすトワイライト。
結果的に、胴体を狙って放たれたルーテの戦技は、彼女の両腿の辺りを斬り裂いた。
「ぐああああああああああッ!? いってェええええッ!」
トワイライトはその場で崩れ落ち、出血した腿を手で押さえて転げ回る。
一方、ルーテは彼女が落とした短剣を足で遠くへ蹴飛ばして制圧を完了させた。
――しかし、初撃を外して仕留め損ねたせいでまだ経験値を入手できていないため、彼の攻撃は終わらない。
「冥界の冷気よ、あまねく生者を不帰の眠りへと誘え」
ルーテは呪文を詠唱しながら、苦しみのたうち回るトワイライトの足首を掴む。
「くそッ! クソクソクソッ! やめろっ! やめろおおおおおッ!」
そして、にっこりと笑いながら魔法を発動した。
「――ヒエムス」
刹那、彼女の身体は下半身からゆっくりと凍りついていく。
「ひぃっ?! テメェッ! 何しやがったッ!? ふざけんなッ! ふざけんなガキがああああああッ!」
「……少しだけHPを調整します」
元気そうなトワイライトを見て魔法の威力だけでは倒しきれないと判断したルーテは、ついでに彼女の上に馬乗りになって顔面を数回ぶん殴った。
バキッ、バキッ、という乾いた音が鳴り響き、地面に血が飛び散る。
「うぐっ?! がはぁっ!」
「……よし! これでおそらくレベル32になれますね!」
「あ――――?」
次の瞬間、トワイライトの身体は完全に凍りつき、ルーテの経験値と成り果てた。
「討伐完了です!」
そして、宣言通りレベルアップするルーテ。
トワイライトの攻略法は回復する隙を与えないことだ。ルーテは、それに忠実に立ち回ったのである。
「ふぅ…………」
戦闘を終えたルーテは、服の埃を振り払って一息つく。
「るーちゃんっ!」「ままぁっ!」
そんな彼の元へ、震えながら一部始終を見ていたイリアとミネルヴァが駆け寄った。
「怖かったよぉ……っ!」
「おっかないおばさんだったのですぅっ!」
涙声でそう言いながらルーテに抱き着く二人。
「…………主人公候補とラスボスの方がよほど怖いと思いますが」
対してルーテは、素直な気持ちを述べた。
「ね、ねえ……ルーテ。この人……殺しちゃったの……?」
するとその時、イリアが足元に転がっている凍り付いたトワイライトを見て問いかける。
「――殺すつもりなら最初に首を狙っています。今回は軽く足を斬った後に凍らせただけなので生きていると思いますよ!」
「ほ、本当に……?」
「………………たぶん。調整を間違えていなければ」
「………………………………」
イリアがそれ以上追求することはなかった。
「……一歩間違えばミネルヴァもこうなっていたですね……よく考えたらママが一番おっかないのです……!」
ミネルヴァは事実に気付いてしまい、震えながらルーテの側を離れる。
「安心してください。ミネルヴァのことは大切な家族だと思っていますよ! それに、育てた方がメリットが大きいので経験値にはしません!」
「……なるほど、やっぱりミネルヴァは特別なのですね! 大好きですママぁっ!」
「よーしよしよし」
ルーテは再び抱き付いてきたミネルヴァの頭を優しくなでた。
「歪な関係ね……先生に相談するべきかしら……」
その様子を隣で見ていたイリアは、思わず呟く。
「――ですが、これで終わりではありません」
「………………え?」
「僕はこれから、近くに出現しているであろう『残りの二体』を狩ってきます。なので二人は先に戻っていてください!」
「な、何を言っているのルーテ……?」
「ここに中ボスのシスタートワイライトが出現したのであれば、他の二人も近くに潜んでいるはずなんです! そういう決まりがあるんです!」
「…………よく分からないわ」
いつも通り意味の分からないなことを言い始めたルーテに対して、首を傾げるイリア。
――シスターを含めた『賞金首』三人組は、ストーリーの中盤あたりで戦うことになる、本筋とあまり関係のない中ボスだ。
一度撃破した後も度々監獄を脱走するので、世界各地のダンジョンで稀にエンカウントするのである。
獲得経験値量が多い上に賞金も手に入るので、中盤から終盤にかけて積極的に狩られる存在だ。
中ボス三人組が出現するかの判定はダンジョンに入る度に行われるので、彼らとエンカウントするまで同じダンジョンを何度も出入りするプレイヤーも居る。
通称『中ボスマラソン』である。
「すぐに戻って来ます! さようなら!」
「る、るーちゃん?!」
「経験値! 経験値! 経験値!」
「ま、待ってっ?!」
現在が経験値獲得のボーナスタイムであることを理解したルーテは、嬉々として走り出すのだった。
0
あなたにおすすめの小説
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる