56 / 117
第49話 教団への入り口
しおりを挟む「ここです!」
ルーテは町を通り過ぎ、その先の入り組んだ地形にある、小さな洞窟の前までやって来た。
(この場所を探索すれば、きっと他の紅蝠血の居場所に関する手掛かりがつかめるはずです!)
そんなことを考え、やる気をみなぎらせるルーテ。
「こんなところに……変態どもが寄り集まっているのね……気持ち悪いわ……」
すると、隣にいるシャーディヤがそう言いながら、ゆっくりと洞窟の中を覗き込んだ。
それからすぐ、むっとした表情でルーテのことを睨みつける。
「…………何もないじゃない……嘘つき……」
「入口は隠されていますからね。……僕も、ヒントが少なすぎて最初に見つける時は苦労しました……!」
ルーテは前世の記憶を思い出しながら、しみじみとした様子で語った。
「はぁ……はぁ……待ってくれ……!」
その時、後ろから追いかけて来ていたバシリアが、ようやく二人に追い付く。
「き、君達、どこまで行くつもりだい……? こんな町はずれまで来てしまったじゃないか……!」
息を荒げながら、そう問いかけるバシリア。
彼女は鎧を着こんでいるため、ルーテ達のように早く走ることが出来ないのである。
「安心してください! 目的地はここです!」
「こ、こんな何も無い場所で……一体何を……?」
「先ほども言った通り、僕はこの洞窟に潜むアンタレス崇拝教団を壊滅させに来たのです!」
そう宣言するルーテ。
(本当は紅蝠血に関する情報を入手しに来ただけなのですが……先に教団を壊滅させて自由に動き回れるようにした方が手っ取り早いですよね!)
彼はスキルを習得したのにも関わらず、隠密行動が壊滅的に苦手だった。ステルスゲームをする際は、敵を全て正面から蹴散らして進んで行くタイプである。
「……ところで、そのアンタレス崇拝教団とは、一体何のことなんだい?」
するとここにきて、バシリアがそんな疑問を口にする。
「……色々な国の人を誘拐して、悪いことをしているという設定の教団です! 言ってしまえば、悪魔崇拝者の方々ですね!」
ルーテはそう答えた。
「――――っ?! そ、それは……本当なのかい?!」
唐突に衝撃的な事実を告げられ、困惑するバシリア。
「はい! ……表立って活動を始めるのは数年後なので、知らなくても無理はありません」
「私は知っているわ……この前、信者の奴に後ろから襲われて……路地裏へ連れ込まれそうになったから……ぐしゃぐしゃにしてあげたの……ひひひっ!」
シャーディヤがルーテに同行した目的は、その時のお礼参りをする為である。
「……分かった。この場所の調査は後日、我々騎士団が行おう。君たちの情報提供に感謝する。……というわけだから、早く家《うち》へ――」
「お断りします!」
「待ちなさいっ!」
バシリアは、とっさに洞窟の中へ入って行こうとしたルーテの腕を掴んで引き戻す。
「……まったく……ここはガキの出る幕じゃないわよ……」
「君もだ!」
「あぅ…………」
「子供二名確保っ!」
そして、どさくさに紛れて抜け駆けしようとしたシャーディヤのことも捕まえた。
「……分かっているのか? 仮に君達の話が本当であるならば、教団は人を攫っている危険な存在なんだぞ?」
「その通りです! 危ない教団は経験値――じゃなくて、壊滅させなければいけません!」
「とりあえず……責任者を引きずり出して……指を一本ずつ潰しましょう……」
「もういやだこの子たち……」
弱音を吐くバシリア。
ルーテもシャーディヤも、新米騎士の手に負える相手ではないのである。
「……待って。……誰かくる……」
その時、何者かの気配を察知したシャーディヤが呟いた。
「――か、隠れるぞ!」
バシリアは瞬時の判断で二人の腕をひっぱり、近くの岩陰へ身を隠す。
「二人とも私の後ろへ!」
――それから程なくして、灰色のローブに身を包んだ怪しい集団が洞窟の前へやって来た。
「見てください。あれがアンタレスの信者さん達です……!」
小声でそう説明するルーテ。
信者たちは、入口の壁の辺りを調べた後、ぞろぞろと洞窟の中へ入って行った。
「確かに、怪しいな……」
その様子を眺めていたバシリアは、少しずつルーテの言うことを信じ始める。
「――もう大丈夫そうだ」
どうにかやり過ごし、ほっと胸をなでおろすバシリア。
「……とにかく、君たちは帰るんだ。私が家まで……ってあれ?」
その時、彼女は後ろに立っていたはずのルーテとシャーディヤの姿がないことに気付いた。
「ここの壁に……隠し扉を開けるための仕掛けがあったのね……」
「開きましたよ! さっそく悪の組織のアジトへ乗り込みましょう!」
彼らは、勝手に教団への侵入を試みていたのである。
「な、なんですかあなた方は?! どうやって入口を?!」
「見張りの存在を忘れていました!」
「……口封じしましょう……」
そして、即座に発見される二人。
「……ああ。入団希望者の方ですか? でしたら――」
「黙りなさい……」
「問答無用!」
「ぐあああああああああああっ!」
早速、信者の一人が尊い犠牲となった。
「うわああああああああああああっ?! なななな、何をしてるんだ君達っ?!」
少し目を離した隙にどんどんと状況が悪化していき、悲鳴を上げるバシリア。
「か、確証も無いのに襲撃するんじゃないっ! 君達のことを捕まえないといけなくなるぞっ!」
「望むところよ……」
「どうしてっ?!」
――彼女の災難はまだまだ続く。
0
あなたにおすすめの小説
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる