転生ゲーマーは死亡確定のサブキャラから成り上がる~最序盤で魔物に食い殺されるキャラに転生したので、レベルの暴力で全てを解決します~

おさない

文字の大きさ
57 / 117

正史3 二人はどこでも一緒

しおりを挟む

「いたい……よ……」

 両足を切り落とされた少女――レアは、血の跡を残しながら地べたを這いずる。

「ノア……起きて…………?」

 そして、必死に自分の片割れの名を呼びかけた。

「………………」

 しかし、返事がかえってくることはない。

 ノアの胸の辺りには剣が突き刺さっていて、そこから真っ赤な血が流れていた。

 彼は、心臓を刺し貫かれて死んでしまったのである。

「あ……あ……!」

 ノアから溢れ出す生暖かい血と、冷たくなった彼の頬に触れたことで、幼い少女は片割れの死をはっきりと理解する。

「いっしょがいいって……言ったのに……!」

 レアは大粒の涙を流しながら、半身の亡骸に縋りついた。

「ノアぁ……起きてよぉっ……!」
「………………」

 青年は、ノアに突き立てられていた剣を抜き取ると、その血を振り払ってからレアに突き付ける。

「おねがい……します……」
「…………?」
「ノアと……いっしょにしてください……」

 対してレアは、青年の足を掴みながらそう懇願した。

「……死んだあとは……好きにしてくれて、かまいません……。だけど……ノアとべつべつなのはいやです……」
「………………」

 青年は何も言わずにゆっくりと頷いた後、そっと彼女の涙を拭ってやる。

 そして、持っていた剣を振り上げた。

「……おやすみなさい……ノア」

 レアは、最期にこう囁く。

「同じところに……行くね……」

 *

 ノアとレアは、いつも仲良しな双子であった。

 とある森の奥深くに存在する教会の中、たった二人で育てられた彼らは、仲良くするしかなかったのである。

「――ねえねえ、ノア。起きてよ。いっしょにあそぼ?」
「ふわぁ……? ……うん。……何するの?」
「んちゅ……」
「んっ……?!」

 ノアの問いかけに対し、レアは口づけで答えた。

「…………ぷはっ」
「れ、レア……? 今のなに……?」
「本の中でね、女の人と男の人がこうしてたの。……面白いでしょ?」
「ま、また勝手に本をよんだの……? 神父さまに怒られちゃうよ……」
「ばれてないからだいじょうぶ!」

 レアはいたずらっぽく笑いながら言う。

「ぼく……もうむち打ちはいやだよ……」

 彼らにとって、時々盗み読みする本だけが唯一の娯楽なのだ。

「でも……ノアはさいきん相手してくれないんだもん……つまんないよ」
「ごめんなさい……」
「いつも、一人で何してるの?」
「………………」

 そう聞かれたノアは、俯いて黙り込んでしまう。

「ノア……どうしたの?」
「あのね、レア……」

 少しだけ言い淀んだ後、ノアは意を決した様子でこう続けた。

「――ぼくといっしょに逃げて」

 彼らは教団に献上する為に、汚れたものから遠ざけられて育った、最上級の生贄である。

 やがて、教団が崇拝する神にその命を捧げる運命にあるのだ。

 *

「………………」

 その日の夜、ノアから教会の真実を告げられたレアは、眠れずにいた。

 優しい神父さまと大好きなノア。

 どちらの言うことを信じれば良いのか、彼女には分からないのだ。

「レア、ノア、もう眠りましたか?」

 その時神父がやって来て、二人の眠る寝室を覗き込みながら問いかける。

「ねむれません」

 正直に即答するレア。

 神父さまの問いかけには、嘘をつくことができなかった。

「……おやおや、珍しい。何か嫌なことでもありましたか」
「それは……分かりません」
「不思議な答えですね」

 そう呟き、首を傾げる神父。

「……あのね、神父さまは……悪い人ですか?」
「善くあろうとは心がけていますよ」
「うーん…………?」

 レアには、神父の言葉がよく理解できなかった。

「眠れないのであれば、私の部屋で話をしましょうか」
「……神父さまのおへや? 行ってみたいです!」
「ではこちらへ。――ノアを起こしてはいけませんよ」

 こうして、神父の部屋へ招かれることになったレアは、こっそりとベッドから抜け出して寝室を後にするのだった。

「おへやはどっちですか? 神父さま?」
「……私について来てください」
「はい!」

 それから、長い廊下を通り、一番突き当りにある部屋へと案内されるレア。

「ここです。さあ、どうぞ中へ」
「…………!」

 部屋の中は、勝手に読むことを禁じられている本が、所狭しと並べられていた。

「ほ、本が……たくさん……!」

 レアがそれらに意識を奪われていると、バタンという音と共に背後の扉が閉じられる。

 神父は何も言わず、扉を塞ぐようにして佇んでいた。

「し、神父さま……?」
「二人でこそこそといけないことばかり……私が気付いていないと思いましたか?」
「え…………?」

 レアは神父に距離を詰められ、どんどんと壁際へ追い詰められていく。

「どうやら……もっと厳しく躾けないと分からないようですね」
「ご、ごめんなさい……」
「あなた方が逃げ出せば、処分されるのは私なのですよ?」

 次の瞬間、レアは無理やり床へ押し倒された。

「きゃあっ?! いやっ、やめてっ!」
「……騒がないでください」

 神父はレアの頬を強くはたく。

「ひぃっ?! ご、ごめんなさいっ! もうしませんっ! ゆるしてくださいっ!」
「すぐに終わりますから……大人しくしていなさい」

 そう言うと、神父は薄気味悪い笑みを浮かべながら、押し倒したレアの服に手をかけた。

「君達は本当に美しく育ちましたねぇ……宝石みたいな目だ……あぁ、もうここで抉り出してしまいましょうか……?」

 初めて人間の悪意を見せつけられたレアは、恐怖と嫌悪感で心の中がいっぱいになる。

「ぁ、いやぁ……っ!」

 そして、ほとんど声が出せなくなってしまった。

「良い子です。そのまま静かに――」

 その時、鈍い音が鳴り響く。

「ううぅっ……?!」

 気づくと、神父はうめき声を発しながらレアの隣に倒れ込んでいた。

 彼の頭からは赤い血が流れている。

「はぁ……はぁ……っ!」

 レアが視線を正面に戻すと、そこには血のついた火かき棒を持ったノアが立っていた。

「ノア…………?」
「うぐぅ……な、何を……」

 ノアは起き上がろうとした神父に、さらに数回、火かき棒を振り下ろす。

「あ、あぁ……」

 そして、神父が動かなくなったところでようやく火かき棒を手放し、力なくその場に座り込んだ。

「しんじゃった……ぼくが、神父さまを……ころしちゃった……」
「の、ノアっ!」

 レアは神父の側から逃げ出し、返り血を浴びて真っ青な顔をしているノアに抱きつく。

「怖かった……怖かったよぉっ!」
「だいじょうぶ……? レア……」
「う、うん……!」
「ぼくは……もう、だめみたい……」
「ノア…………?」

 その時、レアはノアの体が震えていることに気づいた。

「ご、ごめんなさい……ごめんなさい、神父さま……」

 虚空を見つめながら、かすれた声でうわ言のように呟くノア。

「も、もういいんだよノアっ! ノアの言う通りだったのっ! 神父さま……悪い人だった……! ――だから逃げよう……? いっしょに逃げちゃおうよ……!」
「一人で……逃げて……」
「え…………?」
「ぼ、ぼくは……悪い子だから……レアとは一緒に行けない……」
「な、何言ってるの……?」

 ノアはゆっくりと立ち上がり、火かき棒を手に取る。

 そして、その先端を自分の腹部に押し当てた。

「そんなことしたら……あぶないよ……?」
「わ、悪い子は……地獄に行かないと……!」
「…………分かった」

 すると突然、レアが彼の持っていた火かき棒を奪い取った。

「え…………?」
「わたしは……ノアといっしょならどこでもいいよ」

 言いながら、レアは倒れている神父に近づいていく。

「神父さま……まだ生きてるかも?」

 そして、再びその頭に火かき棒を振り下ろした。

「な、何してるの……? やめてよ……! そ、そんなことしたら…………!」
「だ、だって……ノアが地獄におちるなら……わたしもそこに行きたい……!」
「まって――」
「一人はいやっ!」

 レアは震える声で言いながら、さらにもう一度振り下ろす。

 すると、神父の体が突如として痙攣し、それからまた動かなくなった。

「あ……ぁ……!」
「こ、これで……またいっしょだよ……!」

 レアは青ざめた顔で言いながら、怯えるノアに向かって微笑む。

「――――――っ!」

 対してノアは、レアが持っていた火かき棒をはたき落として言った。

「レアのばか……っ!」
「ばかじゃないもん!」
「お、おねがいします……神さま……レアのことは……ゆ、ゆるしてくださいっ!」

 血まみれになったレアのことを抱きしめながら、神に許しを乞うノア。

「ゆるしちゃだめだよ! いっしょに……地獄におちるの!」

 こうして、彼らは初めて人を――育ての親である神父さまを殺したのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...