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第62話 相談する相手を間違えている
しおりを挟む「することがなくなってしまいました!」
ノックス達を魔物牧場へ放置した翌日の朝、いつも通り目覚めて孤児院の外へ出たルーテは気づいてしまう。
「僕は……一体何をすれば良いのでしょうか……?」
レベル50になった彼は、直近の目標を見失ってしまったのだ。
(魔物サンドバッグ道場も空ですし……今ウォーキング読書をしてもあまりうまみがありません……!)
膝から崩れ落ち、絶望に打ちひしがれるルーテ。
「暇になってしまいました……!」
その時、何者かが彼の肩を叩く。
「おはよう、ルーテお兄ちゃん!」
ルーテが振り返ると、そこにはレアが立っていた。
「おはよう、ルーテお兄さん」
その隣には、例の如くノアも居る。
「……おはようございます。二人とも早起きですね」
ルーテは気を取り直して立ち上がり、ノアとレアに挨拶をした。
「でも、ルーテお兄ちゃんには敵わないよ! 本当は、みんなが起きる前にここを――」
レアはそこまで言いかけた後、はっとした様子で口を塞ぐ。
「言っちゃだめだよ……家出すること――」
ノアは完全に言ってしまった後で、慌てて自分の口を塞いだ。
「………………!」「………………!」
全ての計画を話した後、何も言わずに固まってしまう二人。
「……聞くまでもない気がしますが……家出するつもりだったのですか?」
ルーテが問いかけると、二人はこくこくと頷いた。
「体は正直ですね」
その様子を見たルーテは、思わず呟く。
(――出来るだけ皆のことを気にかけてほしいと先生も言っていましたし……ここは僕がちゃんと話を聞いておくべきでしょう! やることができました!)
ルーテは突然はりきり始め、二人に視線を合わせてこう問いかけた。
「どうして家出なんかしようとしたのですか? 僕でよければ話を聞きますよ?」
「えっと……それは……」
「孤児院での暮らしに何か不満でも?」
「そ、そういうわけじゃないんだ! ただ……」
ノアはそこで少しだけ言い淀んだ後、絞り出すように続ける。
「ぼくたちは……悪い子だから……」
「でも、昨日『ルーテお兄ちゃんよりは良い子だ』と言っていませんでしたか? その理屈だと、二人より悪い子である僕もここに居られなくなってしまいます。考え直してください」
ノアの言葉に対し、真顔で言い返すルーテ。これでも一応、彼なりに二人の家出を止めようとしているのだ。
「それは……嘘なの。本当はわたしたちのほうが……ルーテお兄ちゃんよりずっと悪い子なんだ……」
「どうしてですか?」
すると、ノアとレアは互いに顔を見合わせる。
――それから最初に口を開いたのは、ノアの方だった。
「…………ひとごろしだから。ぼくは……じゃなくてぼくたちは……ここへ来る前に育ててくれた人のことを殺しちゃったんだ」
「なるほど」
その告白を聞き、ルーテは納得して黙り込む。
(原作では殺人を遊びの延長としかとらえていない系の双子キャラだったのに……成長したのですね……!)
そうして、二人がまっとうな倫理観を持つようになったことに対して心の中で感動していた。
(やはり、人は変われるものです……! ホワイトさんやトワイライトさんだって、いつかはまっとうな人間になれるでしょう!)
密かにそんなことを思うルーテ。
「確かに、人を殺してしまうのはいけないことですね。カルマが下がってしまいますし、先生も駄目だと言っていました。ですが――」
「でもね、それだけじゃないの」
今度は、彼の言葉にレアが割り込んでくる。
「――はい? まだ何か……?」
ルーテが首を傾げながら聞くと、レアは顔を赤くしながらこう答えた。
「わたしはね……えっと……ノアのこと……男の子として好きなの……」
そこへ更に、ノアが続く。
「ぼ、ぼくもレアのことが好きなんだ! その……女の子として!」
「………………」
予想以上に複雑な悩みを相談され、ルーテは再び黙り込んだ。
(思えば、原作からしてそんな感じだったので大した驚きはありませんが……殺人に加えて近親者同士での恋愛とは……カルマ値が凄いことになりそうですね……魔物化まっしぐらという感じです……)
「……でもね、それはいけないことなんでしょ? だから……みんなに迷惑かけちゃわないように二人でくらすの」
「そんなことをせずとも、お互いのことは諦めて別々の人を好きになるという手があります!」
「そんなのむりだよ! だって、ノアのことばっかり考えちゃうんだもん!」
「…………ですよね。僕にもその気持ちは僕にも分かります」
「ほんと?!」
ルーテは深く頷いた後、熱のこもった口調で語った。
「僕だって、いつも大好きな経験値《魔物》のことばかり考えてしまいますからね。諦めろと言われて大人しく諦めるのは不可能です!」
「それはちょっと違う気がするよ?」
ノアは冷静にツッコミを入れる。
しかし、大好きな経験値の話をして気分が乗り始めたルーテのことは、もはや誰にも止められない。
「分かりました、それほど深く悩んでいるのであれば仕方ありません! もう僕の手には負えないので、いっそ家出してしまいましょう!」
「えええええええええええええええええええええええええええっ?!」
「――ただし、僕も付いていきます!」
「えええええええええええええええええええええええええええっ?!」
暴走しておかしなことを言い始めたルーテに、二人はそろって驚愕するのだった。
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