転生ゲーマーは死亡確定のサブキャラから成り上がる~最序盤で魔物に食い殺されるキャラに転生したので、レベルの暴力で全てを解決します~

おさない

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第69話 『耐性』

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 ジェリーとスクイードが目的地に到達した時、既にルーテ達の姿は無かった。

「漆黒の……地獄絵図……!」
「!……ゥこグんぇタナかソおさかなてんごく

 代わりに、廊下の壁には大穴が開いていて、その周囲にはオトヒメのしもべである半魚人達が折り重なって倒れている。

「シースルー……来て……くれたのか……」

 その時、かろうじて息のある半魚人が、ゆっくりと起き上がり、壁にもたれ掛かりながら言った。

「漆黒の盟約で結ばれた同胞よ。その身に刻まれし漆黒の言葉を紡げ」
?ィーえってァからキぁヲくこわいから帰っていい?
「……ふざけてる場合じゃないんだ。……普通に……話してくれ」

 半魚人の言葉に対し、二人は揃って「ごめんなさい」と謝った。

「教えてくれ。一体何があったんだ?」
「ガキだ……ふ、二人組のガキがいきなり壁を突き破って入ってきて……仲間が次々やられて……それで俺は……俺は……ッ!」

 頭を抱え込んで恐怖に震える半魚人。

「無理をして話さない方がいい」
「――――やっぱりこどもの仕業……こどもこわすぎる……」

 ジェリーは取り乱した半魚人と一緒に怯える。

「……悪いが、最後に一つだけ聞かせてくれ」
「ああ……何だ……?」
「その幼子《おさなご》はどこへ向かった」

 スクイードが問いかけると、半魚人は前方の通路を指差した。

「オトヒメ様の部屋とは逆方向……こども、ここで待ち伏せした方がいい。たぶん戻ってくる」

 と、ジェリーが囁く。

「いや……待て。俺に考えがある」
「なに?」
「あっちはオトヒメ様の部屋とは逆方向だ。……ここで待ち伏せしていれば、幼子は戻って来るだろう」
「……それ、わたしと同じこと言ってる……何で勿体ぶった……?」
「これより、漆黒の宴が始まる――」
「誤魔化すな」

 かくして、暗殺コンビの二人は配置につき、ルーテ達が引き返して来るのを待つのだった。

 *

 一方ルーテとミネルヴァは、シースルーの読み通り、元来た道を引き返していた。

「えっと……領主の部屋はどこでしたっけ……?」
「ミネルヴァは歩き疲れたのです……」
「もう少しだけ我慢して下さい。ここで立ち止まっていては、ノアとレアを助けるのが遅れてしまいます!」
「わ、分かってるですよ! 二人はお姉《ねい》ちゃんが絶対に助け出してみせるです! だから、休むつもりは無いのです!」

 ちなみに、彼らが半魚人達にとどめを刺していないのは、「悪事の証拠を発見するまで大事にはしないようにする」とギルドの人と約束し、特別にクエストを受注させて貰ったからである。

 しかし、初手で屋敷の壁をぶち壊したので、既に色々と破綻しかけている。

「その調子です! では急ぎましょう!」

 ルーテが言いながら前へ踏み出した次の瞬間。

「ふぇ……?」

 ミネルヴァが間の抜けた声を上げた。

「ま、ママの体が……浮いてるのです……!」

 彼女の言う通り、ルーテの体は少しだけ浮遊している。

「い、一体どういうことなのですかっ?!」

 突然の怪奇現象に、目を丸くして驚くミネルヴァ。

「大変です……体が全然動きません!」

 一方、ルーテは何者かに締め上げられ、身動きを封じられていた。

ィーあワきぁるキァちあュてばつ食べちゃいたいくらいかわいい
「その喋り方……やはりシースルーですね!」

 彼を押さえ込んだのは、言うまでもなくこの場で待ち伏せしていたジェリーだ。

 彼女は現在、半透明な巨大クラゲの姿へと変身している。

 シースルーの二人は、人間形態と魚人形態を自由に切り替えられる特殊な半魚人なのだ。

「?ォぬレッチす、ぉとコニたちチたウ」

 ジェリーは、クラゲの傘の部分を傾けながら何か言った。

「字幕がないと何言ってるのか分かりません! ――字幕付きのテキストを表示するか、普通に話すかしてください!」
「……わたしたちのこと、知ってるの?」
「はい、勿論知っていますよ。身を潜めるせいで攻撃がほとんど当たらないうえに、厄介な状態異常攻撃で攻めてくるいやらしい中ボスです!」
「………………?」

 ジェリーには、ルーテの話していることが一切理解できなかった。なんだかんだで似たもの同士である。

「み、ミネルヴァはどうしたら良いのですか……?」
「こっちのクラゲさんは僕がなんとかします! 近くに隠れている、サメちゃんとイカの人に気をつけて下さい!」
「さ、さめ? いか……? わ、分からないのですよぉっ!」

 ミネルヴァは目をぐるぐる回しながら頭を抱え込んだ。

 ――ちなみに、原作のシースルーは新入りであるサメを含めた三人組のコンビである。

「うぎゃあっ!」

 その時、動揺していたミネルヴァの顔面に突然黒い塊が着弾した。スクイードの仕業である。

「な、何も見えないのです! 世界が消えたのです! 怖いのですよママぁっ!」

 攻撃がほとんど命中しない盲目状態となり、スミだらけの顔でルーテのことを探すミネルヴァ。

「い、今助けます!」
「だめ。暴れたら体に毒を流し込む……痛いから、大人しくしてた方がいい」
「断ります!」
「……じゃあお仕置き」
「――っ?! わああああああっ!」

 ジェリーの触手が触れている箇所に激痛が走り、ルーテは思わず悲鳴を上げる。

「……ね。痛かったでしょ? 良い子だから、大人しくしてて。……どっちにしろ、しばらく動けないと思うけど」
「はぁ、はぁ……うくっ……!」
「ごめんね……おわびに、いいこいいこしてあげる……」

 ジェリーは、余っている触手でルーテの頭を撫で回した。

「かみサラッサラ……!」

 クラゲである彼女は、相手を毒と麻痺の状態異常にする特殊な攻撃を行うことができるのだ。

「……そういえば……耐性はまだぜんぜん獲得していませんでしたね……」

 ルーテは、苦しそうな顔をしながら思い出したように呟く。

「……ねえ、さっきから何言ってるの? こどもの話題についていけない……」

 ――レジェンド・オブ・アレスには、属性攻撃や毒などの状態異常に対する『耐性』の概念が存在している。

 属性攻撃や状態異常を受け続けることで、それらに対して少しずつ打たれ強くなっていくことが出来るのだ。

 完全に無効化することは出来ないが、耐性が有るのと無いのとでは、受けるダメージや状態異常の罹りやすさ等が変わってくる。

(耐性を身に付けるよりも、レベルを上げて殴った方が恩恵が大きいので、今までは特に気にしていませんでしたが……そろそろ、そういった細かい部分を鍛え始めても良いかもしれませんね……!)

 当分の間、経験値を稼ぐ意味が無くなってしまい、目標を見失いかけていたルーテ。

 彼の目の輝きが、再び強まっていく。

(決めました! ジェリーさんとスクイードさんには、魔物サンドバッグ道場に来て貰いましょう!)

 ――人の特徴を持ちながら普通の人間とは違う彼らは、武器や魔法を使わずに素手のままで毒や麻痺、盲目状態の付与された攻撃が行える。

 耐性を身に付けるには、絶好の相手なのだ。

「とにかく、大人しくしてくれれば痛くはしない。分かった?」
「もっと……」
「うん?」
「もっとやってくださいジェリーさん! 遠慮はいりませんよ!」
「ふ、ふえぇ?!」
「僕は決めました! ジェリーさんには、毎日僕の体に毒を注ぎ込み続けてもらいます!」
「なんで?!」

 かくして、シースルーは魔物サンドバッグ道場へご招待されることが確定した。
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