転生ゲーマーは死亡確定のサブキャラから成り上がる~最序盤で魔物に食い殺されるキャラに転生したので、レベルの暴力で全てを解決します~

おさない

文字の大きさ
88 / 117

外伝7 ピクニック前夜、それぞれの思い

しおりを挟む

 シースルーの面々が魔物サンドバッグ道場に閉じ込められ、ルーテの特訓の手伝いをさせられるようになってから、ひと月が経過した。

 そして明日、彼らはいよいよダンジョン探索へ駆り出されることとなる。

「わらわたちは……一体何をさせられるのじゃろうな」

 オトヒメは、ルーテが整備した寝室のベッドに横たわりながら呟いた。

 ルーテの説明があまりにも適当だったので、理解できなかったのである。

 彼女にとっては、ジェリーやスクイードの奇妙な話し方よりも、ルーテの話の方が理解不能だった。

「漆黒の――」
「おい」
「……すみません」
「今は普通に話して。……オトヒメ様しか聞いてない」
「……ああ、分かってる」

 ジェリーに怒られ、しょんぼりしつつ頷くスクイード。

 ――二人が奇妙な話し方をするようになったのは、オトヒメが呪われてからだ。

 人前に姿を出せなくなってしまったオトヒメを守る方法を必死で考えた結果、あえて道化を演じることで皆の注意を自分たちの方へ逸らせば良いという結論に達したのである。

 その真実を知った時、オトヒメは(二人とも、わらわの考えていた以上に馬鹿なんじゃな……)と思い、その心遣いに涙を流した。

 かくして、お笑いコンビ『シースルー』が誕生したのである。

 閑話休題。

「安心して、オトヒメ様。あなたの事は連れて行かないでって……あの子に頼んだ」

 ジェリーは、オトヒメの方へ向き直ってそう説明する。

「漆黒……ではなく、オトヒメ様は俺たちに任せておけば良い」
「すまない。……お主らには……苦労ばかりかけるな」

 悲痛な面持ちで感謝の言葉を述べるオトヒメ。

「ジェリー……。心の方は大丈夫か? あれが本人の望みとは言え、子供好きのお主にあのような辛い役目を背負わせてしまって……」
「だいじょうぶ。最初は辛かったけど……あの子が……ルーテが嬉しそうにしてるから……ああしてあげるしかない……」

 ジェリーはそう言いながら体を震わせ、両腕で自らを抱きしめる。

「スクイード。お主はどうだ? ここ最近、ずっと顔色が優れんようだが……」
「……あれは……哀れな幼子だ。漆黒の。――もう、どうにもならない」
「そうじゃな。おそらく、愛を知らずに……いや、殴られることこそが愛だと思い込んだまま育ってきてしまったのじゃろう。もはや、まともな人の子ではない……。お主まで精神を持っていかれないよう、あまり深入りしすぎないようにするのじゃぞ」
「……分かってる」

 ルーテはその奇行のせいで、オトヒメ達からとんでもなく誤解されていた。

「ジェリー。お主もじゃ」
「…………はい」
「あれの話す言葉をまともに聞いてはならぬ」
「……うん」

 俯いたまま返事をするジェリー。

(ルーテの首……しめたい……! もっと苦しんでるとこ見たい……! もっとかわいい声が聞きたい……! もっと殴ってあげたい……! もっといっぱい泣かせたい……はぁはぁはぁ……!)

 表面上は平静を装っているが、彼女の方は既に色々と手遅れになっていた。

(ルーテ、小さい頃のオトヒメ様にちょっと似てる……! かわいい……! もっともっともっといじめてあげたい……! あの頃のオトヒメに出来なかったこと全部してあげたい……! あああああああっ!)

 ジェリーは一人で妄想して興奮する。

 命令されてルーテを痛めつけ続けた結果、完全に目覚めてしまったようだ。

「の、のう……本当に大丈夫なのか……? ジェリー……」
「だいじょうぶ!」
「そうか…………」

 こうして、魔物サンドバッグ道場の夜はふけていくのだった。

「ぐごごごごご! おやつが……足りないぜ……」

 ――ちなみに、無関係なサメは既にその辺の床で寝ている。

 *

 一方、魔物牧場では。

「す、すっげぇ……野生の力がクソみなぎって来やがりますわ……!」

 猟豹《チーター》のような姿をした何かがそこらじゅうを駆け回って魔物を食い荒らし、

「あはははははッ! 何かよく分かんないけどすごいッ! これで天使をいっぱい殺せるよぉ!」

 赤い眼の巨大な兎もどきが、縦横無尽に飛び跳ねながら鎌を振り回し、

「……モフモフじゃねぇな」

 ワニが困惑していた。

「自分の姿がよく分からなねぇが、モフモフじゃねぇことだけは分かるぜ」

 ワニはクールに自らの状態を分析する。

 どうやら、魔物牧場は一夜にして動物園へと変貌してしまったらしい。

「や、やっべぇ……調子に乗って走り過ぎましたわ……ぜぇっ、ぜぇっ!」
「アハハハハハッ! アハハハハハハッ!」
「……それで、俺は人間に戻れるのか?」

 ワニ――ノックスの問いかけが、第一セクターに虚しくこだました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...