固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ

文字の大きさ
35 / 44

第35話 解呪の書よりキュウリだモ

しおりを挟む
「俺はいつもボロロッカで泊っているから、受付に言ってくれれば伝言できる」
「拙者も良くここを利用しているでござる」
「おお、探索者の利用者はめっちゃ多いよな」
「ほぼ探索者だけと聞いているでござる」

 外に出て清算をした後さっそく向かったのはボロロッカの宿に併設している食事処であった。
 マーモじゃないけど、外に出てきてまず最初に何がしたいかと問われると、「食事!」と即答する自信がある。
 朝早くにザ・ワンに入り、暗くなる頃に帰ってくるだろ。今はボス部屋で安全に休息できるから以前ほどではないけど、昼はちゃんとした食事がとれないんだ。
 もちろんアルコール類もご法度である。いや、飲んでもいいんだけど、飲んだことで大怪我をしてしまっては何のためにダンジョンに入ってんだ、って話になるからさ。
 朝食は朝食でこれから始まる探索のために腹いっぱい食べることもしない。
 そんなわけで満足いく食事がとれるのってダンジョンから出た後だけなんだよね。となったらまず食べる、これだろ。

「エールをもう一杯頼む」
「拙者も」
「ヌタも欲しいぽん」

 おっと、カエデはともかくヌタはダメだぞ。
 見た目子供だからダメ、ダメよ。
 ヌタの注文はさりげなく変更しておいた。
 
『キュウリが欲しいモ』
「はいはい」

 絶え間なく餌を要求してくるマーモに餌を与えることも忘れない。
 我ながらなんてすばらしい飼い主なんだ。ペットじゃなくてパートナーらしいが、ペットにしか思えん。
 喋るけど。
 エールの残りを飲み干しながら、あつあつの草食竜のモモ肉の揚げ物をむしゃっとかみちぎる。
 うめええ。

「お待たせしました」
 
 そこへちょうどよく追加のエールがやってくるってもんだ。
 もう最高。この時のために生きてるって感じだよ、うん。
 俺も大概だけど、カエデは華奢なのによく食べる。探索者は運動量が激しいってもんじゃないし、昼は持ち込んだ最低限の食べ物のみですごすものが殆どだ。

「ヌタと二人で食べるより四人で食べるとより食が進むでござるな」
「四人……あ、あれも入れてるのね」
「当然でござる。クラウディオ殿のパートナーではござらんか」
「そうだけど、一匹とか一体でいいんじゃないかなって」

 なんてどうでもいい会話を交わしつつ食がどんどん進む。
 五杯目のエールを空にする頃、いい感じで酔いも回ってきて満腹になった。

「ふう、食った食った」
「ごちそうさまでござる。そういえばクラウディオ殿」
「ん?」
「『解呪の書』を探していると。急ぎではなかったのでござるか?」
「あ、ああああああ!」

 これじゃあマーモと同じじゃないかよ!
 軽く食事をとったらリアナたちへ言伝を頼んで彼女らと落ち合おうと考えていたってのに。完全に飛んでいた。
 食事を終えたその足で宿の受付へ行き、リアナたちにもし俺より早く降りてきたら待っててもらうように言伝する。
 そこでカエデとヌタと別れ、マーモの首根っこを掴んで部屋へ向かう。
 
 ◇◇◇
 
 翌朝、無事リアナたちと会うことができた。
 さっそくブツを渡そうとしたのだが、オハナシは彼女らの泊る部屋でとのことだったので移動する。

「昨日は私たちも30階層進みました。戻った時、すっかり暗くなっていましたのでクラウディオさんを探さず、部屋で食事をとることにしたんです」
「30階層も進んだとはなかなか」
「いえ、騎士たちのうち最も進んだパーティは30階層進んだと聞いております。泊まり込みをしている騎士のパーティはより進んでいるのではと」
「他には『転移の書』を利用している騎士のパーティもいそうだな」

 コクリと頷きを返すリアナ。
 元々高い実力を持っているのなら、転移の書で進むことができる場所まで進んだ方が効率がいい。転移の書では何階に出るかわからないから博打だけど、何枚も転移の書を使えばある程度の階層までは進むことができるんじゃないかな。
 協力してくれるのかは不明だが、Sランクの探索者の導きで何枚も転移の書を使えば既にリアナたちを追い越しているかもしれない。

「クラウディオの首尾はどうなんだ?」

 リアナと入れ替わるようにしてギリアンが片目を閉じおどけた様子で問いかけてくる。
 彼の気づきとリアナの提案がなかったら、昨日も彼女らと共に探索をしていたところだった。

「強い探索者とペアで潜ることができてさ。ガンガン進めたよ」
「ほお。罠はどうだった?」
「ギリアンの予想通り罠はなかった。引っ張っても仕方ない、こいつを」

 トンと「解呪の書」の巻物をテーブルに置く。
 持って行って、と手で示すとリアナが「まさか」と巻物を手に取る。
 
「こ、これは『解呪の書』ではないですか!」
「『解呪の書』と書いているのは確かだけど、聞いていたような効果があるかは確かめてないから期待した効果が得られるかは分からないけど」
「あ、ありがとうございます! クラウディオさん、是非、王城へお越しいただけませんか?」
「いや、あの、そうだ」

 もう一つ、巻物を置く。

「こいつは『解呪の書』じゃないか!」
「実は更にもう一つある」

 驚きの声をあげるギリアンをよそに懐から更に巻物を出す。
 いやあ、たいしたものが無かった、というのは「解呪の書」率がやったら高くてさ。ひょっとしたら、マーモの幸運の効果でレアな解呪の書ばかり引き当てた説がある。
 他は転移の書とかその辺が手に入ったんだよ。ミスリルとか魔法金属のインゴットを期待していたんだけど……。
 
「予備としてもう一個持って行ってほしい。なんならこれも」
「い、いえ。二個もあれば十分です!」
「それと、王城は先約があってすぐに行くことはできないんだ。その後なら」
「承知いたしました。クラウディオさんの先約が終わってから私たちも王城へ向かいたいところですが、申し訳ありません」
「一刻も早く、王城へ向かった方がいい。道中はくれぐれも気を付けて」
「そこはご心配には及びません。私はともかく、三人はクラウディオさんほどではありませんがなかなかの実力者なんですよ」
「だな」

 実際に一緒に戦ったことがるから分かる。彼らならば横取りしようとする不貞の輩に遅れを取ることもないだろう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

超能力があれば転生特典なしでも強キャラだった件~帰還し命を救うため、モンスターを倒しまくるぞ~

うみ
ファンタジー
生まれながらにして「転移」「念動力」「自己修復」の異能を持っていた池添は、能力を隠し平凡な人生を歩んでいた。 卒業式の帰り道で命の危機に遭遇した彼は友人を見捨てて異世界に転移してしまう。 自分だけ逃げてしまったことに後悔する池添であったが、迫るモンスターを転移、心臓の血管を断ち切る必殺の一撃で打ち払う。そこで、不思議な声が彼の頭に響く。 なんと、自分の能力で逃げ出したわけじゃなく、この声の主が自分を転移させた原因だと言うのだ。 「あの時、あの場所にいけぞえさーんを帰すことができまーす」 「……ギブアンドテイクといったな。すみよん。お前の求めるものは何だ?」 「すみよんの元まで来てくださーい。そして、破壊してください。暴走を。オネガイ……です」 そんなわけで、友人を救うチャンスを得た池添は今度こそ彼らを救うことを誓う。 そのために能力を鍛えることが必要だと痛感した池添は、能力を自重せず使い、全力全開で進むことを決めた。 異世界で出会った仲間と共にモンスター討伐に明け暮れる日々が始まる。 ※ラストまで書けておりますので完結保証です!全47話予定。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

処理中です...