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11.後をつけるだけの楽なお仕事
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さすがに疲れたな……。
街を出てからアルトたちに追いつくため、ジョギングより少し早いペースで進んだ。
彼らの後ろ姿を遠目で確認できてからはペースを落とし徒歩となった。
その後、彼らと着かず離れずで進んできたんだけど、彼らずっと休まないなんだよなあ。
あれよあれよという間に結局休むことなく、ザ・ワンの外周部まで来てしまった。
すっかり暗くなったというのに、彼らはペースを落としつつもまだ動いている。
そろそろ休めばいいのに……。
恨めしい目で彼らを見るものの、状況が変わるわけでもなし。俺たちも進むしかない。
そうそう、途中でアルトたちがモンスターに遭遇しないかなあと期待していたけど、残念ながらここまで彼らの戦闘を見ることはできなかった。
俺たちも同じくだったけどね。
いや、正確には違う。モンスターに出会いはしたけど、友好的で素敵な出会いをしたんだ。
もうこれだけで、マスターの無理なお願いを聞いてよかったと思えるほどの。
「くあー」
空から鳥の鳴き声が響く。
お、また降りて来るのかな?
空から弧を描きつつ一羽の鳥が降りてきて俺の肩にとまる。
深紅の羽と長い尾を持つこの鳥の名はファイアーバードという。カラスより二回りくらい大きくて、俺の肩にとまると首を横にしないと収まらないくらいのサイズがある。
一応モンスターの一種なんだけど、名前と裏腹に炎を口から吐きだしたりはしない。
ファイアバードは一般的に警戒心が強く、人間サイズの生き物を襲うことはないと記憶している。だけど、個体差が大きく、凶暴な個体は人間であっても鋭い爪で空から強襲してきたりと油断していると大怪我をしてしまうことも。
道中で出会ったこのファイアバードは人を恐れず好奇心旺盛で、俺たちの目の前に降り立ったんだ。
そこで、持っていた干し肉をあげてみたらあっさりと懐いたってわけ。
それで味をしめたのか、ついに俺の肩にとまるまでになった。ちなみに降りてきたのはこれで三度目である。
用意していた干し肉を懐から出して、ぽいっと地面に放るとファイアーバードは俺の肩を蹴り地面に降り立った。
彼はぴょんぴょんと跳ねるように進み、干し肉をついばみ始める。
『オレもフルーツをよこセ』
「アルトたちが止まったらな」
リュックの上に乗っかったロッソが長い舌を伸ばしペシペシと俺の頬を叩く。
『もう止まっタ』
「お、ほんとだ。じゃあ、俺たちも休むか」
ようやくだ。
アルトたちが暗くなってもうろうろしていたのは、最適な野営地を探すためだったのかな?
んー。煮炊きをするとさすがに彼らも気が付くよな。
彼らと俺たちの距離はおよそ200メートルと言ったところ。瓦礫や半ばで崩れ落ちた建物、半ばほどから上が風化して無くなってしまった石柱なんて遮蔽物もあるけど、火の灯りはさすがに目立つ。
ギンロウの鼻もあるし、本気で走れば追いつける。だから、もっと彼らから離れてもいいんだけど、一度止まると疲労していることもありもう動きたくなくなってしまった。
仕方ない。煮炊きをせず食事を済ますことにしようか……。
「このままここで夜明けまで過ごそうか」
『分かっタ』
リュックからぴょーんと飛び降りたロッソは顎をあげ上に向け長い舌をピンと伸ばす。
これは「はやく餌を寄越せという」彼なりのアピールである。
苦笑しつつリュックを地面に降ろし、リンゴを一個地面に転がした。
「ギンロウ」
「わおん」
お次はギンロウにリュックの三分の一ほどの大きさがある骨付き肉を与える。
ガツガツと肉を食べ始めた彼の頭をナデナデし思わず頬が緩んでしまう。
ぐううう。
しかし、癒しより俺の体ははやく食事をとることを求めてしまったようだ。
それじゃあ俺の分をと、干し肉とパンを取り出したらじーっとファイアーバードが俺を見つめてくるではないか。
「もう食べちゃったのか?」
「くあー」
仕方ねえなあ。
つぶらな瞳でせがまれたら断れないぞ。
ファイアーバードに向け持っていた干し肉を投げると、彼は嬉しそうに深紅の翼を震わせ鋭い嘴で肉をついばむのだった。
パンと水だけになってしまったけど、みんなが美味しそうに食べている姿を見ると疲れも吹き飛ぶってものだ。
「ギンロウ、ザ・ワンはとても広いんだぞ。瓦礫ばかりだけど、ところどころに地下へ繋がる階段や抜け穴があるんだ」
『ギンロウは喋らないゾ』
リンゴに張り付きながらもロッソの突っ込みが入る。
「でも、きっと彼には通じていると思っているって言ったじゃないか、ほんとにもう」
な、とばかりにギンロウの背を撫でたら彼は「わおん」と声を出して応じた。
ほら、分かっているじゃないか。
「ザ・ワンはな。アマランタの街ができるずっとずーっと前からあって、もうどれだけ前からあるのか分からないんだ」
『昔は誰かが住んでいたのだよナ』
「そうそう。時折見つかるアーティファクトと呼ばれる古代の遺物から、今より優れた魔法文明を持っていたことは確実だな。うん」
『珍しいフルーツはないのカ?』
「あったとしても……さすがに枯れているだろ。種くらいならあるかもしれないけど……」
『探すのカ』
「ま、また今度な」
何百年、いや何千年前の植物の種が見つかったとして、ちゃんと芽が出るか怪しいもんだ。
ロッソの夢を壊したくないから、ここは黙っておくのが吉だろう。
ザ・ワンは大半が土に埋まっていて、地上に出ているのは遺跡の一部である。それでも、遺跡の外周と言われる地上部の面積だけでもアマランタの街と比べ四倍くらいの広さがあるんだぞ。一体過去にどれくらいの人がここに住んでいたのだろうなあ。
少なくとも百万人は軽く超えるだろう。今の俺たちはかつての姿を想像し偲ぶことしかできない。これもまた古代遺跡の魅力だよな。うん。
『ノエル』
「ん?」
『あいつらは何しに行くんダ?』
「『フェイス』と呼ばれるモンスターの討伐だよ」
『モンスター討伐なのカ。つまらないナ』
「そうだよな。フルーツ採集の方がよほど楽しいだろうに」
「ロッソ限定だけど」とは言わずにおく優しい俺である。
冗談のつもりで言ったんだけど、ロッソは上機嫌になって『そうだナ』とご満悦の様子。
こいつは次の冒険にフルーツ採集を組み込まないとご立腹しそうだな……。
ちょうどパープルボルチーニ採取の依頼も受けたことだし、ついでにフルーツ採集もすればよいか。
しかし、ロッソの奴、これから向かい合うことになるかもしれないモンスターについてはまるで興味がないんだな。
どれだけ強いモンスターなんだとか聞くのが常ってもんじゃないのか?
仕方ない。ロッソの頭の中は食べ物のことでできているから……。
フェイスはその名の通り人面の顔だけの動く石像のようなゴーレムの一種で、なかなかの強敵だ。
単独だとAランクの依頼になるらしいのだけど、今回は複数いたとの目撃証言があった。
なので、複数帯のフェイス討伐依頼となりランクはSに位置付けられたとのこと。
「ま、今の俺たちなら心配することもないだろう。倒す必要もないし」
一発かますだけでいいんだろ。
それなら、遠くからロッソに変化を頼んで光の矢でどーんしたら終わりだ。
街を出てからアルトたちに追いつくため、ジョギングより少し早いペースで進んだ。
彼らの後ろ姿を遠目で確認できてからはペースを落とし徒歩となった。
その後、彼らと着かず離れずで進んできたんだけど、彼らずっと休まないなんだよなあ。
あれよあれよという間に結局休むことなく、ザ・ワンの外周部まで来てしまった。
すっかり暗くなったというのに、彼らはペースを落としつつもまだ動いている。
そろそろ休めばいいのに……。
恨めしい目で彼らを見るものの、状況が変わるわけでもなし。俺たちも進むしかない。
そうそう、途中でアルトたちがモンスターに遭遇しないかなあと期待していたけど、残念ながらここまで彼らの戦闘を見ることはできなかった。
俺たちも同じくだったけどね。
いや、正確には違う。モンスターに出会いはしたけど、友好的で素敵な出会いをしたんだ。
もうこれだけで、マスターの無理なお願いを聞いてよかったと思えるほどの。
「くあー」
空から鳥の鳴き声が響く。
お、また降りて来るのかな?
空から弧を描きつつ一羽の鳥が降りてきて俺の肩にとまる。
深紅の羽と長い尾を持つこの鳥の名はファイアーバードという。カラスより二回りくらい大きくて、俺の肩にとまると首を横にしないと収まらないくらいのサイズがある。
一応モンスターの一種なんだけど、名前と裏腹に炎を口から吐きだしたりはしない。
ファイアバードは一般的に警戒心が強く、人間サイズの生き物を襲うことはないと記憶している。だけど、個体差が大きく、凶暴な個体は人間であっても鋭い爪で空から強襲してきたりと油断していると大怪我をしてしまうことも。
道中で出会ったこのファイアバードは人を恐れず好奇心旺盛で、俺たちの目の前に降り立ったんだ。
そこで、持っていた干し肉をあげてみたらあっさりと懐いたってわけ。
それで味をしめたのか、ついに俺の肩にとまるまでになった。ちなみに降りてきたのはこれで三度目である。
用意していた干し肉を懐から出して、ぽいっと地面に放るとファイアーバードは俺の肩を蹴り地面に降り立った。
彼はぴょんぴょんと跳ねるように進み、干し肉をついばみ始める。
『オレもフルーツをよこセ』
「アルトたちが止まったらな」
リュックの上に乗っかったロッソが長い舌を伸ばしペシペシと俺の頬を叩く。
『もう止まっタ』
「お、ほんとだ。じゃあ、俺たちも休むか」
ようやくだ。
アルトたちが暗くなってもうろうろしていたのは、最適な野営地を探すためだったのかな?
んー。煮炊きをするとさすがに彼らも気が付くよな。
彼らと俺たちの距離はおよそ200メートルと言ったところ。瓦礫や半ばで崩れ落ちた建物、半ばほどから上が風化して無くなってしまった石柱なんて遮蔽物もあるけど、火の灯りはさすがに目立つ。
ギンロウの鼻もあるし、本気で走れば追いつける。だから、もっと彼らから離れてもいいんだけど、一度止まると疲労していることもありもう動きたくなくなってしまった。
仕方ない。煮炊きをせず食事を済ますことにしようか……。
「このままここで夜明けまで過ごそうか」
『分かっタ』
リュックからぴょーんと飛び降りたロッソは顎をあげ上に向け長い舌をピンと伸ばす。
これは「はやく餌を寄越せという」彼なりのアピールである。
苦笑しつつリュックを地面に降ろし、リンゴを一個地面に転がした。
「ギンロウ」
「わおん」
お次はギンロウにリュックの三分の一ほどの大きさがある骨付き肉を与える。
ガツガツと肉を食べ始めた彼の頭をナデナデし思わず頬が緩んでしまう。
ぐううう。
しかし、癒しより俺の体ははやく食事をとることを求めてしまったようだ。
それじゃあ俺の分をと、干し肉とパンを取り出したらじーっとファイアーバードが俺を見つめてくるではないか。
「もう食べちゃったのか?」
「くあー」
仕方ねえなあ。
つぶらな瞳でせがまれたら断れないぞ。
ファイアーバードに向け持っていた干し肉を投げると、彼は嬉しそうに深紅の翼を震わせ鋭い嘴で肉をついばむのだった。
パンと水だけになってしまったけど、みんなが美味しそうに食べている姿を見ると疲れも吹き飛ぶってものだ。
「ギンロウ、ザ・ワンはとても広いんだぞ。瓦礫ばかりだけど、ところどころに地下へ繋がる階段や抜け穴があるんだ」
『ギンロウは喋らないゾ』
リンゴに張り付きながらもロッソの突っ込みが入る。
「でも、きっと彼には通じていると思っているって言ったじゃないか、ほんとにもう」
な、とばかりにギンロウの背を撫でたら彼は「わおん」と声を出して応じた。
ほら、分かっているじゃないか。
「ザ・ワンはな。アマランタの街ができるずっとずーっと前からあって、もうどれだけ前からあるのか分からないんだ」
『昔は誰かが住んでいたのだよナ』
「そうそう。時折見つかるアーティファクトと呼ばれる古代の遺物から、今より優れた魔法文明を持っていたことは確実だな。うん」
『珍しいフルーツはないのカ?』
「あったとしても……さすがに枯れているだろ。種くらいならあるかもしれないけど……」
『探すのカ』
「ま、また今度な」
何百年、いや何千年前の植物の種が見つかったとして、ちゃんと芽が出るか怪しいもんだ。
ロッソの夢を壊したくないから、ここは黙っておくのが吉だろう。
ザ・ワンは大半が土に埋まっていて、地上に出ているのは遺跡の一部である。それでも、遺跡の外周と言われる地上部の面積だけでもアマランタの街と比べ四倍くらいの広さがあるんだぞ。一体過去にどれくらいの人がここに住んでいたのだろうなあ。
少なくとも百万人は軽く超えるだろう。今の俺たちはかつての姿を想像し偲ぶことしかできない。これもまた古代遺跡の魅力だよな。うん。
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「ん?」
『あいつらは何しに行くんダ?』
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『モンスター討伐なのカ。つまらないナ』
「そうだよな。フルーツ採集の方がよほど楽しいだろうに」
「ロッソ限定だけど」とは言わずにおく優しい俺である。
冗談のつもりで言ったんだけど、ロッソは上機嫌になって『そうだナ』とご満悦の様子。
こいつは次の冒険にフルーツ採集を組み込まないとご立腹しそうだな……。
ちょうどパープルボルチーニ採取の依頼も受けたことだし、ついでにフルーツ採集もすればよいか。
しかし、ロッソの奴、これから向かい合うことになるかもしれないモンスターについてはまるで興味がないんだな。
どれだけ強いモンスターなんだとか聞くのが常ってもんじゃないのか?
仕方ない。ロッソの頭の中は食べ物のことでできているから……。
フェイスはその名の通り人面の顔だけの動く石像のようなゴーレムの一種で、なかなかの強敵だ。
単独だとAランクの依頼になるらしいのだけど、今回は複数いたとの目撃証言があった。
なので、複数帯のフェイス討伐依頼となりランクはSに位置付けられたとのこと。
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