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24.スライムが
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街はずれの我が土地まで戻ってきた。
自分の土地に入ったとはいえ、まだまだ自宅までは遠い。
10分以上は歩くかなあ。背の高い雑草が我が家に続く道だけ刈り取られていて、自宅までの道を示してくれている。
距離があるんだけど、自宅は我が土地の中心辺りに建っているとトネリコから聞いていた。
これだけ広ければ、牧場に沢山のもふもふを飼育することができるぞお。ちょっとばかし整備しないと、だけどね。
「お」
背の高い雑草の隙間から白銀がチラチラと垣間見えた。
視覚じゃ確認できないはずなので、俺のにおいを嗅ぎつけたのかな?
「わおん」
「おお! ギンロウ。留守番ありがとうな!」
両手を広げ待ち構えると、ギンロウが俺の胸に飛び込んできた。
そのまま彼の顔を抱えるようにして思いっきりわしゃわしゃと撫でる。
「くああ」
こっちは「見える」方か。
空に深紅の翼がはためき、一直線に俺の元に降りてくる。
肩にすとんと着陸したファイアバードが気の抜けた鳴き声を出す。
「食べ物はたんまりと買ってきたからなー」
お金には余裕がある。元々街はずれの広い土地を買おうと資金を溜めていたのだけど、必要なくなったからさ。
ルビーもまだ換金しちゃいない。
森の奥地から持ち帰った素材がまさかこんなに高く売れるなんてなー。
あ、アルトたち追跡の謝礼も入っていたか。
いずれにしろ、数年かけて溜めたお金以上の資金が僅か一週間と少しで稼げてしまったことには変わりない。
「こら、爪をたてるんじゃない」
ファイアバードの鋭い爪が俺の肩に食い込んでいるじゃないか。
とっとと荷物をよこせという主張かな……。
「家についてからだぞ。しばらく待てよー」
「くあ」
俺の肩を蹴ったファイアバードがフワリと浮き上がり、自宅の方向へ飛んで行ってしまった。
爪か。ファイアバードの爪は欠けたところがなく綺麗なものだ。
あいつにも爪を作ってやってもいいかな。
え? 別に戦闘をするわけでもないし強くなる必要ないじゃないかって?
むしろ、強くなり過ぎると力加減が難しくなるのかもしれない。
で、でもさ。
ファイアバードが強くなってもっともっと力持ちになったら、俺を抱えて空に飛び立つことなんてできそうじゃない?
夢のような空への旅が実現できるかも。
へ、へへへ。
「くうん」
「お、すまん。ギンロウ。爪といえば、ギンロウの爪も欠けてきたりしているなあ」
尻尾をふりふりしてはっはと口を開くギンロウはいつもの調子だった。
エルナンから頂いたモンスター素材を元に作った爪だけど、激しい戦闘の結果、ピカピカだった爪もところどころ欠けてきている。
彼の場合、極低温の魔法や攻撃を使うので温度差によって爪が痛みやすいのかも。
どれだけ硬い素材であっても、急激な温度変化に耐えられるとは限らない。
あ、ええと、何だっけ。ラズライトがギンロウの青にそっくりな鉱石があるとか何とか言っていたな。
べ、別にすぐ壊れちゃっても、ギンロウの青に映える爪だったら、一度は見てみたい。
ぐ、ぐふふ。
「くうん」
「そうだな。ロッソもファイアバードも待っているだろうし。行こう」
駆けだすとギンロウも俺の横を並走する。
◇◇◇
「ただいまー」
自宅に入った途端に気が付いた。
トネリコが入居前に掃除してくれていたんだけど、荷物の運び込みと可愛いペットたちと一緒に住んでいたことで床が埃っぽくなっていたんだ。
目立つのはファイアバードの鮮やかな赤色の羽で、ふさふさのギンロウの毛や外から入ってきた塵なんてものがあったからさ。
だけど、布で拭き掃除をしてワックスをかけたかのように床がピカピカになっている!
ぼとり。ぽよん。
天井の梁から黄色いスライムが垂れてきて、床に落ちはねた。
見上げると、梁も床と同じように綺麗になっているじゃないか。
「これ、スライムがやったのか」
俺の言葉に応じるかのようにスライムが体をぷるるんと震わせる。
「んー。見た目は全く変わっていないけど、ゴミを溶かしたのかな」
しゃがんで手の平を向けたら、ぴょこんと跳ねたスライムが俺の手の上に乗っかった。
つんと指先で突っつくと、以前と同じように指の形に彼の体が変形し離すと元の形に戻る。
『ノエル。フルーツが食べたイ』
「ロッソ。日向ぼっこは終わりか?」
扉口まで降りてきたロッソが長い舌を伸ばす。
『もうすぐ日が欠けてくル』
「そっかそっか。んじゃま、みんな待っているし、ご飯にしよう」
実家から持ち込んだ荷物と並んでおいてある大きな袋を開く。
こっちは道すがら買ってきた食糧が満載されているのだ。
ロッソに向けオレンジを転がす。
パシっと器用に前脚でオレンジをキャッチしたロッソは、さっそくむしゃむしゃと食べ始めた。
「ギンロウとファイアバードはちっと待ってなー。ファイアバードは焼いたものはダメなんだっけか」
せっかくだし、屋内じゃあなくて広い外で食事にするかなあ。
そんなわけで、キッチンで調理してギンロウとファイアバードと一緒に外で食事をとることにしたのだった。
オレンジから顔を離さないロッソは小脇に抱え、ギンロウの背中に乗せて彼に外へ運んでもらう。
せっかくだからと、薪を組んでキャンプファイアーをしつつそれをみんなで囲んで食事にしたんだ。
ゆったりとした時間が流れ、おいしそうに肉をほうばるギンロウ、自分の体積以上のフルーツを食べてもまだ満足しないロッソ。
食べると「くああ」と鳴いて、追加の肉をねだるファイアバード。残った骨や灰を吸収するスライム。
それぞれが個性があって見ていて飽きない。
食事が終わる頃には満天の星空が俺たちを照らしていた。
まだ小屋しかなくて、全く整備していない土地だけど彼らと一緒にいるだけでこれほど楽しい時間を過ごせるなんて。
まだ見ぬ牧場の完成に夢を馳せ、肉をかじる俺であった。
「熱っ!」
思いっきり噛むんじゃなかったぜ!
◇◇◇
翌日――。
日課となっているお仕事をこなすべく、採集してくるもののリストを再度チェックする。
パープルボルチーニ、ミレレ草、月の雫の三点か。
メモをポケットの中に仕舞い込み、全員で冒険者ギルドに向かう。
今日も今日とて早朝だというのにカウンターには先客がいた。
ギルドには二人の受付嬢がいるのだが、せっかくだからミリアムが終わるのを待つことにしようか。
何このデジャブ……。
「ちっと待つか」
『……眠イ』
「本当に朝が弱いな、ロッソは」
『そのまま掴んでてくレ』
右手に握られたままのロッソはそう言い残し、ぐでっと首がたれる。
目までつぶって完全お休みモードになってしまったよ。
自分の土地に入ったとはいえ、まだまだ自宅までは遠い。
10分以上は歩くかなあ。背の高い雑草が我が家に続く道だけ刈り取られていて、自宅までの道を示してくれている。
距離があるんだけど、自宅は我が土地の中心辺りに建っているとトネリコから聞いていた。
これだけ広ければ、牧場に沢山のもふもふを飼育することができるぞお。ちょっとばかし整備しないと、だけどね。
「お」
背の高い雑草の隙間から白銀がチラチラと垣間見えた。
視覚じゃ確認できないはずなので、俺のにおいを嗅ぎつけたのかな?
「わおん」
「おお! ギンロウ。留守番ありがとうな!」
両手を広げ待ち構えると、ギンロウが俺の胸に飛び込んできた。
そのまま彼の顔を抱えるようにして思いっきりわしゃわしゃと撫でる。
「くああ」
こっちは「見える」方か。
空に深紅の翼がはためき、一直線に俺の元に降りてくる。
肩にすとんと着陸したファイアバードが気の抜けた鳴き声を出す。
「食べ物はたんまりと買ってきたからなー」
お金には余裕がある。元々街はずれの広い土地を買おうと資金を溜めていたのだけど、必要なくなったからさ。
ルビーもまだ換金しちゃいない。
森の奥地から持ち帰った素材がまさかこんなに高く売れるなんてなー。
あ、アルトたち追跡の謝礼も入っていたか。
いずれにしろ、数年かけて溜めたお金以上の資金が僅か一週間と少しで稼げてしまったことには変わりない。
「こら、爪をたてるんじゃない」
ファイアバードの鋭い爪が俺の肩に食い込んでいるじゃないか。
とっとと荷物をよこせという主張かな……。
「家についてからだぞ。しばらく待てよー」
「くあ」
俺の肩を蹴ったファイアバードがフワリと浮き上がり、自宅の方向へ飛んで行ってしまった。
爪か。ファイアバードの爪は欠けたところがなく綺麗なものだ。
あいつにも爪を作ってやってもいいかな。
え? 別に戦闘をするわけでもないし強くなる必要ないじゃないかって?
むしろ、強くなり過ぎると力加減が難しくなるのかもしれない。
で、でもさ。
ファイアバードが強くなってもっともっと力持ちになったら、俺を抱えて空に飛び立つことなんてできそうじゃない?
夢のような空への旅が実現できるかも。
へ、へへへ。
「くうん」
「お、すまん。ギンロウ。爪といえば、ギンロウの爪も欠けてきたりしているなあ」
尻尾をふりふりしてはっはと口を開くギンロウはいつもの調子だった。
エルナンから頂いたモンスター素材を元に作った爪だけど、激しい戦闘の結果、ピカピカだった爪もところどころ欠けてきている。
彼の場合、極低温の魔法や攻撃を使うので温度差によって爪が痛みやすいのかも。
どれだけ硬い素材であっても、急激な温度変化に耐えられるとは限らない。
あ、ええと、何だっけ。ラズライトがギンロウの青にそっくりな鉱石があるとか何とか言っていたな。
べ、別にすぐ壊れちゃっても、ギンロウの青に映える爪だったら、一度は見てみたい。
ぐ、ぐふふ。
「くうん」
「そうだな。ロッソもファイアバードも待っているだろうし。行こう」
駆けだすとギンロウも俺の横を並走する。
◇◇◇
「ただいまー」
自宅に入った途端に気が付いた。
トネリコが入居前に掃除してくれていたんだけど、荷物の運び込みと可愛いペットたちと一緒に住んでいたことで床が埃っぽくなっていたんだ。
目立つのはファイアバードの鮮やかな赤色の羽で、ふさふさのギンロウの毛や外から入ってきた塵なんてものがあったからさ。
だけど、布で拭き掃除をしてワックスをかけたかのように床がピカピカになっている!
ぼとり。ぽよん。
天井の梁から黄色いスライムが垂れてきて、床に落ちはねた。
見上げると、梁も床と同じように綺麗になっているじゃないか。
「これ、スライムがやったのか」
俺の言葉に応じるかのようにスライムが体をぷるるんと震わせる。
「んー。見た目は全く変わっていないけど、ゴミを溶かしたのかな」
しゃがんで手の平を向けたら、ぴょこんと跳ねたスライムが俺の手の上に乗っかった。
つんと指先で突っつくと、以前と同じように指の形に彼の体が変形し離すと元の形に戻る。
『ノエル。フルーツが食べたイ』
「ロッソ。日向ぼっこは終わりか?」
扉口まで降りてきたロッソが長い舌を伸ばす。
『もうすぐ日が欠けてくル』
「そっかそっか。んじゃま、みんな待っているし、ご飯にしよう」
実家から持ち込んだ荷物と並んでおいてある大きな袋を開く。
こっちは道すがら買ってきた食糧が満載されているのだ。
ロッソに向けオレンジを転がす。
パシっと器用に前脚でオレンジをキャッチしたロッソは、さっそくむしゃむしゃと食べ始めた。
「ギンロウとファイアバードはちっと待ってなー。ファイアバードは焼いたものはダメなんだっけか」
せっかくだし、屋内じゃあなくて広い外で食事にするかなあ。
そんなわけで、キッチンで調理してギンロウとファイアバードと一緒に外で食事をとることにしたのだった。
オレンジから顔を離さないロッソは小脇に抱え、ギンロウの背中に乗せて彼に外へ運んでもらう。
せっかくだからと、薪を組んでキャンプファイアーをしつつそれをみんなで囲んで食事にしたんだ。
ゆったりとした時間が流れ、おいしそうに肉をほうばるギンロウ、自分の体積以上のフルーツを食べてもまだ満足しないロッソ。
食べると「くああ」と鳴いて、追加の肉をねだるファイアバード。残った骨や灰を吸収するスライム。
それぞれが個性があって見ていて飽きない。
食事が終わる頃には満天の星空が俺たちを照らしていた。
まだ小屋しかなくて、全く整備していない土地だけど彼らと一緒にいるだけでこれほど楽しい時間を過ごせるなんて。
まだ見ぬ牧場の完成に夢を馳せ、肉をかじる俺であった。
「熱っ!」
思いっきり噛むんじゃなかったぜ!
◇◇◇
翌日――。
日課となっているお仕事をこなすべく、採集してくるもののリストを再度チェックする。
パープルボルチーニ、ミレレ草、月の雫の三点か。
メモをポケットの中に仕舞い込み、全員で冒険者ギルドに向かう。
今日も今日とて早朝だというのにカウンターには先客がいた。
ギルドには二人の受付嬢がいるのだが、せっかくだからミリアムが終わるのを待つことにしようか。
何このデジャブ……。
「ちっと待つか」
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「本当に朝が弱いな、ロッソは」
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右手に握られたままのロッソはそう言い残し、ぐでっと首がたれる。
目までつぶって完全お休みモードになってしまったよ。
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