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30.コースター
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「う、うおおお。速い!」
フルーツを探すってことで、さっそくカンガルーなヨッシーの背に乗せてもらったわけだけど……。
人間なんて比べ物にならない速度で走ることができるんだな。
ぴょんぴょん跳ねる動きだから揺れが物凄い。時折太い枝の上にまでジャンプして更に高く飛び上がるものだから、視界の動きもめぐるましい。
ギンロウはもちろん地面を駆けているわけだけど、この速度でも悠々とついてきている。
もし、彼が俺たちを見失ったとしても匂いで探り当てることができるので、迷子になる心配もない。
もっとも、今は俺たちがギンロウの後をついて行っている形ではあるのだが。
「ヨッシー。ギンロウを見失うなよー」
『もちろんっす! あの巨大な魔力、見失うはずがないっす!』
「ギンロウの鼻ですぐにフルーツは見つかるはず。今も迷いなく進んでいるから、すでに見つけていると思う」
『フルーツ』
ひょこっとリュックから顔だけ出して、それだけを呟きすぐにリュックの中に引っ込むロッソであった。
激しく三半規管と胃を揺さぶられること10分くらいだろうか、見事なリンゴの木を発見する。
ちゃっかり出て来たロッソが俺の肩を伝って木に登ろうとしたので、後ろからむんずと掴み押しとどめた。
「みんなで食べるんだろ」
『採るだけダ』
「俺がとるから待ってろ」
『……ッチ』
絶対にそのままかじりつくつもりだっただろ!
そうはさせないぜ。20個ほどリンゴを採取し、亀を放置してある湖に戻る。
◇◇◇
亀の肉は硬い。そのまま焼いて食べるには硬すぎた。
ギンロウは特に気にした様子もなくむしゃむしゃ食べていたけど、人間の顎だとこいつはしんどいな。
ヨッシーも強靭な顎で肉を噛みいていた。あ、肉食なんだ。なんて感想を抱く。
聞いてみたら、肉でも野菜でも食べるとのこと。どちらかというと肉の方が好みらしい。
カンガルーって草食じゃなかったっけ? いや、相当曖昧な記憶だけど、確か絶滅した種には肉食のものもいたとかなんとか。
地球とは別世界だし、そもそもヨッシーはカンガルーとは言えないほど巨体だし比べるのが野暮ってもんだな。
亀肉の味はそう悪くないだけに惜しい……。
仕方ないので、俺だけぐつぐつと鍋で煮込み、塩を入れて食べることにしたのだ。
これでもまだ硬かったけど、なんとか噛み切れるまでにはなった。
食べ終わった後は腹ごなしタイムだよな。うん。
よおっし。
リュックの中からエルナンに作ってもらった木製のフリスビーを取り出す。
「ギンロウー。行くぞー」
「わおん」
体を捻り、思いっきりフリスビーを放り投げる。
ぱくっ。
フリスビーが舞い上がり切る前にファイアバードが嘴で咥えてキャッチしてしまった。
「くあ」
ファイアバードは俺の頭の上まで飛んできて嘴をパカンと開く。
ポトリとフリスビーが俺の頭の上に落ちた。
「ファイアバードも参戦か」
『自分も参加するっす!』
「分かった。次行くぞー」
腕に思いっきり力を込め、伸び上がるようにしてフリスビーを投げる。
ぱくっ。
「くあ」
ぽとんと俺の頭の上にフリスビーが落ちた……。
「ファイアーバードは一回お休みな」
「くああ」
ファイアバードには俺の足元にいてもらい、フリスビー三回目を投擲する。
グングンと空高く舞い上がったフリスビーは風に煽られ湖へ向かっていく。
ばしゃんと水の中に飛び込むギンロウ。
対するヨッシーはというと――。
『兄貴に作ってもらった爪があれば、行ける気がするっす!』
なんてうそぶき、筋骨隆々の太ももに力を込め駆けだす。
なんとヨッシーは、ぴょんぴょんと水きりのように水の上を跳ねていくではないか!
パシっとフリスビーを前脚で掴んだところで、ヨッシーが水の中に沈む。
帰りは泳いで戻ってきた。
「すげえな。水の上を走るなんて」
『まだまだ修行が足りねえっす! 兄貴の爪があれば、もっといけそうっす!』
「お、おう」
水からあがったヨッシーは別の生物のようになっていた。
ふさふさした毛を持つ生き物って水に濡れると小さくなるんだよね。ヨッシーの場合は、筋肉がもりもりで不気味だ……。
彼がぶるぶると体を震わせると、水しぶきがこっちにまで飛んできた。
「ヨッシーも次はお休みな。次はギンロウに」
『うっす!』
「わおん!」
今度は湖にいかないように、余裕をもって投げる。
クルクルと回転しながら空高く舞い上がったフリスビーを追いかけるギンロウ。
見事フリスビーを口でキャッチしたギンロウが、走ってこっちまで戻ってきた。
「よおし、えらいぞー」
「わんわん」
ギンロウの首元をわしゃわしゃして、微笑みかける。
こんな感じで順番にフリスビーを投げてはとってきて、を繰り返した。
遊びが終わった後は洗濯だ。
山の中、深い森の中を歩きどおしで数日経過しているから、服が汚れに汚れ泥だらけになっている。
せっかくの清浄な水を称えた湖なのだから、綺麗にしておかねばな。
ついてに体も洗ってしまおうか。
◇◇◇
「満天の星空だ。やっぱり地球……いや、日本とは全く星の配置が異なるなあ」
結局このまま湖のほとりで夜を過ごすことにしたんだ。
亀の肉が勿体ないこともある。リンゴも余裕があるし、水場も近いしってことで環境の良さからここを選んだ。
もう少し進んでもよかったんだけど、ここほどくつろげる場所ってのは中々ないからね。
異世界で生まれ落ちてから星空を見たのは数えきれないほどある。
だけど、これほど済んだ星空を見上げるのは久しぶりだと思う。
星を見ていると、この世界にも太陽があり、惑星があって、無数の恒星が宇宙にあるのだと知ることができる。
根本的に異なる地球とこの世界であるんだけど、同じように宇宙があるってのも興味深い。ひょっとしたら、同じ宇宙に地球と俺の住む惑星があるのかもしれない。
なんて思うと何だかしんみりとしてきてしまった。
ローブを被り、ギンロウのお腹を撫でながら今度は湖に目を向ける。
月の光に反射した湖面はキラキラと幻想的で美しい。
こんな夜は妖精が湖面の上をひらりと舞ってダンスをしていたりしても驚かないほどだ。
いや、妖精なんて見たことなんてないんだけどね。
メルフェンな気持ちに浸っていたら、ファイアバードがバサバサと翼を震わせたらしく風圧が俺の髪を撫でた。
こうして、大好きなモフモフたちに囲まれて就寝……なんて癒されるんだろう。
ヨッシーという力強い移動手段を得たので、明日からの行軍速度は数倍に跳ね上がるはず。
目的地までもすぐだろう。
「おやすみ。みんな」
『おやすみです! 兄貴!』
「お、まだ起きていたのか」
『寝る前に屈伸をしてからでないと、寝付けないんす!』
「そ、そうか……」
あれだけ筋骨隆々なのに寝る前まで鍛えるとは……ヨッシーって修行マニアなのかも?
たらりと額から冷や汗を流す俺なのであった。
フルーツを探すってことで、さっそくカンガルーなヨッシーの背に乗せてもらったわけだけど……。
人間なんて比べ物にならない速度で走ることができるんだな。
ぴょんぴょん跳ねる動きだから揺れが物凄い。時折太い枝の上にまでジャンプして更に高く飛び上がるものだから、視界の動きもめぐるましい。
ギンロウはもちろん地面を駆けているわけだけど、この速度でも悠々とついてきている。
もし、彼が俺たちを見失ったとしても匂いで探り当てることができるので、迷子になる心配もない。
もっとも、今は俺たちがギンロウの後をついて行っている形ではあるのだが。
「ヨッシー。ギンロウを見失うなよー」
『もちろんっす! あの巨大な魔力、見失うはずがないっす!』
「ギンロウの鼻ですぐにフルーツは見つかるはず。今も迷いなく進んでいるから、すでに見つけていると思う」
『フルーツ』
ひょこっとリュックから顔だけ出して、それだけを呟きすぐにリュックの中に引っ込むロッソであった。
激しく三半規管と胃を揺さぶられること10分くらいだろうか、見事なリンゴの木を発見する。
ちゃっかり出て来たロッソが俺の肩を伝って木に登ろうとしたので、後ろからむんずと掴み押しとどめた。
「みんなで食べるんだろ」
『採るだけダ』
「俺がとるから待ってろ」
『……ッチ』
絶対にそのままかじりつくつもりだっただろ!
そうはさせないぜ。20個ほどリンゴを採取し、亀を放置してある湖に戻る。
◇◇◇
亀の肉は硬い。そのまま焼いて食べるには硬すぎた。
ギンロウは特に気にした様子もなくむしゃむしゃ食べていたけど、人間の顎だとこいつはしんどいな。
ヨッシーも強靭な顎で肉を噛みいていた。あ、肉食なんだ。なんて感想を抱く。
聞いてみたら、肉でも野菜でも食べるとのこと。どちらかというと肉の方が好みらしい。
カンガルーって草食じゃなかったっけ? いや、相当曖昧な記憶だけど、確か絶滅した種には肉食のものもいたとかなんとか。
地球とは別世界だし、そもそもヨッシーはカンガルーとは言えないほど巨体だし比べるのが野暮ってもんだな。
亀肉の味はそう悪くないだけに惜しい……。
仕方ないので、俺だけぐつぐつと鍋で煮込み、塩を入れて食べることにしたのだ。
これでもまだ硬かったけど、なんとか噛み切れるまでにはなった。
食べ終わった後は腹ごなしタイムだよな。うん。
よおっし。
リュックの中からエルナンに作ってもらった木製のフリスビーを取り出す。
「ギンロウー。行くぞー」
「わおん」
体を捻り、思いっきりフリスビーを放り投げる。
ぱくっ。
フリスビーが舞い上がり切る前にファイアバードが嘴で咥えてキャッチしてしまった。
「くあ」
ファイアバードは俺の頭の上まで飛んできて嘴をパカンと開く。
ポトリとフリスビーが俺の頭の上に落ちた。
「ファイアバードも参戦か」
『自分も参加するっす!』
「分かった。次行くぞー」
腕に思いっきり力を込め、伸び上がるようにしてフリスビーを投げる。
ぱくっ。
「くあ」
ぽとんと俺の頭の上にフリスビーが落ちた……。
「ファイアーバードは一回お休みな」
「くああ」
ファイアバードには俺の足元にいてもらい、フリスビー三回目を投擲する。
グングンと空高く舞い上がったフリスビーは風に煽られ湖へ向かっていく。
ばしゃんと水の中に飛び込むギンロウ。
対するヨッシーはというと――。
『兄貴に作ってもらった爪があれば、行ける気がするっす!』
なんてうそぶき、筋骨隆々の太ももに力を込め駆けだす。
なんとヨッシーは、ぴょんぴょんと水きりのように水の上を跳ねていくではないか!
パシっとフリスビーを前脚で掴んだところで、ヨッシーが水の中に沈む。
帰りは泳いで戻ってきた。
「すげえな。水の上を走るなんて」
『まだまだ修行が足りねえっす! 兄貴の爪があれば、もっといけそうっす!』
「お、おう」
水からあがったヨッシーは別の生物のようになっていた。
ふさふさした毛を持つ生き物って水に濡れると小さくなるんだよね。ヨッシーの場合は、筋肉がもりもりで不気味だ……。
彼がぶるぶると体を震わせると、水しぶきがこっちにまで飛んできた。
「ヨッシーも次はお休みな。次はギンロウに」
『うっす!』
「わおん!」
今度は湖にいかないように、余裕をもって投げる。
クルクルと回転しながら空高く舞い上がったフリスビーを追いかけるギンロウ。
見事フリスビーを口でキャッチしたギンロウが、走ってこっちまで戻ってきた。
「よおし、えらいぞー」
「わんわん」
ギンロウの首元をわしゃわしゃして、微笑みかける。
こんな感じで順番にフリスビーを投げてはとってきて、を繰り返した。
遊びが終わった後は洗濯だ。
山の中、深い森の中を歩きどおしで数日経過しているから、服が汚れに汚れ泥だらけになっている。
せっかくの清浄な水を称えた湖なのだから、綺麗にしておかねばな。
ついてに体も洗ってしまおうか。
◇◇◇
「満天の星空だ。やっぱり地球……いや、日本とは全く星の配置が異なるなあ」
結局このまま湖のほとりで夜を過ごすことにしたんだ。
亀の肉が勿体ないこともある。リンゴも余裕があるし、水場も近いしってことで環境の良さからここを選んだ。
もう少し進んでもよかったんだけど、ここほどくつろげる場所ってのは中々ないからね。
異世界で生まれ落ちてから星空を見たのは数えきれないほどある。
だけど、これほど済んだ星空を見上げるのは久しぶりだと思う。
星を見ていると、この世界にも太陽があり、惑星があって、無数の恒星が宇宙にあるのだと知ることができる。
根本的に異なる地球とこの世界であるんだけど、同じように宇宙があるってのも興味深い。ひょっとしたら、同じ宇宙に地球と俺の住む惑星があるのかもしれない。
なんて思うと何だかしんみりとしてきてしまった。
ローブを被り、ギンロウのお腹を撫でながら今度は湖に目を向ける。
月の光に反射した湖面はキラキラと幻想的で美しい。
こんな夜は妖精が湖面の上をひらりと舞ってダンスをしていたりしても驚かないほどだ。
いや、妖精なんて見たことなんてないんだけどね。
メルフェンな気持ちに浸っていたら、ファイアバードがバサバサと翼を震わせたらしく風圧が俺の髪を撫でた。
こうして、大好きなモフモフたちに囲まれて就寝……なんて癒されるんだろう。
ヨッシーという力強い移動手段を得たので、明日からの行軍速度は数倍に跳ね上がるはず。
目的地までもすぐだろう。
「おやすみ。みんな」
『おやすみです! 兄貴!』
「お、まだ起きていたのか」
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