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第五章 嵐の予兆
とんでもない事態
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「エリアナ様、大丈夫? お加減が悪いんですの?」
最近社交界の注目を集めているカップルの不在は、すぐに周囲に気づかれた。
親しくしている伯爵夫人が、エリアナがいないのに気づき、テラスまで探しに来てくれた。
エリアナは夫人に微笑み返した。
「ありがとうございます。夫が、何か飲み物を持ってきてくれることになっておりますので……」
「そう言えば、さっきからアレクシス様をお見かけしませんわね。飲み物を探しに行かれたのかしら?」
エリアナは急に不安になってきた。
アレクシスの帰りが遅すぎる。テラスを出ていってから、かなりの時間が過ぎている。
――それも、今夜までかもしれないわね。
リリアーナの意味ありげな言葉が、胸によみがえってきた。
そのとき。
「大変! 大変ですわ!」
社交界で許されるギリギリまであわてふためいて、別の夫人がテラスに駆け込んできた。
「ああ、エリアナ様、大変ですの。アレクシス様の従者が……何者かに襲われて、縛り上げられたのですって。庭園の隅に転がされているところを、先ほど発見されたのです。とんでもないことですわ。警備が厳重なはずの王宮で、そんな事件が……!」
「ええっ! ……それで……アレクシス様は……」
「舞踏会の会場にはいらっしゃらないんです。会場はもう、大騒ぎですわ」
普通の貴婦人なら、ショックを受けて卒倒していただろう。けれども、ふらふらしていたエリアナは、逆にしゃんとした。
アレクシスが危険な目に遭っているかもしれない。
なんとしてでも、助けなければ。
その強い感情が、気分の悪さを振り払った。
エリアナは断固として立ち上がった。
「探さなくては、夫を」
夫人は大きくうなずいた。
「陛下のご命令で、兵士たちが宮殿と庭園を捜索しています」
「大丈夫ですわよ、エリアナ様。兵士が探してくれているのですもの。アレクシス様はきっとすぐに見つかります。心配なさらないで」
伯爵夫人が、励ますようにエリアナの腕にそっと手を置いた。
捜索の結果、一つの事実がすぐに明らかになった。
アレクシスが、フォンティーヌ家の従者たちに抱えられるようにして、舞踏会の会場を出て行ったということ。
何人かの出席者がその姿を目撃していた。「ヴァルモント公爵は気分が悪そうだった」と彼らは口を揃えた。
廊下でも、アレクシスたちの姿を、何人かの使用人が目撃していた。
証言をつなぎ合わせると――どうやら、アレクシスとフォンティーヌ家の従者たちは、旧館の方へ向かったらしい。
兵士たちが旧館に踏み込むと。
静まりかえった建物のどこかで、男女が争うような声が聞こえた。
最近社交界の注目を集めているカップルの不在は、すぐに周囲に気づかれた。
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エリアナは急に不安になってきた。
アレクシスの帰りが遅すぎる。テラスを出ていってから、かなりの時間が過ぎている。
――それも、今夜までかもしれないわね。
リリアーナの意味ありげな言葉が、胸によみがえってきた。
そのとき。
「大変! 大変ですわ!」
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「ああ、エリアナ様、大変ですの。アレクシス様の従者が……何者かに襲われて、縛り上げられたのですって。庭園の隅に転がされているところを、先ほど発見されたのです。とんでもないことですわ。警備が厳重なはずの王宮で、そんな事件が……!」
「ええっ! ……それで……アレクシス様は……」
「舞踏会の会場にはいらっしゃらないんです。会場はもう、大騒ぎですわ」
普通の貴婦人なら、ショックを受けて卒倒していただろう。けれども、ふらふらしていたエリアナは、逆にしゃんとした。
アレクシスが危険な目に遭っているかもしれない。
なんとしてでも、助けなければ。
その強い感情が、気分の悪さを振り払った。
エリアナは断固として立ち上がった。
「探さなくては、夫を」
夫人は大きくうなずいた。
「陛下のご命令で、兵士たちが宮殿と庭園を捜索しています」
「大丈夫ですわよ、エリアナ様。兵士が探してくれているのですもの。アレクシス様はきっとすぐに見つかります。心配なさらないで」
伯爵夫人が、励ますようにエリアナの腕にそっと手を置いた。
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証言をつなぎ合わせると――どうやら、アレクシスとフォンティーヌ家の従者たちは、旧館の方へ向かったらしい。
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