推し活スポンサー公爵との期限付き婚約生活〜溺愛されてるようですが、すれ違っていて気付きません〜

●やきいもほくほく●

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一章 「この婚約は間違いだった」

①①

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しかし普通の令嬢ならばマリアンに声をかけられただけで震え上がり、怒鳴り声を上げられたら泣き出してもおかしくはない。
実際、マリアンに関わった令嬢たちはそうだった。

しかしミシュリーヌはマリアンに萎縮することなく正論で返してきたのだ。
もちろんマリアンも頭ではミシュリーヌに決定権がないことはわかっている。
わかってはいるがどうしようもない気持ちをぶつけにきただけなのだが、この切り返しは予想外だった。
と、思うのと同時に腹立たしい。

絶世の美女クロエと一緒に過ごせるだけありなかなか肝が据わっているではないか。

それにマリアンはオレリアンの再従兄妹だと言ってはいるものの、立ち位置は他の令嬢たちと何ら変わらない。
仲良くもなければ親しくもないのだとサラとエマは知っている。
マリアンの言ったように『ミシュリーヌと婚約を解消してほしい』などと、頼めるはずもない。

それをミシュリーヌたちは知らなかったのだから当然だろう。
マリアンもマリアンで虚勢を張って後戻りができなくなってしまったようだ。

サラとエマは目を合わせつつ、今後の立ち回りを考えていた。
二人は伯爵令嬢でマリアンの父であるディリナ侯爵家に事業を支えてもらっていた。
没落寸前だった家を助けてもらっている恩がある。
しかしマリアンのこのやり方には賛同しかねていた。

実際、社交界では派閥関係なしにマリアンの傍若無人なやり方が親に伝わり苦言を呈していた。
一緒にいるサラとエマも被害を受けている。けれど逃げることもできずに板挟み状態だった。


(こうなると思ったわ。マリアン様、どうすると思う?)

(ミシュリーヌを潰せとか言い出すに決まっているわよ)

(そうよね……水魔法を使わないだけよかったわ。絶対に騒ぎになるわ。そうなったら大変だもの)


アイコンタクトで会話しながら嫌な予感だけはひしひしとしていた。
マリアンは今までずっとクロエの美しさに嫉妬心を剥き出しにしている。
クロエも幼い頃は暗くて目立たないようにしていたのをサラとエマも見たことがある。
ミシュリーヌをクロエを今のマリアンのように睨みつけていた。
しかし一時を堺に雰囲気がガラリと変わった。

クロエは自分の意見をはっきりと言うようになり、その美貌を隠さなくなった。
何より極度のシスコンとなり、ミシュリーヌのことしかまったく見えていなくなったのだ。
つまり度が過ぎるほどのシスコンになり、令息たちにまったく興味がないことを見た令嬢たちは安心してクロエと親しくなったのだ。

クロエは口を開けばミシュリーヌの話題を出していた。
『ミシュリーヌお姉様は神様からの贈り物ですわ』
『わたくしよりミシュリーヌお姉様の方が美しいもの』
嫌味かと思いきや、彼女はいたって真面目なようだ。
演技ではなく本当にそう思っているのだろう。

そんなクロエはミシュリーヌの横で、マリアンとサラとエマに敵意を剥き出しにしていた。
彼女の視線は人が射殺せそうでだったし、もう少しでマリアンに掴みかかっていたのではないだろうか。

マリアンよりも本気になったクロエの方が何をしてくるかわからないため、恐ろしいと感じる。
何よりミシュリーヌを守ろうとするクロエの本気が伺える。

それからミシュリーヌはクロエの影に隠れてはいるが、伯爵令息のジョゼフ・ディディナと事業を立ち上げて大成功を収めている。
オシカツ商会という、女心をくすぐるカラフルで可愛らしい小物を販売していた。
好きな人の肖像画やアデールがコピーするように残したリアルすぎる肖像画のようなものを貼り付けて応援グッズに変えられるのだ。
それを面白く思わない貴族たちもいるようだが、彼らの勢いは止められない。

公開練習の時に、地獄の雰囲気の第一騎士団。
マリアンの独壇場を止められるのは彼女を咎められるのは第一騎士団団長と結婚した公爵夫人か、彼女よりも家格が高い令嬢が婚約者の様子を見に来た時くらいなものだろう。

一方、第二騎士団はオシカツ商会のグッズを持って、応援を心から楽しんでいるらしい。
いつも歓声が聞こえるし、公開練習が終わった後には令嬢たちは心から楽しそうな笑顔を浮かべながら出てくるのだ。
皆、仲が良さそうに話しているのを見ると羨ましい。
そのおかげなのかは知らないが、第二騎士団の活躍は目覚ましいもので、次々と成果を上げているそうだ。

それに先ほどミシュリーヌは黄色のグッズをたくさん持っていた。
フリルやリボン、第二騎士団の副団長モアメッド・ディーラーのリアルな肖像画がびっしりと敷き詰められたバッグ。
一目見て手が込んでいることがわかる。
イエローのドレス、ところどころオレンジの小物でアクセントを入れていた。

((はぁ……うらやましい))

そう思わずにはいられない。
それにクロエの影に隠れて目立ちはしないが、整っていて小動物のように可愛らしい容姿。
隣にクロエがいなければ、間違いなく異性の目を惹いている。

レダー公爵もミシュリーヌに突然、婚約を申し込んだと聞いた。
つまり一目惚れの可能性もあるのではないだろうか。

(それにもしも、もしも本当にレダー公爵がミシュリーヌ様のことが好きで婚約していたら、私たち終わるわよ?)

(そう言ったって、どうすればいいのよ……! マリアン様を止めらないわ)

(もうっ、なんで私たちばかりこんな目にっ)


ミシュリーヌはマリアンを真正面から否定した。
マリアンもこの怒りようだ。
ミシュリーヌを許して引くことはないだろう。
それは彼女のそばにいるサラとエマはよく理解していた。


「サラ、エマ……」

「「は、はい!」」

「あの女……二度と社交界に出られないようにしてやりましょう」

「「…………」」


サラとエマは何も言えずに、ヘラリと笑うしかなかった。

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