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二章 推し活スポンサー
①⑧
しおりを挟む「お詫びといってはなんだが、この件はすぐにでも対応したい。ミシュリーヌ嬢、予定を聞いてもいいだろうか?」
「ですが……」
すぐに対応してくれるのは嬉しいが、ミシュリーヌはどうしようもなく気になることがあった。
(レダー公爵、今にも倒れてしまいそう……)
オレリアンの顔色が悪いことが気になって仕方ない。
それにオレリアンは騎士団の格好のままだし、剣も携えていた。
艶のある真っ黒なブーツは白いパンツによく映える。
赤いラインと金色のボタンは第一騎士団の証。
ちなみに第二騎士団は青ラインと銀色のボタン、第三騎士団は黄色のラインと銅色のボタンが使われて制服が作られている。
どうやら彼は騎士団の仕事を終えた後、レダー公爵邸でミシュリーヌの手紙を読んですぐにここに来てくれたようだ。
「ミシュリーヌお姉様、レダー公爵を帰……っ!」
「……クロエ?」
「んぅ──!?」
クロエが立ち上がったのと同時に、何かを感じとった侍女たちが彼女の両腕を掴み、部屋の外へと促していく。
「シューマノン子爵家のためですから!」
「いざという時にエーワン様にこうするように許可は得てますからっ」
それからクロエの口元を押さえられながら去って行ってしまう。
ミシュリーヌはどうしたのかと首を傾げる。
エーワンの名前が出てくるところも気になるが、侍女は度々クロエを連れ去るのだ。
そういえばジョゼフや令嬢の友人が来た時も、度々クロエは侍女たちに引きずられいくことがある。
(クロエ、どうかしたのかしら……)
ミシュリーヌが出て行った扉を見つめていると、前から聞こえる咳払い。
姿勢を正したミシュリーヌは先ほどよりも表情が柔らいオレリアンを見る。
するとオレリアンは手紙を広げて指をさす。
「この糸というのが、オシカツに必要なものなのだろう?」
「はい、そうなんです」
「なら、すぐに動いた方がいい。明日は休みだが、ミシュリーヌ嬢が大丈夫ならば今からでも街に行こう」
オレリアンは一週間もミシュリーヌの手紙を放置したことを気にしてくれているのだろう。
誠実な気持ちは嬉しいのだが、今にも倒れそうなオレリアンを見て放っておくことはできそうになかった。
それに頬が赤く、汗ばんでいるように見えるのは気のせいではないはずだ。
(レダー公爵は体調が優れないんだわ。お父様も領地の管理に忙しそうだもの。それに加えて騎士団の仕事……)
第三騎士団で働くミシュリーヌの兄、エーワンも騎士団の仕事でくたくたになって帰ってくる。
身近で大変なことを知っているからこそ、ミシュリーヌはオレリアンの大変さが少しは理解できる。
よく見ないとわからないが、吐く息は荒い。
この状態で買い物に付き合わせることなど出来はしない。
(体調を崩しているのに手紙を届けにここまできてくださったのは嬉しいけど……それに明日は休みだと言っていたから、休むのが先よね! 健康第一だわ)
ここでミシュリーヌはあることを思いつく。
「いいえ、大丈夫です」
「……!」
ミシュリーヌが首を横に振るとオレリアンは大きく目を見開いた。
その顔はショックを受けているようにも見える。
ミシュリーヌはオレリアンに言い聞かせるように話していく。
「レダー公爵、わたしのことよりも体をゆっくり休めてください」
「…………は?」
「休むのが先です!」
オレリアンはまさかこんなことを言われるとは思っていなかったのだろう。
ミシュリーヌを見つめながら固まってしまった。
(健康はどんなものにも変えられない。何よりも大切なものだもの)
けれど前世は病に冒されて、自由に強く憧れているからこそそう強く思うのかもしれない。
健康で美味しくご飯が食べられることや、自分のやりたい時にやりたいことができるのか。
当たり前のことだけど、当たり前じゃない。
それがどれだけ大切で尊いことなのかが、ミシュリーヌはよく知っている。
だからこそオレリアンにはゆっくりと体を休めて欲しいと思った。
「今すぐに横になった方がいいです。休みましょう!」
「…………!?」
オレリアンはミシュリーヌの提案に驚いている。
「失礼します」
ミシュリーヌは立ち上がると、オレリアンの元へ。
額に手のひらを当てて熱を測る。
(うーん、あまり熱はないようだけど、疲れから出ているものかしら)
それに先ほどミシュリーヌたちを待っている間に瞼を閉じていたことを考えると、相当疲れているのだろう。
オレリアンを見るとますます顔が赤くなっていくではないか。
やはり熱があるのだと確信する。
「医師を呼びますので少々お待ちください」
「……!」
医師を呼ばなくていいというオレリアンにミシュリーヌは身を乗り出して訴えかけるように言った。
「健康第一! それだけは絶対ぜぇーったいに譲れませをから」
「……」
「今にも倒れそうなお顔をしています。今は何も考えずにご飯を食べてゆっくりしてください!」
ミシュリーヌは立ち上がり、侍女たちに指示を出していく。
「ミ、ミシュリーヌ嬢……俺は……っ」
「そうと決まれば行きましょう!」
「……っ!?」
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