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第四部:決戦、飢餓の戦場
第四十一話:戦場へ、血肉となる握り飯
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最終野営地での最後の食事、勝鬨握りを受け取った兵士たちは、夜明け前、静かに陣を払った。
長かった行軍は終わり、いよいよ決戦の地へ向かう時が来た。
数万の兵士が、それぞれが属する部隊の隊形を組みながら、地響きを立てて進んでいく。
夜明け前の薄明かりの中、広大な野が徐々に姿を現し、遠くには敵軍の陣容がぼんやりと見える。
空気は一変し、寒さや疲労とは違う、肌をぴりぴりと刺すような緊迫感と、これから起こる凄惨な出来事を予感させる殺気に満ちている。
兵士たちは、重い武具を身につけ、手に武器を握りしめている。
胸には、千兵衛が作った勝鬨握りを忍ばせている。
彼らの顔には、恐怖と、しかし戦い抜こうという強い覚悟が浮かんでいる。
これまでの飢餓、病、寒さ、疲労といった困難を乗り越え、彼らはこの戦場に立っている。
その命を繋ぎ、ここまで運んできたのは、千兵衛のいくさ飯だった。
軍は敵陣へとじりじりと近づいていく。
敵から放たれる矢が、ひゅんひゅんと空を切り裂く音が聞こえ始める。
遠くで鬨の声が上がり、やがてそれが伝播して、味方の兵士たちからも怒号が上がる。
戦いの開始を告げる太鼓がドンドンと鳴り響き、地を揺るがす。
ついに、両軍が正面衝突する。
剣と剣がぶつかり合う金属音(剣戟の音)、兵士たちの叫び声、呻き声。
戦場は一瞬にして混沌と化す。
土煙(つちけむり)が舞い上がり、視界を遮る。まさに、生と死が入り乱れる、地獄絵図だ。
兵士たちは、この嵐の中で、自身の全ての力を振り絞って戦う。
しかし、飢餓と行軍の疲労は、彼らの体を確実に蝕んでいる。
時間が経つにつれて、体の動きが鈍くなり、呼吸が乱れるのを感じる。
力が抜けそうになる。
その時だ。
兵士の一人、権太は、敵と剣を交えながら、意識が朦朧としていくのを感じていた。
腹は空っぽだ。
体力が尽きかけている。
このままでは……。
権太は、死を覚悟しかけたその瞬間、胸に忍ばせていた勝鬨握りの存在を思い出した。
彼は、敵の間合いから素早く退き、近くの倒木を盾に、ぎゅっと勝鬨握りを手に取った。
泥と血に汚れるのも構わず、包みを解き、大きく一口かぶりつく。
もぐもぐ……。
戦場の喧騒の中で、味噌と、様々な食材の濃厚な風味が口いっぱいに広がる。
乾いた喉に、飯がつっかえる。
しかし、噛みしめるごとに、体中にじんわりと力が満ちていくのを感じる。
腹の底から、温かいものが湧き上がるようだ。
飢餓と疲労でくじけそうになっていた心が、この一口の握り飯によってしゃきっとする。
勝鬨握りは、単なる食事ではなかった。
それは、千兵衛が兵士たちに込めた、生き抜くための力と、勝利への願いそのものだった。
この握り飯が、権太の体と心に、再び戦うための力を与えた。
権太は、勝鬨握りを懐にしまい、再び敵へと向かっていく。
その足取りは、先ほどよりも力強い。顔つきも変わった。
彼は、この飢餓の戦場で、勝鬨握りが自分を支えてくれることを確信した。
戦場のあちらこちらで、似たような光景が見られただろう。
兵士たちが、混乱の中で勝鬨握りを口にし、再び戦場へと舞い戻る姿が。
勝鬨握りは、まさにこの戦場での、兵士一人ひとりの生命線となっていたのだ。
後方の指揮所近くでは、軍目付代の井上治部少輔が、戦況を厳しい顔つきで見守っていた。
彼の傍らには、千兵衛が立っている。
井上は、時折、伝令兵の報告を聞きながら、千兵衛に短い指示を出す。
かつては敵対した二人だが、今、彼らは兵士の命を守るという共通の目的のために、共に戦場の兵站を支えている。
井上は、千兵衛のいくさ飯が、この極限状況でいかに兵士を支えているかを、その目でしかと見届けている。
戦いは始まったばかりだ。
勝鬨握りは、兵士の個人携帯食として、最初の猛攻を耐え抜く力となっている。
しかし、戦いは長く続く。
勝鬨握りだけでは、いつか力尽きる時が来るだろう。
戦場の飢餓は、今、兵士たちに牙を剥き始めた。
千兵衛の「いくさ飯」の、そして井上との新たな協力関係の、真の試練は、これから始まるのだ。
【今回のいくさ飯】
『戦場での命綱、五穀と滋養の勝鬨握り』
第四部、戦場での兵士個人携帯用糧として、第四十話で準備・配布された握り飯。最良の雑穀飯に、炒り豆、胡麻、乾燥野菜、肉魚乾物、乾燥芋、そして味噌を混ぜ込みしっかり握られている。
栄養価とエネルギー密度が高く、戦場の極限状況で兵士の体力を維持し、戦意を支える生命線となる。
混乱の中で素早く食べられ、即座に力を与える効果が描写された。
第四部の主要な「いくさ飯」の一つ。(現代の戦闘糧食、栄養バー。戦場での即応性、精神的な支え、井上治部少輔との協力関係)
長かった行軍は終わり、いよいよ決戦の地へ向かう時が来た。
数万の兵士が、それぞれが属する部隊の隊形を組みながら、地響きを立てて進んでいく。
夜明け前の薄明かりの中、広大な野が徐々に姿を現し、遠くには敵軍の陣容がぼんやりと見える。
空気は一変し、寒さや疲労とは違う、肌をぴりぴりと刺すような緊迫感と、これから起こる凄惨な出来事を予感させる殺気に満ちている。
兵士たちは、重い武具を身につけ、手に武器を握りしめている。
胸には、千兵衛が作った勝鬨握りを忍ばせている。
彼らの顔には、恐怖と、しかし戦い抜こうという強い覚悟が浮かんでいる。
これまでの飢餓、病、寒さ、疲労といった困難を乗り越え、彼らはこの戦場に立っている。
その命を繋ぎ、ここまで運んできたのは、千兵衛のいくさ飯だった。
軍は敵陣へとじりじりと近づいていく。
敵から放たれる矢が、ひゅんひゅんと空を切り裂く音が聞こえ始める。
遠くで鬨の声が上がり、やがてそれが伝播して、味方の兵士たちからも怒号が上がる。
戦いの開始を告げる太鼓がドンドンと鳴り響き、地を揺るがす。
ついに、両軍が正面衝突する。
剣と剣がぶつかり合う金属音(剣戟の音)、兵士たちの叫び声、呻き声。
戦場は一瞬にして混沌と化す。
土煙(つちけむり)が舞い上がり、視界を遮る。まさに、生と死が入り乱れる、地獄絵図だ。
兵士たちは、この嵐の中で、自身の全ての力を振り絞って戦う。
しかし、飢餓と行軍の疲労は、彼らの体を確実に蝕んでいる。
時間が経つにつれて、体の動きが鈍くなり、呼吸が乱れるのを感じる。
力が抜けそうになる。
その時だ。
兵士の一人、権太は、敵と剣を交えながら、意識が朦朧としていくのを感じていた。
腹は空っぽだ。
体力が尽きかけている。
このままでは……。
権太は、死を覚悟しかけたその瞬間、胸に忍ばせていた勝鬨握りの存在を思い出した。
彼は、敵の間合いから素早く退き、近くの倒木を盾に、ぎゅっと勝鬨握りを手に取った。
泥と血に汚れるのも構わず、包みを解き、大きく一口かぶりつく。
もぐもぐ……。
戦場の喧騒の中で、味噌と、様々な食材の濃厚な風味が口いっぱいに広がる。
乾いた喉に、飯がつっかえる。
しかし、噛みしめるごとに、体中にじんわりと力が満ちていくのを感じる。
腹の底から、温かいものが湧き上がるようだ。
飢餓と疲労でくじけそうになっていた心が、この一口の握り飯によってしゃきっとする。
勝鬨握りは、単なる食事ではなかった。
それは、千兵衛が兵士たちに込めた、生き抜くための力と、勝利への願いそのものだった。
この握り飯が、権太の体と心に、再び戦うための力を与えた。
権太は、勝鬨握りを懐にしまい、再び敵へと向かっていく。
その足取りは、先ほどよりも力強い。顔つきも変わった。
彼は、この飢餓の戦場で、勝鬨握りが自分を支えてくれることを確信した。
戦場のあちらこちらで、似たような光景が見られただろう。
兵士たちが、混乱の中で勝鬨握りを口にし、再び戦場へと舞い戻る姿が。
勝鬨握りは、まさにこの戦場での、兵士一人ひとりの生命線となっていたのだ。
後方の指揮所近くでは、軍目付代の井上治部少輔が、戦況を厳しい顔つきで見守っていた。
彼の傍らには、千兵衛が立っている。
井上は、時折、伝令兵の報告を聞きながら、千兵衛に短い指示を出す。
かつては敵対した二人だが、今、彼らは兵士の命を守るという共通の目的のために、共に戦場の兵站を支えている。
井上は、千兵衛のいくさ飯が、この極限状況でいかに兵士を支えているかを、その目でしかと見届けている。
戦いは始まったばかりだ。
勝鬨握りは、兵士の個人携帯食として、最初の猛攻を耐え抜く力となっている。
しかし、戦いは長く続く。
勝鬨握りだけでは、いつか力尽きる時が来るだろう。
戦場の飢餓は、今、兵士たちに牙を剥き始めた。
千兵衛の「いくさ飯」の、そして井上との新たな協力関係の、真の試練は、これから始まるのだ。
【今回のいくさ飯】
『戦場での命綱、五穀と滋養の勝鬨握り』
第四部、戦場での兵士個人携帯用糧として、第四十話で準備・配布された握り飯。最良の雑穀飯に、炒り豆、胡麻、乾燥野菜、肉魚乾物、乾燥芋、そして味噌を混ぜ込みしっかり握られている。
栄養価とエネルギー密度が高く、戦場の極限状況で兵士の体力を維持し、戦意を支える生命線となる。
混乱の中で素早く食べられ、即座に力を与える効果が描写された。
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