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第二章:諸国遍歴、陰謀の足跡
第二話:南蛮渡りの品
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天王寺屋での聞き取りを終えたさつきは、確信を深めていた。
堺の豪商を脅かす「異国の商人」とは、まさしく京を拠点に暗躍する朧衆に他ならない。彼らが狙っている「南蛮渡りの珍しい金属」は、笹屋で標的となった「鉱石」と同一、あるいは類似のものであろう。
長屋に戻ったさつきは、藤次郎と小夜に天王寺屋での出来事を報告した。
「やはり、奴らはこの堺にも根を張っていたか…」
藤次郎は槍を握り締め、不敵な笑みを浮かべた。戦いの血が騒ぐようだった。
「南蛮渡りの珍しい金属…それが、黒幕の目的とどう繋がるのか。そして、なぜ彼らがこの堺で、それを集めようとしているのか…」
さつきは腕を組み、深く思考した。古文書に記された「地脈の要」と、朧衆の狙う「鉱石」。この二つの関連性を解き明かすことが、黒幕の真の目的を知る上で不可欠だった。
「さつき様、小夜が町の子供たちから、面白い話を聞いてきました!」
小夜が、興奮した様子で報告してきた。
「この町には、南蛮の言葉を話す怪しい人たちがいるそうです。彼らは、見たこともないような変な武具を持っていて、夜な夜な『南の異人街』にある大きな蔵に出入りしているとか…」
小夜の情報に、さつきの目に鋭い光が宿った。異人街。そして、怪しい武具。それは、朧衆が堺で新たな「企み」を進めている証拠に他ならない。
「藤次郎、小夜。今夜、その異人街の蔵を調べる」
さつきの言葉に、二人は迷うことなく頷いた。
その夜、月明かりが堺の町を淡く照らす中、さつきたちは異人街へと向かった。異人街は、通常の町の区画とは異なり、南蛮風の建物が立ち並び、独特の雰囲気を醸し出していた。夜の異人街は、人通りも少なく、不気味なほど静まり返っていた。
小夜が指し示した蔵は、他の建物よりもひときわ大きく、周囲を高い塀で囲まれていた。中からは、人の気配は感じられないものの、微かに金属の擦れるような音が聞こえてくる。
「中に人がいるな。そして、何かの作業をしているようだ」
さつきは、静かに蔵の様子をうかがった。蔵の窓からは、わずかながら光が漏れている。
藤次郎が、身軽な動きで塀を乗り越え、蔵の裏手に回った。さつきは、小夜と共に正面から蔵の様子を観察する。やがて、藤次郎から合図が送られてきた。裏口から侵入可能だという合図だ。
三人は音を立てないように蔵の中へと忍び込んだ。蔵の内部は、異国の香りが充満し、無数の木箱が積み上げられていた。その木箱の中には、天王寺屋が語っていた「南蛮渡りの珍しい金属」が、大量に保管されているのが見えた。
「これか…」
さつきは、その金属に手を触れてみた。ひんやりとした感触だが、表面には、まるで生きているかのように、微かに光を放つ紋様が浮かび上がっている。
「なんだこりゃあ…石じゃねぇのか?」
藤次郎も、その金属の異様さに眉をひそめた。
その時、蔵の奥から、複数の足音が近づいてくるのが聞こえた。さつきたちは、すぐさま物陰に身を隠した。現れたのは、漆黒の装束を纏った朧衆の男たちだった。彼らは、異国の商人たちと、何やら話し込んでいる。
「…この金属は、我らの計画に不可欠だ。滞りなく集めろ」
朧衆の一人が、低い声で命令した。
「承知いたしました。しかし、これほどの量を集めるには、堺の豪商どもの協力が不可欠でございます。天王寺屋も、我らの要求になかなか応じようとせず…」
異国の商人が、困ったように答えた。
「脅しが足りぬか。ならば、さらに圧力をかけろ。儀式の準備は着々と進んでいるのだ。悠長な真似は許されん」
朧衆の言葉に、さつきの胸に衝撃が走った。やはり、彼らはこの金属を、何らかの儀式のために集めているのだ。そして、その儀式は、黒幕の目的と深く関わっているに違いない。
その時、異国の商人の一人が、積まれた木箱の一つに手を触れた。その拍子に、木箱がわずかに傾き、中から見慣れない武具が転がり落ちた。
それは、これまでの日本刀とは異なる、曲線を描いた刃を持つ異形の剣だった。その剣は、先ほどの珍しい金属と同じように、微かに光を放つ紋様が刻まれている。
「これは…南蛮渡りの武器か」
さつきは、その剣に目を奪われた。朧衆は、この南蛮渡りの金属を使って、新たな武器を製造しているのだろうか。そして、その武器は、彼らの儀式とどう関係するのか。
その時、蔵の奥から、さらに多くの朧衆の足音が聞こえてきた。どうやら、彼らがこの蔵を根城にしているようだ。このままでは、発見される危険がある。
「藤次郎、小夜。一度退くぞ」
さつきは、そう小声で指示を出した。
目的の情報は得られた。これ以上、深入りするのは危険だと判断したのだ。三人は、音もなく蔵を後にし、夜の闇へと溶け込んでいった。
異人街の蔵で目にした光景は、さつきの胸に新たな疑念を抱かせた。
南蛮渡りの珍しい金属、それを集める朧衆、そして彼らが企む「儀式」。それは、綾小路家を滅ぼした黒幕の陰謀が、京を越え、異国の技術をも巻き込みながら、さらに拡大していることを示唆していた。
堺の豪商を脅かす「異国の商人」とは、まさしく京を拠点に暗躍する朧衆に他ならない。彼らが狙っている「南蛮渡りの珍しい金属」は、笹屋で標的となった「鉱石」と同一、あるいは類似のものであろう。
長屋に戻ったさつきは、藤次郎と小夜に天王寺屋での出来事を報告した。
「やはり、奴らはこの堺にも根を張っていたか…」
藤次郎は槍を握り締め、不敵な笑みを浮かべた。戦いの血が騒ぐようだった。
「南蛮渡りの珍しい金属…それが、黒幕の目的とどう繋がるのか。そして、なぜ彼らがこの堺で、それを集めようとしているのか…」
さつきは腕を組み、深く思考した。古文書に記された「地脈の要」と、朧衆の狙う「鉱石」。この二つの関連性を解き明かすことが、黒幕の真の目的を知る上で不可欠だった。
「さつき様、小夜が町の子供たちから、面白い話を聞いてきました!」
小夜が、興奮した様子で報告してきた。
「この町には、南蛮の言葉を話す怪しい人たちがいるそうです。彼らは、見たこともないような変な武具を持っていて、夜な夜な『南の異人街』にある大きな蔵に出入りしているとか…」
小夜の情報に、さつきの目に鋭い光が宿った。異人街。そして、怪しい武具。それは、朧衆が堺で新たな「企み」を進めている証拠に他ならない。
「藤次郎、小夜。今夜、その異人街の蔵を調べる」
さつきの言葉に、二人は迷うことなく頷いた。
その夜、月明かりが堺の町を淡く照らす中、さつきたちは異人街へと向かった。異人街は、通常の町の区画とは異なり、南蛮風の建物が立ち並び、独特の雰囲気を醸し出していた。夜の異人街は、人通りも少なく、不気味なほど静まり返っていた。
小夜が指し示した蔵は、他の建物よりもひときわ大きく、周囲を高い塀で囲まれていた。中からは、人の気配は感じられないものの、微かに金属の擦れるような音が聞こえてくる。
「中に人がいるな。そして、何かの作業をしているようだ」
さつきは、静かに蔵の様子をうかがった。蔵の窓からは、わずかながら光が漏れている。
藤次郎が、身軽な動きで塀を乗り越え、蔵の裏手に回った。さつきは、小夜と共に正面から蔵の様子を観察する。やがて、藤次郎から合図が送られてきた。裏口から侵入可能だという合図だ。
三人は音を立てないように蔵の中へと忍び込んだ。蔵の内部は、異国の香りが充満し、無数の木箱が積み上げられていた。その木箱の中には、天王寺屋が語っていた「南蛮渡りの珍しい金属」が、大量に保管されているのが見えた。
「これか…」
さつきは、その金属に手を触れてみた。ひんやりとした感触だが、表面には、まるで生きているかのように、微かに光を放つ紋様が浮かび上がっている。
「なんだこりゃあ…石じゃねぇのか?」
藤次郎も、その金属の異様さに眉をひそめた。
その時、蔵の奥から、複数の足音が近づいてくるのが聞こえた。さつきたちは、すぐさま物陰に身を隠した。現れたのは、漆黒の装束を纏った朧衆の男たちだった。彼らは、異国の商人たちと、何やら話し込んでいる。
「…この金属は、我らの計画に不可欠だ。滞りなく集めろ」
朧衆の一人が、低い声で命令した。
「承知いたしました。しかし、これほどの量を集めるには、堺の豪商どもの協力が不可欠でございます。天王寺屋も、我らの要求になかなか応じようとせず…」
異国の商人が、困ったように答えた。
「脅しが足りぬか。ならば、さらに圧力をかけろ。儀式の準備は着々と進んでいるのだ。悠長な真似は許されん」
朧衆の言葉に、さつきの胸に衝撃が走った。やはり、彼らはこの金属を、何らかの儀式のために集めているのだ。そして、その儀式は、黒幕の目的と深く関わっているに違いない。
その時、異国の商人の一人が、積まれた木箱の一つに手を触れた。その拍子に、木箱がわずかに傾き、中から見慣れない武具が転がり落ちた。
それは、これまでの日本刀とは異なる、曲線を描いた刃を持つ異形の剣だった。その剣は、先ほどの珍しい金属と同じように、微かに光を放つ紋様が刻まれている。
「これは…南蛮渡りの武器か」
さつきは、その剣に目を奪われた。朧衆は、この南蛮渡りの金属を使って、新たな武器を製造しているのだろうか。そして、その武器は、彼らの儀式とどう関係するのか。
その時、蔵の奥から、さらに多くの朧衆の足音が聞こえてきた。どうやら、彼らがこの蔵を根城にしているようだ。このままでは、発見される危険がある。
「藤次郎、小夜。一度退くぞ」
さつきは、そう小声で指示を出した。
目的の情報は得られた。これ以上、深入りするのは危険だと判断したのだ。三人は、音もなく蔵を後にし、夜の闇へと溶け込んでいった。
異人街の蔵で目にした光景は、さつきの胸に新たな疑念を抱かせた。
南蛮渡りの珍しい金属、それを集める朧衆、そして彼らが企む「儀式」。それは、綾小路家を滅ぼした黒幕の陰謀が、京を越え、異国の技術をも巻き込みながら、さらに拡大していることを示唆していた。
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