黄昏の国家

旅里 茂

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準政府組織-始まり

黄昏の国家01

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 リニアモーターカーが日本全国に網羅されてから、十数年が経過した。
様々な問題を抱えていた事案も大幅に解決策を見出すことに成功し始めた、西暦2057年の事である。
しかし幾度もの内閣編成による矛盾した政府の方針に、デモを殆どしない日本国民も不満要素が溜まり続けていた。
そんな情勢を見ていた自政党の幹事長、角安敬はある思いを秘めていた。
それは、現政府組織をサポートし、更には重要事項に介入出来る組織。
準日本政府組織の内幕であった。
まず、角安はパイプのある超党派の議員に表向きの話を展開し根回しをした。
その間、密かに集めていた人材を展開して、下地を作っていたのだ。
そして、世界で初となる準政府組織を誕生させた。
一部、それらに対する批判・反芻が起きたが、それらは力で抑えた。
角安は、腹心である高沢健司に、中央司令部となる場所を得る様に命令を下した。
高沢はまず、関西方面に大型のフロート、ビックワンを建造することを提案した。
大手ゼネコン数社にそれぞれ担当を配置し、極めて生産的な処理を行う事に成功した。
まず、神戸空港沖合50Kmに全長50Km、幅7Kmの広大なフロート・ビッグワンの建造に取り掛かる。
当初、地元にこの話が出た際に、説明会を行ったが殆どの人は反対の立場を取った。
まず一番の理由は、漁業範囲の萎縮がもたらすのが許容出来ないとの事だったが、フロートには階層が何層にもなり、自然に近い養殖体制を取る、その取り分を毎年漁業組合を通して、漁師の取り分として支払いを行うという。
この話をまともに聞くものは少なかったが、初期の段階で完成するまでの間、年間の支払いは保証するとの事で折り合いが何とかついたのである。
二つ目に問題提起した組合会長の意見として、海洋汚染が起きるのではないか、という事だった。
これにおいても、高沢本人が説明に当たって、見事に収めて見せた。
但し、資本が何処から出るのか?それはある特殊な方法にて、海水から石油成分と殆ど変わらない物資を取り出す事に成功していた事実に元ずく。
最初の一年間は、騒ぎが大きくならないよう日本政府にも箝口令を敷いて貰っていた。
角安は理工学や化学分野に堪能な人材を議員になってから、高沢たちに指示し召集させていた。
議員報酬とは別に、船舶事業を展開している叔父から、融資を受けていた。
そして時を見計らって、海水製油式をTVで大いに宣伝したのだった。
これには、中東の石油国から可成りの嫌がらせがあったが、角安は動じなかった。
一刻も早くビッグ・ワンの取り組みに掛かりたかったのだ。
状況としては、角安に追い風が吹いた。
自政党党首である、中越勇作が全面的に応援する旨を伝えてきた。
それには、やはり製油における利権を求めての事である。
これは表向きには絶対に隠し通さなければならない。
高沢は次の段階に入る事を、角安に通達した。
海は限りない資源である。
そこで塩水である海水から小型プラントによる、純水を取り出す方法も確立した。
これを元にアフリカ諸国や中東国家に割安で貸し出す事業も手掛けた。
アメリカがこの事業に際し、国際的に展開するべきだという横やりが入った。
要は、自国も手伝うので利権とそのシステムの仕組みを出せとの事だ。
だが、高沢率いるブレーンは、巧にそれらを拒否する方針を打ち立てた。
アメリカとしては面白くなく、関税を強化する旨を中越総理に直接迫ったが、あくまでも強固に立つ日本政府に腰をおったのである。
その内訳として、アメリカが開発した最新鋭戦闘機、F-37ステルスを大量に購入する事で手打ちにしたのだった。
現に2027年に日本政府は、念願の純国産のF-3を完成させていた。
当初は幾つかの不具合が見つかったが、ラプターにも勝る性能を発揮した。
そこへアメリカの最新鋭を200機購入という事態に、一斉に野党が反発した。
野党だけでなく、中越総理と角安の内情を知らぬ与党の一部も反発した。
しかし、これは計算のうちで痛くも痒くもなく、強制的にそれを押し通した。
やがて神戸空港沖に建造されている大型フロートビッグ・ワンに許可を得たドローンで撮影を行う報道機関が一面トップで伝えた。
アメリカは戦闘機の購入というビッグイベントを受けた事で、これには目を瞑る形となった。
騒いだのは日本周辺国であった。
まずは中華人民共和国である。兵器工場ではないかとの疑念を持ったが、実際にはそうであるのだが、まだ披露するわけにはいかない。
また大韓民国も軍国主義の復活の象徴と騒ぎ立てた。
但し、かつての政府ではなく、それらを全て内政干渉であると突っぱねた。
角安の見据える計略は、ビッグ・ワンだけで終わらすわけではない。
日本列島のシーレーンの形に添って、これらを大型フロートを幾つも建造することにあった。今はその第一段階なのである。
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