黄昏の国家

旅里 茂

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破壊の序章

黄昏の国家11

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これは、殆どの人が、ビジョノートにて直接意識に通知される。
緊迫の三日間が動き出した。
日本海上で、電子戦を行い、中国・ロシア・アメリカが日本と同時に探り合う。
サキナが予見した、或いは未来を察知した事が、現実に起こるのか、いささか信じきれないスタッフも多いが、高沢はそれを最終的に信用した。
ことが起こらないのが一番良いのだが、不安定要素を含んだ領域では突然、何が起きるか分からないのが現状だ。
残り時間まで二日と十四時間程。中国と北朝鮮の動きは、日本の軍事衛星にて監視しているが、表立った動きがない。
移動式の弾道ミサイルならば即座に感知出来るが、原子力潜水艦からの発射では確認までに時間を要する。
ロシア軍はTu270A電子偵察機が日本海上に展開、アメリカ軍の電子偵察機RC175Tとの情報合戦の様相を呈した。
日本軍はEP10電子偵察機とF3戦闘機、早期警戒探索機を展開、海上自衛軍ではイージス艦と巡洋艦を展開中である。
防衛ビッグ・マーカーにて指揮を執る、沢田有樹なる人物が統括している。
高沢は今回の件をギークたちに任せると伝えたが、沢田は一番に異論を唱えた人物である。
「リュクスタ、この件においては私は反対です。たかが子供の意見に大人が…。しかも日本政府まで巻き込んで、どうなさるんですか?」
沢田は歯に衣をつけて喋る男ではない。言いたいことはハッキリと伝える。
「まぁ、まて、沢田。もし、万が一にも核弾頭が打たれて何も手を打たなければおしまいだ。私はギークたちを信頼している」
沢田は電子ノートを取り出し、今までの中国・北朝鮮の動向を精査している。
その流れは依然と何ら変わりは無かった。
それだけではない。現状、中国共産党が弱体化して民主改革党という政党が誕生している。一昔前の事なら考えられぬことだ。
そして北朝鮮はトップ集団が瓦解して、今はその中国共産党の傀儡となっている。
そんな状態である両国が、今更、日本に核を打ち込む意図が分からない。
高沢もそんな沢田の言い分も分かるのだが、ギークであるサキナたちの言葉が偽りだとは到底思えなかったのだ。
防衛ビッグ・マーカーの受信ファルドが北朝鮮のものと思われる短波を受信した。
これも定期的に流れる。暗号化はされており、2025年のスパイ防止法が施行されてからは、日本国内に居るスパイを検挙してきた。
但し、今回受信した暗号文はいつもと違っていた。
まだ潜んでいると思われるスパイに、近畿圏から離れろとの内容だった。
暗号化はとうに解読されている。それは内外に喧伝していない。
状況が一変し、新たな暗号解読に腐心するからだ。
しかしながらこの一連の暗号を解釈してみると、近畿圏に危機が迫っていることを示唆していないか。
もしそうだとすれば、やはり核の脅威は迫っているのではないか。
やがて夕刻になり、本土の船着き場と街を覗けば、美しい夜景が浮かび上がってくる。
”平和”というキーワード。
これが如何に尊いか、それだけで心が落ち着く。
だが、戦火に晒されれば、一瞬にして美しさは消え去る。
その瞬間、ちらっと大きな炎が上がるような動作が見えた。なんだ?
その時、ビジョノートに緊急連絡が入った。「リュクスタ、こちら防災総合管理室です。現在、神戸三宮一番街にて大規模な火災が発生。爆発を伴っています」
まさか、核と見せかけて周囲を混乱させる為の大規模なテロ行為か?
そう感潜ったが、現状可成りの範囲で猛火に包まれている模様、との事だ。
高沢は直ぐに、防災総合管理室に防災消化ヘリの出動を全ての権限を超えて指示を出した。
ビッグ・ワンに整備されている防災消化ヘリは全部で百三十機。
五分後、第一陣が飛び立った。
先に情報監視部が飛ばした情報収集ヘリにより映像が入った。
現場の壮絶な被害が、見るに耐えかねる状況だと報じた。
多くの犠牲者が出ている。これがそうなのか。おかしい、これはサキナが予見した内容ではない。
ではこの混乱はなんだ。高沢は直ぐにサキナとの連絡を取った。
「違うわ。これは陽動よ」サキナは冷静に喋っている。
「では、この件も予見していたのか?」
サキナは一呼吸置いて答えた。「ええ、でも、核ならその比ではないわ。仮に今の状況を伝えたとして、テロの犯人までは判断出来ないわ」
そうかも知れぬ。しかし、言いようのない怒りが込み上げてくる。
「サキナ!君は人死にする状況を見逃した!その責任は大きいぞ!」
しかし、それは高沢の本音ではない。怒りのぶつけ処が違うのだ。
判っている、しかし、今は冷静になれない。
「私だって辛い。でも、どうしようもないわ。今はこれ以上の被害が出ないことを祈るだけ…」
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