28 / 53
フェアリーの告白
しおりを挟む
たったあれだけの言葉で、つまり「その逆だよ」と言っただけで、それ以来海斗の態度がガラリと変わった。
例えば、家の廊下ですれ違う時、岳斗が、手が触れただけで過剰反応すると、今までは悲しそうな雰囲気を醸し出していたのに、今度はむしろもっと触るというか、手を握ってくる。また、食事の時、岳斗が目を合わせないようにしているのに、海斗はじーっと岳斗の方を見てくる。岳斗がチラッと海斗の顔を見た時に目が合うと、ニヤっと笑う。そして、岳斗が自分の部屋へ戻ろうとする時、部屋の前で海斗は岳斗を捕まえて、壁ドンしてくる。心臓に悪い。岳斗は悲鳴を上げる一歩手前で声を押し殺し、すり抜けて部屋に閉じこもるのだ。家が一瞬にしてテーマパークと化したようだ、と岳斗は思った。ドキドキワクワクの連続。だが、前のようにハグしたり、頭を撫でたりはして来ない海斗。不思議だった。
岳斗が部活中に一人でトレーニングをしていると、ランニングをしている前園に会った。
「あ、こんにちは。」
岳斗が挨拶をすると、前園は走るのをやめ、岳斗と一緒に歩き始めた。
「あーあ、とうとう君に取られちゃったな。」
などと言う。
「はい?」
岳斗が聞き返すと、歩きながら前園が言う。
「私ね、城崎に告白したんだ。インターハイを前にして、ちょっとナーバスになってたのかな。急に当たって砕けろって思って。」
岳斗は驚いた。海斗と前園は友達として仲が良いのだと思っていたから。
「私がさ、付き合わない?って言ったら、あいつ、ごめん、俺好きな人がいるからって、即断るんだよー。参ったよ。でもさ、好きな人がいるって事は、まだ付き合ってないって事じゃない?あいつに、告白しないのかって聞いたら、好きだとは何度も言ってるけど、本気にしてくれないんだって言うのよ。それで、ピント来たのよねー。相手はあなただって。」
岳斗は立ち止まった。前園も立ち止まる。
「二人はさ、子供の頃からずっと一緒にいるわけでしょ。だから、なかなか恋愛感情に気づきにくいと思うんだよね。城崎はどうして気づいたのかを聞いたら、あなたに彼女ができて嫉妬したのがきっかけだって言うから、それなら、今度は城崎が嫉妬させてやれば、あなたも自分の気持ちに気づいてくれるんじゃないかって提案したわけ。」
それで、偽の彼女になったというわけだ。
「でも、全然上手く行かないって、城崎いっつも嘆いてたよ。あいつが恋愛で自信無くすとか、一生ないだろうと思っていたのにさ、笑っちゃうよね。俺の事好きじゃないのかなってさ。私はもう幻滅よ。……ああ、うそうそ。いくら城崎ほどのモテる男だとしても、あなたが女の子の方がいいという事は十分考えられるわけだし、そうしたら、まだ私にもチャンスあるかなーとか思っていたわけよ。でも。」
前園は、言葉を切って岳斗の顔をじっと見た。岳斗は緊張した。
「兄貴、何か言ったんですか?」
「何も言わないけどね、この間まで落ち込んでた人が、急にキラキラ輝き出したからねー。分かり安いったら。すっかり両想いなの?」
「えっと、その、俺は、まだ……よく分からなくて。」
「そっか。君、この間まで城崎と本当の兄弟だと思ってたんでしょ?そりゃ無理もないよね。でも、城崎にとっては、ずっとあなたは弟じゃなかったのよね。守ってあげなきゃって、小さい時からそう思って来たって言ってたわよ。ま、時間をかけてもいいんじゃない?あーでも、あんまり悠長に構えてると、誰かに城崎を取られちゃうかもしれないよ。わ、た、し、とか。」
前園はウインクをして、そして走り去って行った。やっぱり美人だよな、と岳斗は思った。性格はまあ、見た目とのギャップがあるけれど。だが、意外にサバサバしていて、海斗がアスリート同士仲良くする間柄だったというのも分かる気がした。しかし、これからは仲良くしてもらいたくない、と思う。なぜなら、明らかに前園は海斗を狙っているではないか。そう、海斗の事を狙っている人はたくさんいる。岳斗が避けている間に、誰かに取られてしまう可能性は大いにあるのだ。
例えば、家の廊下ですれ違う時、岳斗が、手が触れただけで過剰反応すると、今までは悲しそうな雰囲気を醸し出していたのに、今度はむしろもっと触るというか、手を握ってくる。また、食事の時、岳斗が目を合わせないようにしているのに、海斗はじーっと岳斗の方を見てくる。岳斗がチラッと海斗の顔を見た時に目が合うと、ニヤっと笑う。そして、岳斗が自分の部屋へ戻ろうとする時、部屋の前で海斗は岳斗を捕まえて、壁ドンしてくる。心臓に悪い。岳斗は悲鳴を上げる一歩手前で声を押し殺し、すり抜けて部屋に閉じこもるのだ。家が一瞬にしてテーマパークと化したようだ、と岳斗は思った。ドキドキワクワクの連続。だが、前のようにハグしたり、頭を撫でたりはして来ない海斗。不思議だった。
岳斗が部活中に一人でトレーニングをしていると、ランニングをしている前園に会った。
「あ、こんにちは。」
岳斗が挨拶をすると、前園は走るのをやめ、岳斗と一緒に歩き始めた。
「あーあ、とうとう君に取られちゃったな。」
などと言う。
「はい?」
岳斗が聞き返すと、歩きながら前園が言う。
「私ね、城崎に告白したんだ。インターハイを前にして、ちょっとナーバスになってたのかな。急に当たって砕けろって思って。」
岳斗は驚いた。海斗と前園は友達として仲が良いのだと思っていたから。
「私がさ、付き合わない?って言ったら、あいつ、ごめん、俺好きな人がいるからって、即断るんだよー。参ったよ。でもさ、好きな人がいるって事は、まだ付き合ってないって事じゃない?あいつに、告白しないのかって聞いたら、好きだとは何度も言ってるけど、本気にしてくれないんだって言うのよ。それで、ピント来たのよねー。相手はあなただって。」
岳斗は立ち止まった。前園も立ち止まる。
「二人はさ、子供の頃からずっと一緒にいるわけでしょ。だから、なかなか恋愛感情に気づきにくいと思うんだよね。城崎はどうして気づいたのかを聞いたら、あなたに彼女ができて嫉妬したのがきっかけだって言うから、それなら、今度は城崎が嫉妬させてやれば、あなたも自分の気持ちに気づいてくれるんじゃないかって提案したわけ。」
それで、偽の彼女になったというわけだ。
「でも、全然上手く行かないって、城崎いっつも嘆いてたよ。あいつが恋愛で自信無くすとか、一生ないだろうと思っていたのにさ、笑っちゃうよね。俺の事好きじゃないのかなってさ。私はもう幻滅よ。……ああ、うそうそ。いくら城崎ほどのモテる男だとしても、あなたが女の子の方がいいという事は十分考えられるわけだし、そうしたら、まだ私にもチャンスあるかなーとか思っていたわけよ。でも。」
前園は、言葉を切って岳斗の顔をじっと見た。岳斗は緊張した。
「兄貴、何か言ったんですか?」
「何も言わないけどね、この間まで落ち込んでた人が、急にキラキラ輝き出したからねー。分かり安いったら。すっかり両想いなの?」
「えっと、その、俺は、まだ……よく分からなくて。」
「そっか。君、この間まで城崎と本当の兄弟だと思ってたんでしょ?そりゃ無理もないよね。でも、城崎にとっては、ずっとあなたは弟じゃなかったのよね。守ってあげなきゃって、小さい時からそう思って来たって言ってたわよ。ま、時間をかけてもいいんじゃない?あーでも、あんまり悠長に構えてると、誰かに城崎を取られちゃうかもしれないよ。わ、た、し、とか。」
前園はウインクをして、そして走り去って行った。やっぱり美人だよな、と岳斗は思った。性格はまあ、見た目とのギャップがあるけれど。だが、意外にサバサバしていて、海斗がアスリート同士仲良くする間柄だったというのも分かる気がした。しかし、これからは仲良くしてもらいたくない、と思う。なぜなら、明らかに前園は海斗を狙っているではないか。そう、海斗の事を狙っている人はたくさんいる。岳斗が避けている間に、誰かに取られてしまう可能性は大いにあるのだ。
148
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる