37 / 53
元日
しおりを挟む
正月も、坂上は仕事だった。なので、岳斗は例年通り、城崎の家族と共に初詣に行き、親戚の家を回った。隆二の運転する車に乗り、後部座席に海斗と岳斗が二人で乗る。バックミラー越しに見られている気がして、あまりくっついて座るのは気が引けた。
こうしていると、岳斗には一年前と何も変わらないように思えた。親戚には岳斗が引っ越した事も、海斗との関係が変わった事も、もちろん話していない。いつも通り新年の挨拶をして、お年玉をもらった。親戚の家を回った後、車に乗っていると海斗が眠った。海斗はだいたいいつも無理をしているので、車に乗るとすぐに眠ってしまう。今日はここまで眠らなかったのが珍しいくらいだった。
海斗ははじめ、シートに上向きに寝ていたが、車が揺れて岳斗の肩に頭が乗った。バックミラーから見られる、と岳斗は思ったが、出来ればこのままにしておきたいと、とっさに岳斗も眠ったフリをした。海斗の方に頭を寄りかからせる。目を閉じていると、眠っているのか眠っていないのか、自分でも分からないような不思議な感覚に陥った。
「寝ちゃったわね。」
洋子が話しているのが、岳斗にも何となく聞こえた。
「出来ればずっと、こうしていたかったのになあ。」
隆二が言う。更に、
「何を間違ってしまったんだろうな。」
とも言った。
「間違えたわけではないわ。うちで引き取る前から、あの二人は魅かれ合っていたもの。もし岳斗を引き取らなかったとしても、いずれこうなる運命だったのよ。」
洋子が言った。
運命……。母親同士が親友だった事、その母親同士が出会ったのも、運命のなせる業なのか。岳斗が目を閉じて考えていると、海斗の手がダランと落ちてきて、岳斗の手に当たった。そうしたら、そのまま岳斗の手を握るではないか。こいつ起きてるな、と岳斗は思った。だが、岳斗もそのまま眠っているフリを続けた。
岳斗は家の前まで送ってもらい、三人に別れを告げた。アパートの灯りが点いていた。岳斗はお土産におせち料理をもらって、家の中に入った。殺風景な部屋。小さいテレビを見ながら、坂上が酒を飲んでいた。おせち料理をちゃぶ台に乗せると、
「お、有難い。」
と言って、坂上が手づかみで一つつまんで口に入れる。
泣くな、と自分を鼓舞しつつ、岳斗は端っこの壁に寄りかかって、スマホを眺めた。
こうしていると、岳斗には一年前と何も変わらないように思えた。親戚には岳斗が引っ越した事も、海斗との関係が変わった事も、もちろん話していない。いつも通り新年の挨拶をして、お年玉をもらった。親戚の家を回った後、車に乗っていると海斗が眠った。海斗はだいたいいつも無理をしているので、車に乗るとすぐに眠ってしまう。今日はここまで眠らなかったのが珍しいくらいだった。
海斗ははじめ、シートに上向きに寝ていたが、車が揺れて岳斗の肩に頭が乗った。バックミラーから見られる、と岳斗は思ったが、出来ればこのままにしておきたいと、とっさに岳斗も眠ったフリをした。海斗の方に頭を寄りかからせる。目を閉じていると、眠っているのか眠っていないのか、自分でも分からないような不思議な感覚に陥った。
「寝ちゃったわね。」
洋子が話しているのが、岳斗にも何となく聞こえた。
「出来ればずっと、こうしていたかったのになあ。」
隆二が言う。更に、
「何を間違ってしまったんだろうな。」
とも言った。
「間違えたわけではないわ。うちで引き取る前から、あの二人は魅かれ合っていたもの。もし岳斗を引き取らなかったとしても、いずれこうなる運命だったのよ。」
洋子が言った。
運命……。母親同士が親友だった事、その母親同士が出会ったのも、運命のなせる業なのか。岳斗が目を閉じて考えていると、海斗の手がダランと落ちてきて、岳斗の手に当たった。そうしたら、そのまま岳斗の手を握るではないか。こいつ起きてるな、と岳斗は思った。だが、岳斗もそのまま眠っているフリを続けた。
岳斗は家の前まで送ってもらい、三人に別れを告げた。アパートの灯りが点いていた。岳斗はお土産におせち料理をもらって、家の中に入った。殺風景な部屋。小さいテレビを見ながら、坂上が酒を飲んでいた。おせち料理をちゃぶ台に乗せると、
「お、有難い。」
と言って、坂上が手づかみで一つつまんで口に入れる。
泣くな、と自分を鼓舞しつつ、岳斗は端っこの壁に寄りかかって、スマホを眺めた。
124
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。
真面目学級委員がファッティ男子を徹底管理した結果⁉
小池 月
BL
☆ファッティ高校生男子<酒井俊>×几帳面しっかり者高校男子<風見凛太朗>のダイエットBL☆
晴青高校二年五組の風見凛太朗は、初めて任された学級委員の仕事を責任を持ってこなすために日々頑張っている。
そんなある日、ホームルームで「若者のメタボ」を注意喚起するプリントが配られた。するとクラス内に「これって酒井の事じゃん」と嘲笑が起きる。
クラスで一番のメタボ男子(ファッティ男子)である酒井俊は気にした風でもないが、これがイジメに発展するのではないかと心配する凛太朗は、彼のダイエットを手伝う決意をする。だが、どうやら酒井が太っているのには事情がありーー。
高校生活の貴重なひと時の中に、自分を変える出会いがある。輝く高校青春BL☆
青春BLカップ参加作品です!ぜひお読みくださいませ(^^♪
お気に入り登録・感想・イイネ・投票(BETボタンをポチ)などの応援をいただけると大変嬉しいです。
9/7番外編完結しました☆
【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる