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北海道
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「気を付けてね。ああ、母さん寂しいわ。」
「母さん、四年後にはまた帰って来るから。そうしたら、それからはずっと一緒だよ。」
岳斗は羽田空港にいた。三月下旬。いよいよ大学に進学するのだ。春休みに帰ってきていた海斗と共に、これから北海道へ出発する岳斗である。
「夏休みには帰ってきてね。」
「もちろんだよ。海斗と一緒に帰るから。」
洋子を置いて行くのが忍びなく、何度も後ろを振り返ってしまう岳斗。涙が出そうだった。こうやって、海斗と岳斗が二人で行ってしまうのは、洋子にとってつらく寂しい事この上ないだろう、と岳斗は想像してしまうのだった。
飛行機に乗ると、隣に座った海斗は、岳斗の感傷的な気分とは対照的に、ルンルン気分丸出しだった。
「あー、一年長かったー。いよいよ二人で暮らせるんだなー。」
しまりの悪い顔。しかし、そんな顔でさえ、どうしてこうもかっこいいのだろうか、と岳斗は思った。あちこちから視線が送られてくる。老若男女問わず。
剣星大学北海道キャンパスは、旭川市にある。岳斗たちは羽田空港から、旭川空港へ飛び立った。旭川空港に到着し、バスで旭川駅近くにある、海斗の下宿先へ向かった。下宿先は、比較的新しいアパートで、ワンルームだが割と広く、バストイレ付。キングサイズベッドとダイニングテーブルに椅子が二脚。ちゃんと二人で暮らせるようになっていた。
「岳斗、ようこそ我が家へ。」
部屋に着くと、海斗はそう言って岳斗を抱きしめた。
「やっと、こういう事が出来る。これからはいつも出来るんだなあ。感激。」
海斗は岳斗の頭をぐりぐりと撫でた。
夜になって、海斗が岳斗を飲食店に誘った。友達に岳斗を紹介すると言う。海斗が普段バイトをしているイタリアンの店だ。
二人で店に入っていくと、奥のテーブル席から
「海斗、こっち!」
と呼ぶ声がした。既に海斗の友達が来ていて、岳斗たちはそのテーブルへ向かった。そこには、旅行の写真に写っていたと思われる面々がいた。あの髪の長い美人も。
「お待たせ。えー、これが、俺の弟。岳斗。」
やっぱり“弟”か、と岳斗は一発目から打ちのめされた。胸の奥にズンと重たいものが落ちる。だが、考えてみたら自分も、友達に海斗を紹介する時には、まずは兄貴だと言うだろう、と思い直した。まさか、いきなり彼氏や恋人だ、などとは紹介しないはずだ。だからこれはいいのだ。しょうがないのだ、と自分に言い聞かせた。
「どうも。」
岳斗がそう言ってちょっと頭を下げると、
「よろしくねー!」
と、海斗の友達の面々がそれぞれ言った。
「岳斗、紹介するな。慎二、圭介、凛太朗、葵だ。」
海斗が指をさしながら、岳斗に友達を紹介した。ずいぶんとざっくばらんな紹介だ。あの髪の長い美人は葵さんか、と岳斗は思った。彼女は穏やかに笑っている。
それから、皆で夕飯を食べた。皆いい人だ、と岳斗は思った。海斗がトイレに立った時、皆が一斉に岳斗の方へ顔を寄せた。
「ねえ、岳斗くん。海斗の恋人ってどんな人なの?」
葵が小声で岳斗にそう聞いた。
「え?」
皆が岳斗に注目する。
「月一で強硬帰省してたからさ、恋人がいるに違いないと思ってるんだけど、どんな人なのか全然教えてくれないんだよ。写真とかないの?」
慎二がそう言った。
「えーと……。」
岳斗が答えに詰まっていると、
「みんなして何の相談?」
いきなり海斗の声がした。いつの間にか、海斗が皆と同じように顔を寄せていた。
「うわっ!お前、びっくりするだろ。」
慎二が言った。
「何だよ。」
海斗が言うと、
「だいたいお前は、この小さな町には無駄に顔が良すぎるんだよ。」
慎二は元都民だった。付属校出身ではないが。道民にとっては、旭川は小さな町ではないのでは、と思う岳斗だった。因みに、慎二以外は全員道民だった。
そうして、その話題は立ち消えになった。岳斗は内心、胸を撫でおろした。
海斗と岳斗の家に、二人は帰って来た。岳斗は、急に喜びが溢れた。自分と、海斗の家。嬉しさが止まらない。
「何ニヤニヤしてんだ?」
岳斗が先にシャワーを使い、ベッドの片側に寝そべっていると、後からシャワーを浴びた海斗が岳斗の顔を覗き込んだ。
「いや、なんか嬉しいなーと思って。やっと一緒に住めるようになって。」
「今更かよ。」
「やっと実感が湧いたというか。」
海斗はふっと笑った。それにしても、今日は移動と引っ越しとで疲れた岳斗である。
「ふあぁ、このベッド気持ちいいね。それに、久しぶりに広々と海斗と一緒に寝られる。」
岳斗は、隣にいる海斗の顔を見ながら、もう目が閉じかけていた。
「よしよし、今日は疲れただろ。ゆっくりお休み。」
海斗が岳斗の頭を撫でた。そして、岳斗はすぐに眠りについた。
「母さん、四年後にはまた帰って来るから。そうしたら、それからはずっと一緒だよ。」
岳斗は羽田空港にいた。三月下旬。いよいよ大学に進学するのだ。春休みに帰ってきていた海斗と共に、これから北海道へ出発する岳斗である。
「夏休みには帰ってきてね。」
「もちろんだよ。海斗と一緒に帰るから。」
洋子を置いて行くのが忍びなく、何度も後ろを振り返ってしまう岳斗。涙が出そうだった。こうやって、海斗と岳斗が二人で行ってしまうのは、洋子にとってつらく寂しい事この上ないだろう、と岳斗は想像してしまうのだった。
飛行機に乗ると、隣に座った海斗は、岳斗の感傷的な気分とは対照的に、ルンルン気分丸出しだった。
「あー、一年長かったー。いよいよ二人で暮らせるんだなー。」
しまりの悪い顔。しかし、そんな顔でさえ、どうしてこうもかっこいいのだろうか、と岳斗は思った。あちこちから視線が送られてくる。老若男女問わず。
剣星大学北海道キャンパスは、旭川市にある。岳斗たちは羽田空港から、旭川空港へ飛び立った。旭川空港に到着し、バスで旭川駅近くにある、海斗の下宿先へ向かった。下宿先は、比較的新しいアパートで、ワンルームだが割と広く、バストイレ付。キングサイズベッドとダイニングテーブルに椅子が二脚。ちゃんと二人で暮らせるようになっていた。
「岳斗、ようこそ我が家へ。」
部屋に着くと、海斗はそう言って岳斗を抱きしめた。
「やっと、こういう事が出来る。これからはいつも出来るんだなあ。感激。」
海斗は岳斗の頭をぐりぐりと撫でた。
夜になって、海斗が岳斗を飲食店に誘った。友達に岳斗を紹介すると言う。海斗が普段バイトをしているイタリアンの店だ。
二人で店に入っていくと、奥のテーブル席から
「海斗、こっち!」
と呼ぶ声がした。既に海斗の友達が来ていて、岳斗たちはそのテーブルへ向かった。そこには、旅行の写真に写っていたと思われる面々がいた。あの髪の長い美人も。
「お待たせ。えー、これが、俺の弟。岳斗。」
やっぱり“弟”か、と岳斗は一発目から打ちのめされた。胸の奥にズンと重たいものが落ちる。だが、考えてみたら自分も、友達に海斗を紹介する時には、まずは兄貴だと言うだろう、と思い直した。まさか、いきなり彼氏や恋人だ、などとは紹介しないはずだ。だからこれはいいのだ。しょうがないのだ、と自分に言い聞かせた。
「どうも。」
岳斗がそう言ってちょっと頭を下げると、
「よろしくねー!」
と、海斗の友達の面々がそれぞれ言った。
「岳斗、紹介するな。慎二、圭介、凛太朗、葵だ。」
海斗が指をさしながら、岳斗に友達を紹介した。ずいぶんとざっくばらんな紹介だ。あの髪の長い美人は葵さんか、と岳斗は思った。彼女は穏やかに笑っている。
それから、皆で夕飯を食べた。皆いい人だ、と岳斗は思った。海斗がトイレに立った時、皆が一斉に岳斗の方へ顔を寄せた。
「ねえ、岳斗くん。海斗の恋人ってどんな人なの?」
葵が小声で岳斗にそう聞いた。
「え?」
皆が岳斗に注目する。
「月一で強硬帰省してたからさ、恋人がいるに違いないと思ってるんだけど、どんな人なのか全然教えてくれないんだよ。写真とかないの?」
慎二がそう言った。
「えーと……。」
岳斗が答えに詰まっていると、
「みんなして何の相談?」
いきなり海斗の声がした。いつの間にか、海斗が皆と同じように顔を寄せていた。
「うわっ!お前、びっくりするだろ。」
慎二が言った。
「何だよ。」
海斗が言うと、
「だいたいお前は、この小さな町には無駄に顔が良すぎるんだよ。」
慎二は元都民だった。付属校出身ではないが。道民にとっては、旭川は小さな町ではないのでは、と思う岳斗だった。因みに、慎二以外は全員道民だった。
そうして、その話題は立ち消えになった。岳斗は内心、胸を撫でおろした。
海斗と岳斗の家に、二人は帰って来た。岳斗は、急に喜びが溢れた。自分と、海斗の家。嬉しさが止まらない。
「何ニヤニヤしてんだ?」
岳斗が先にシャワーを使い、ベッドの片側に寝そべっていると、後からシャワーを浴びた海斗が岳斗の顔を覗き込んだ。
「いや、なんか嬉しいなーと思って。やっと一緒に住めるようになって。」
「今更かよ。」
「やっと実感が湧いたというか。」
海斗はふっと笑った。それにしても、今日は移動と引っ越しとで疲れた岳斗である。
「ふあぁ、このベッド気持ちいいね。それに、久しぶりに広々と海斗と一緒に寝られる。」
岳斗は、隣にいる海斗の顔を見ながら、もう目が閉じかけていた。
「よしよし、今日は疲れただろ。ゆっくりお休み。」
海斗が岳斗の頭を撫でた。そして、岳斗はすぐに眠りについた。
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