イケメン幼馴染に執着されるSub

ひな

文字の大きさ
110 / 132
夢物語(雄斗)

6

しおりを挟む




「………ママを本当に殺すの?」

「…………」

「良いわね……その瞳……パパとそっくり。」

「父さんと、同じね……」

「ええ。覚悟が決まっていてとっても素敵よ。」



覚悟なんてない。

本当は、生きたい心を殺しているだけだ。


「でも……パパも優柔不断だったわね。」

「だから母さんのせいで自殺したんだろ。」

「あら……ふふっ……。」


やめろ


笑うな


「覚えてる?パパの自殺現場。麻耶ってば泣いて大変だったわよね……それに対して雄斗は泣かないし肝が座っていて……その強さはママに似たのね。」


父さんの自殺。


今でも鮮明に覚えている。


その日は父さんと母さんが大喧嘩をしていた。


普段、優しい父さんは珍しく母さんを睨んでいた。


怖くなった俺と麻耶は自分の部屋へ戻り、寝る準備をしていた。


夜遅くに、母さんが部屋に入ってきた。


おいで、と普段よりも優しい声でそう言うから何かあるのかと思い俺と麻耶も走って部屋へ向かった。


部屋にあったのは父さんの死体だった。


見た途端に、首吊りだと分かった俺は体が動かなくて、麻耶が泣いていることにも気づけなかった。


泣いてる麻耶を叱っている母さんが怖くて、俺は父さんのことで泣かないように頑張っていた。


(父さんそっくりの”覚悟”………)



「………母さんが言う”覚悟”は死ぬ覚悟だろ。」


「…………」





この人は、まだ気づいていない。



「母さんには死ぬ覚悟がない。だから、泣いているんだよね。」




灯油を撒いていた時も

火を付けた時


自分が殺されることに気づいた時だって、ずっと母さんは涙を流している。


「………あれ?……ふふ、気づかなかった。やっぱり、私に似た子供なんて誰もいない。全員パパ似ね。」

母さんは涙を拭き、俺に近づく。


「………覚悟は決まっているわ。」

「…………」

「だって……ママがぜーんぶ悪いんでしょ?」


「何で、悪いのか分かってる?」


最後の確認。


父さんの死因、麻耶の死因、これを掴んでいるのは母さんのはずだ。


「…………うーん……」


口元を手で押さえながら、必死に考えている。


酷く落ち着いた、優しい声で母さんは俺の想像通りに期待を裏切る。


「わかんない。」




「…………」


返事をする気もない。


俺よりも汚れた、人間じゃない母さんを俺は簡単に殺せる。




良かった。



此奴が人じゃないことを確認できて。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

処理中です...