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夢物語(雄斗)
夢物語
しおりを挟むあの日
俺は目の前が暗くなった。
俺が、助けられたかもしれない麻耶を殺した。
(麻耶は、最期までふーくんしか見ていなかったな……)
麻耶が亡くなった後にふーくんは入院した。
ふーくんのことは勿論心配だった。
だけど、俺は麻耶が亡くなった悲しみに暮れて部屋に閉じこもる生活が続いた。
そんなある日
麻耶の葬式の日に、ふーくんに会えた。
元気そうなふーくんを見れてすごく安心した。
俺はふーくんに話しかけてみた。
他愛のない話をふーくんに切り出してみた。
だけど、ふーくんからこんな言葉が返ってきた。
“「誰のお葬式なの?」”
耳から離れない。
頭から、離れない。
(……”誰の”って……)
「……麻耶の葬式だよ。」
俺は静かにそう告げる。
ふーくんの顔が見れない俺は別の方向に目を移す。
(ふーくんの父親は知らない人の母親と何か話している…)
あそこも空気が悪い。
だからかな……息がしづらい。
まさか、
麻耶を忘れたのか……?
「……如何して、何も返事してくれないの?」
恐る恐る、俺はそう聞いてみる。
だけど、ふーくんは残酷にもこう告げた。
「……ごめん、まや……?って……誰だっけ。」
「……え」
何も考えられなかった。
火事のショックか、麻耶を亡くしたショックか。
(麻耶を……忘れた……?)
忘れてくれた。
「……”ゆうとくん”は、まやの友達なの?」
(……”ゆうとくん”………?)
「なにそれ……なんで、”ゆうとくん”なんて言うの……?」
「……?」
ふーくんはポカンとしている。
「確かに……なんでだろ……おかしいよね、雄斗。」
戻った。
(如何ことだ……?)
………俺のことも、忘れようとしてた………?
「……俺のこと、誰だか分かるよね?」
「うん、おれの友達だろ。」
「……じゃあさ、火事が起こった日って何してたか覚えてる?」
「……火事?」
うーん、うーん、と唸り声を上げながらふーくんは考えている。
「風、そろそろ行くよ。」
ふーくんの父親がそう言い、俺とふーくんの会話は遮断された。
ふーくんの父親と話してたおばさんは、なんかすごい震えてる。
(……如何でもいいけど。)
でも、判ったことがある。
ふーくんは、火事のことを忘れたんだ。
麻耶が死んだ日のことだけ、記憶に穴が空いたんだ。
(……これで、ふーくんを独り占めできる。)
やっと、邪魔者がいないなる。
麻耶が死んで悲しかったことが嘘みたいだ。
これからは俺が守るし、俺のことしか考えられないようにしていきたい。
Universeの検査もして、どんな形であれ関係を築いてやる。
麻耶を殺した罪悪感、俺の憎しみ、全部……
他の奴らを忘れても、俺だけを忘れないようにふーくんを愛してあげる。
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