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隼人(梶原との出会い/救済の後)
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しおりを挟む「……隼人さん、」
「………茜ちゃん?」
入院して1週間。
家族以外で初めてお見舞いに来てくれた子は茜ちゃんだった。
「……まだ、身体は痛みますか?」
「全然大丈夫だよ。茜ちゃんこそ大丈夫?」
「……裁判が、もう時期………」
「………………」
今回の事件で廣瀬の母親と何人か使用人が亡くなった。
廣瀬家の使用人はほとんど避難していたが、心まで支配された彼らは” 廣瀬と死にたくて残った” と警察から聞いた。
「私は……たくさんの人を殺めてきた……遥奈さんも……まだ、目を覚ましていないけど……きっと……」
「……茜ちゃんと遥奈ちゃんは支配されてたんだからそこまで重刑にならないよ。」
「……だけど、雄斗様は………?」
「………………」
何人も殺して、放火をして、廣瀬家の悪事が公になった。
日本でも有名な資産家だった廣瀬家が、” まさかそんなことをするなんて……”って日本中が驚いた。
勿論、中野病院の息子もそれに巻き込まれて可哀想ってプチ炎上しているよ。
「安心して、俺の兄貴は弁護士だからどうにかしてくれるよ。」
「……………」
「茜ちゃん?」
「……隼人さんと、離れることになりますか?」
「へ?」
「……私は、隼人さんと離れたくない。」
「……………」
え?
「……隼人さんなんです。隼人さんが、私を人間にしてくれました。」
「茜ちゃん……」
「悲しいって気持ち…辛いって気持ち……隠してた本当の自分を、隼人さんのおかげで取り戻せた……貴方と離れてしまったら…また忘れてしまいそうで……」
(びっくりした……)
告白されるのかと思った………
(俺、童貞すぎ………)
「大丈夫だよ。俺と離れたほうが、また環境が変わって新しい茜ちゃんを見つけることができるよ。」
「…………」
茜ちゃんが、そっと俺の顔に手を当てる。
「……包帯、痛みますか?」
「そうだね……梶原に傷つけられた箇所、廣瀬家で雑に処理されちゃったからね。」
「……申し訳ありません……」
「謝らなくていいよ、梶原の傷が永遠に残す感じでして嬉しいから。」
冗談半分でそう言うと茜ちゃんはそっと笑った。
本当は静かで可愛らしい子だったと思う。
(メイドとして、たくさんのストレスや命令を溜め込んだ結果、悲しい感情を押し殺すためにわざと明るく振る舞っていたんだろうな。)
「……隼人さん、またお見舞いに行きます。」
「ありがとう、茜ちゃんも頑張ってね。」
俺たちは最後にそう交わして別れを告げた。
次会うのは刑務所かもしれない。
少年院かもしれない。
留置所かもしれない。
いつか、茜ちゃんとしっかりお話をしたい。
俺はそう思いながら病院の窓から見える楓を眺めた。
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