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隼人(梶原との出会い/救済の後)
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しおりを挟む「母さん、お願い……廣瀬に会わせて。」
「………………」
深夜25時。
父さんと母さんを説得して、俺は廣瀬が居る病室へ向かった。
最近まで集中治療室にいたが、今ではだいぶ落ち着いたらしく、内部と外部に大きな傷も無いため再び目を覚ました後に警察が来るだとか。
がちゃ………
静かに扉を開ける。
「……なんで、そんなにかっこいいのかなぁ、」
神に守られたかのように思えるほど、廣瀬の顔には傷ひとつ見当たらない。
人形のように、触れてしまえば廣瀬の虜になってしまう……俺でもそんな感情が湧き上がっちゃうよ。
「……元気そうで良かった。」
本当は明るいうちに行きたかった。
だけど、警察がいると遥奈ちゃんの時のみたいに上手く話せなくなる。
(“梶原と死のうとした”って、余計なことまで言ってくるし………)
「……お前の家のメイド、……遥奈ちゃんの口の軽さを如何にかしろよ。」
「………ん、」
小さく、廣瀬が頷く。
「……は、るな………?」
「……ひろせ……?」
薄暗い部屋の中
俺と廣瀬の目が合う。
「……体は、痛くない?」
「…………」
俺の顔を見て、廣瀬は驚いている。
(……当たり前だよな、)
「俺と遥奈ちゃんと茜ちゃんは無事だったよ……梶原はまだ、目を覚ましていないけどね。」
「……はるな、あかね……」
「使用人は無事で良かったな。」
「……………」
どこか、虚な目をしている。
梶原の話を出したのに、反応を示さない。
(疲れてるのか……?)
「昼になったら警察が来る。事情聴取の後、退院後に廣瀬は逮捕されると思う。」
「………如何して、俺のところに来た……」
「廣瀬とお話がしたくてさ、火事の中命懸けで梶原を危険な目に合わせた者同士だし?」
「……………」
おかしい。
何かがおかしい。
「……あのさ、」
「ん?」
「……かじはら……って、誰?」
「………は?」
変な声が出た。
何となく、今の会話から察してはいたけれど
あんなに大好きで執着していた梶原のことを忘れるなんて、そんなわけないって思っていた。
「……梶原風だよ?ふーくん、ほら……幼馴染の……」
「………」
「まや……麻耶ちゃんは知ってるだろ!?」
「……………は?」
廣瀬の顔が変わった。
俺の前でも基本、無表情だった彼の顔が怒りを表した。
「……何で、お前が……麻耶のことを知っている…」
(…………”お前”??)
「……え、?ひろせ、?……俺のこと、分かるだろ……?」
変な汗が出る。
「ほら、塾一緒だったし……お前の家に監禁されたし……、火事の中……」
「何言ってんの。」
美しい顔が、残酷にもそう告げる。
判っていた。
彼が、”記憶を失っている”ことに。
あの日、屋敷から抜け出した日に
梶原を背負っていた廣瀬は、梶原が地面についた瞬間
俺たち他人に向ける、冷たい瞳をしていたから。
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