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隼人(梶原との出会い/救済の後)
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しおりを挟む「……何処まで……」
「……?」
「何処まで、廣瀬は覚えているの?」
「……………」
これだけは聞きたい。
何でもいい。
何かを聞き出して、そこから……記憶が戻るようにしないと
遥奈ちゃんの懸命が無駄になる。
「………判らない。」
「………………」
(やっぱり………)
言うと思った。
正確には、俺では教えてくれないだろう。
「ふーくん……遥奈ちゃんに会ったら思い出せるかな?」
「…………」
「廣瀬?」
「………聞こえない、」
「………聞こえない?」
「顔が……見えない、声も……途切れて……」
廣瀬の様子が変わった。
「………”ふーくん”って、知ってる?」
「………?」
(そういうことか。)
コンコン、
「隼人、そろそろ部屋を出なさい。」
「母さん…」
タイミングが悪いことに、母さんが入ってきた。
もう少し話をしたかった。
だけど、この数分間の間に理解できた。
「…………お前も、入院してるの?」
「お前じゃない、隼人って言ってよ。」
「……………」
「そーんな睨まないの……もう一回言う?」
「………名前は?」
「俺は、和也って言うんだよ。」
「かずや………」
「よろしくね、雄斗。」
「……母さん、廣瀬は記憶喪失なの?」
「………煙を大きく吸って、脳細胞に影響を及ぼしたように思えるわ。」
「教えてくれないのー?」
「隼人、あなたは患者なんだから介入しちゃだめよ。」
(友達って説明してるのになー……)
変なところでケチくさいんだから。
「…………じゃあさ、母さんは俺と廣瀬の会話を聞いて何か思った?」
「………和也って、誰?」
「……あっはは!」
「隼人……?」
やっぱり鈍感だ。
俺以外、全員頭が悪い。
(俺だけが、梶原を救える人間なんだ……)
「廣瀬は、俺と梶原の名前を認知しようとしない。」
「……脳が、拒否しているってこと?」
「そうだね、廣瀬が拒否しているんだ。」
「……何故、そう分かるの?」
「んー、廣瀬の状況を見ての俺の勘。」
「…明日、検査をするわ。隼人、貴方はもう寝なさい。」
「そうするよ、明日も警察の方々が来てくれるもんね」
「隼人。」
母さんが怒った。
「貴方の悪いところは浮かれやすいところよ。」
「…………」
(ろくに面倒を見ていなかったくせによく言える。)
でも、判明した。
機械なんて使わないで、廣瀬と話すだけで梶原を救える鍵を入手できた。
(梶原だって………)
俺を捨ててまで、廣瀬を選んだんだ。
俺の想いが届かなくても、梶原には幸せになって欲しい。
「っ……はぁっ、ぁ……」
梶原の幸せ
「………かじはらっ……」
梶原のことを考えると止まらない。
「………っ!!!」
俺は、梶原に愛されたいんじゃない。
梶原を、愛したい。
家族に俺が愛されてるって分かった瞬間、梶原への執着は消えたように思えた。
違ったんだ。
俺の想いが届かなくても、梶原を好きでいたい。
大切にしたい。
友達なんて嫌だ。
心配でたまらない。
目を覚ましてあげたい。
会いたい、会いたい、会いたい……
何故、梶原のことを考えて……泣いてしまったのか分かった。
梶原への想いを、忘れてしまった不甲斐なさに俺は……また、みっともなく泣いてしまったんだ。
「……やば。」
なんで俺、出たんだろう。
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