【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ

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39 反省会

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「ああ。今日も僕は、けいとくんを寝かせただけで終わった……」

 人のまばらな学食で、余り物のおかずを食べながら晃が愚痴る。先週と同じく、昼の一時にボランティアが終了してから学食へとやって来たら、また余りの揚げ物をたくさん皿に入れてくれたのだ。

「充分だと思うけど」

 一太は、温かいうどんをすすって飲み込んでから返事をした。
 美味しい。
 ほおっと息を吐く。
 暑い夏でも、体が温かいご飯を求めているようで、とにかく温かいものが美味しかった。
 晃の部屋に暮らしはじめてから、温かい料理ばかりを食べて、すっかり贅沢になっている。今まで、食べたくても食べられなかった分を取り戻すかのように、とにかく電子レンジで温めて食べた。
 これから先、住むところが見つかって一人暮らしに戻る時には、冷蔵庫より先に電子レンジを買おうか、と思ったりする。

「だって、いっちゃんはとものりくんに懐かれた上に、げんきくんとも仲良くしゃべってたじゃん。うみちゃんとも一緒に車を見てたし」
「それは、たまたま窓際に居たから。みんな走ってる車を見に来ただけだよ」
「僕もさ、うみちゃんに話しかけていたんだけど。ううんって、首を横に振られるばかりだったよ」

 晃の愚痴は止まらない。大学の授業は、どんな内容もそれなりにこなしていて、困っている顔なんて見たことがないのに。一太は、上手くいかなかったと落ち込む晃は可愛いな、と思ってしまった。

「うみちゃんはさ、今、何か聞いたら、必ず首を横に振るんだよ」
「え?」
「だからさ。とにかく嫌って言うじゃん、二歳くらいの子どもって。習ったでしょ、イヤイヤ期。あれの、軽いやつというか、大人しいやつみたいな。うみちゃんのマグを見せて、これうみちゃんの? って聞いても、ううんって首を横に振るし、え? 違うの? って言ったら、慌ててまた首を横に振る」
「えええ……。そうだったのかあ」

 思い出しても面白くて笑ってしまう。うみちゃん、お母さんがお迎えに来たよって言っても、ううんって首を横に振ったのだから。見てた優子先生と真美先生とうみちゃんのお母さんと一太で、がくう、とずっこけた。うみちゃんは、真顔でお母さんに走り寄った。お迎えに来てるじゃーん、と言いそうだった。
 そういえばその時、晃はけいとくんをお母さんにお返しして、何やら話していたな。

「けいとくんのお母さんは、何か言ってた?」
「いや、特には。けいとくんのお話じゃなくて、先生は実家から大学通いなんですかとか。実家から離れてるって言ったら、卒業したらどちらで就職されるおつもりですか、とか、また来週来られますかとか、俺のことばっかり」
「へええ。変なの」
「ね、意味分かんないよね」
「うん。でも、お母さん達の相手が上手なの羨ましいよ。俺、どうもお母さん達の声を聞くと上手く頭が働かなくなってさ。子どもだけ見てたらいい訳じゃないから、何とか慣れないとなあ」

 晃が、戸惑ったように一太を見ている。あ、言い方がおかしかったか? いや、でも、感覚としてはそういう感じなのだ。

「ああ、うん……。そう、か。頭が働かなくなるの?」
「本当にそうなってる訳じゃないだろうけど……。そんな感じになってるってだけ」
「うーん。それは、慣れるとかそういう話じゃない気が……」
「え?」

 どういうことだろう?

「まあ、そのうち考えるか……」

 呟いた晃は、よし、と気合いを入れて話を戻した。

「もう分かった。来週は、うみちゃんともっと話してみるぞー」
「おお、いいね」

 元気になったなら、良かったよ。
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