128 / 252
128 ◇次は何を贈ろうか
しおりを挟む
そっと、丁寧に包装紙のテープを剥がす一太を見守りながら、晃は大きく伸びをする。時計を確認すると、まだ六時にもなっていなかった。
本当に、早起きなんだなあ。
一太が、毎日六時頃に起きているのは気付いていて、寒くないようにと暖房のタイマーを六時にセットした。でもこの様子では、本当はそれより前に起きて六時になるのを待っていたのかもしれない。だとしたら、もっと前から部屋を暖めておかないと寒いだろう。
でも……。
一太は晃の布団で寝ていた。今、腕の中にいた。洗濯終了の音が聞こえていたから、すでにひと仕事終えて、晃の布団に入ったのだ。
どうしてそうなったのかは分からない。けれど、幸せ、という一太の呟きの声が夢ではないのだとしたら、温めてあげたらまだ寝られるってことだ。なのに、長年の習慣で早くに目が覚めて、しなくちゃいけない事があるからと、眠くても寝直せない……?
むむ、と晃は眉を寄せてしまう。どうしたら、いっちゃんはもっとたくさん寝ることができるだろうか。
「……泡立て器?」
丁寧に剥がした包装紙を綺麗に畳んでから箱を開けた一太が、すぐに説明書を取り出して読み始めた。家電好きだよね。
一緒に住み始めてから、晃の家にある電化製品の説明書を片っ端から読んでいた一太。そして既に晃より使いこなしている。この小さな機械の使い方も、すぐにマスターするに違いない。
「電動の泡立て器。プレゼントっていうより、お菓子をまた作って欲しいってお願いしてるだけなんだけどね」
母が言っていた。これを考えた人は天才だ、と。これが松島家へ導入される前は、卵六個分の白身の泡立てを子どもたち総出で手伝ってケーキを作っていたのだ。腕がだるくなったら交代しながら、ふわふわのメレンゲができるまでかき混ぜるのは、そりゃもう大変だった。まだ小さくて大した戦力になれなかった晃の記憶にも残っているくらいだ。ケーキが手早く簡単に出来るようになったと大喜びした母が、連日、様々な種類のケーキを作ってはおやつに出してくれた。姉たちは、太るからほどほどにしてくれと文句を垂れていた。
電動の泡立て器を見るだけで、楽しい思い出が溢れてくる。
一太が作るケーキの卵は松島家の半分の三個だ。それでも、一人で作るのは大変だっただろう。昨日のふわふわに膨らんだケーキを思い出して、晃は頬が緩む。頑張ってくれたこと、分かってる。嬉しい。
「おお。すごい……」
呟いた一太は、本体を手に持った。外してあった泡立て部品をカチリと付けて、右に左に傾けて……。夢中なの、可愛いな。次は何をプレゼントしようか。絶対に一太は言わないと分かっているけれど、欲しいものがあれば言ってくれたらいいのに、と思ってしまう。
晃は、喜んでいる一太を見るのが楽しかった。欲しいものはないか、と毎年聞いてくる母の気持ちがようやく分かった気がした。
本当に、早起きなんだなあ。
一太が、毎日六時頃に起きているのは気付いていて、寒くないようにと暖房のタイマーを六時にセットした。でもこの様子では、本当はそれより前に起きて六時になるのを待っていたのかもしれない。だとしたら、もっと前から部屋を暖めておかないと寒いだろう。
でも……。
一太は晃の布団で寝ていた。今、腕の中にいた。洗濯終了の音が聞こえていたから、すでにひと仕事終えて、晃の布団に入ったのだ。
どうしてそうなったのかは分からない。けれど、幸せ、という一太の呟きの声が夢ではないのだとしたら、温めてあげたらまだ寝られるってことだ。なのに、長年の習慣で早くに目が覚めて、しなくちゃいけない事があるからと、眠くても寝直せない……?
むむ、と晃は眉を寄せてしまう。どうしたら、いっちゃんはもっとたくさん寝ることができるだろうか。
「……泡立て器?」
丁寧に剥がした包装紙を綺麗に畳んでから箱を開けた一太が、すぐに説明書を取り出して読み始めた。家電好きだよね。
一緒に住み始めてから、晃の家にある電化製品の説明書を片っ端から読んでいた一太。そして既に晃より使いこなしている。この小さな機械の使い方も、すぐにマスターするに違いない。
「電動の泡立て器。プレゼントっていうより、お菓子をまた作って欲しいってお願いしてるだけなんだけどね」
母が言っていた。これを考えた人は天才だ、と。これが松島家へ導入される前は、卵六個分の白身の泡立てを子どもたち総出で手伝ってケーキを作っていたのだ。腕がだるくなったら交代しながら、ふわふわのメレンゲができるまでかき混ぜるのは、そりゃもう大変だった。まだ小さくて大した戦力になれなかった晃の記憶にも残っているくらいだ。ケーキが手早く簡単に出来るようになったと大喜びした母が、連日、様々な種類のケーキを作ってはおやつに出してくれた。姉たちは、太るからほどほどにしてくれと文句を垂れていた。
電動の泡立て器を見るだけで、楽しい思い出が溢れてくる。
一太が作るケーキの卵は松島家の半分の三個だ。それでも、一人で作るのは大変だっただろう。昨日のふわふわに膨らんだケーキを思い出して、晃は頬が緩む。頑張ってくれたこと、分かってる。嬉しい。
「おお。すごい……」
呟いた一太は、本体を手に持った。外してあった泡立て部品をカチリと付けて、右に左に傾けて……。夢中なの、可愛いな。次は何をプレゼントしようか。絶対に一太は言わないと分かっているけれど、欲しいものがあれば言ってくれたらいいのに、と思ってしまう。
晃は、喜んでいる一太を見るのが楽しかった。欲しいものはないか、と毎年聞いてくる母の気持ちがようやく分かった気がした。
721
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
【完結】獣王の番
なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。
虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。
しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。
やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」
拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。
冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした
鳥居之イチ
BL
————————————————————
受:久遠 酵汰《くおん こうた》
攻:金城 桜花《かねしろ おうか》
————————————————————
あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。
その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。
上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。
それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。
お呪いのルールはたったの二つ。
■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。
■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。
つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。
久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、
金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが…
————————————————————
この作品は他サイトでも投稿しております。
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~
トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。
突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。
有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。
約束の10年後。
俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。
どこからでもかかってこいや!
と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。
そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変?
急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。
慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし!
このまま、俺は、絆されてしまうのか!?
カイタ、エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる