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178 誰かと共にいるということ
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「岸田さんと安倍くんと一緒に出かけてきていい?」
二人が、安倍の指輪を買いに行くらしい。
インターネットで指輪のことを色々調べたが、値段に幅がありすぎ、材質や形などが豊富すぎて訳が分からなくなっていた一太は、二人が指輪を買いに行くと聞いて、渡りに船と同行を願い出た。
本物を見てみたい。
二人からは、いいよ、と了承をもらっている。そんなに上等じゃない、と安倍が言っていたし、インターネットで調べた時に出てきた、目が飛び出るような値段の品が置いてある店ではないだろう。
一太はわくわくしていた。何かを買おうと思ってこんな気持ちになったのは初めてかもしれない。何か買わなければならない時はいつも怯えていたから。晃と一緒に暮らし始めて、生活に少し余裕ができてからも、無駄な買い物じゃないか、これを今買って、この先の生活は大丈夫か、という不安がどこか付き纏っている。美容院で髪を切ってもらう時も、自分で切ればお金がかからないんだけどな、と思ってしまったりする。格好良い、と晃に言ってもらえるのが嬉しくて通っているが、そういった出費にも、これは使ってよかったのかな、と考えてしまうのがやめられない。
だというのに、晃に渡したい、と強く思った指輪のことを考えるとわくわくする。調べるだけで楽しい。買い物って楽しいのかもしれない、と初めて思った。
安倍と岸田も、親元を離れ、アルバイトをして奨学金を借りて、節約しながら生活している。あの二人が、上等なものでない、と言うなら、一太にも買える値段なんじゃないかと思うから、店へ行くのが楽しみだった。
「それは、三人で行くってこと?」
「うん、そう」
以前、岸田と二人で出かけるのは駄目だと言われたことがある。ちょうど一年前だ。一年前の、安倍の誕生日の前。安倍の誕生日プレゼントを買いに行くという岸田と一緒に一太のエプロンも買い足しに行こうとしたら、恋人がいる人が恋人以外の人と二人で出かけるのは浮気だと誤解されるから駄目だ、と晃に教えてもらったのだ。
実際、二人で仲良く話していただけで、浮気? と声をかけられたから、止めてもらって正解だった。
だが、今回は三人。三人なら浮気じゃない。
「一人だけ置いていかれるのは、寂しいんだけど」
「え? あ……」
一太は、晃のその言葉を聞くまで、三人で出かけるということは晃を一人置いていく事なのだ、と気付いていなかった。浮気じゃない、とそればかり。
「ご、ごめん」
もし自分がそれをされたら、と考えて、一太は胸がきゅっと痛くなった。
ああ。一太はいつも一人だったから。側には誰もいなかったから。だから気付いていなかった。だから、ついうっかりしてしまったのだ。
「あの。晃くんも……」
「一緒に行きたい。駄目かな?」
「も、もちろん」
晃に内緒で調べようと考えていたこともすっかり忘れて、一太は慌てて返事をした。
二人が、安倍の指輪を買いに行くらしい。
インターネットで指輪のことを色々調べたが、値段に幅がありすぎ、材質や形などが豊富すぎて訳が分からなくなっていた一太は、二人が指輪を買いに行くと聞いて、渡りに船と同行を願い出た。
本物を見てみたい。
二人からは、いいよ、と了承をもらっている。そんなに上等じゃない、と安倍が言っていたし、インターネットで調べた時に出てきた、目が飛び出るような値段の品が置いてある店ではないだろう。
一太はわくわくしていた。何かを買おうと思ってこんな気持ちになったのは初めてかもしれない。何か買わなければならない時はいつも怯えていたから。晃と一緒に暮らし始めて、生活に少し余裕ができてからも、無駄な買い物じゃないか、これを今買って、この先の生活は大丈夫か、という不安がどこか付き纏っている。美容院で髪を切ってもらう時も、自分で切ればお金がかからないんだけどな、と思ってしまったりする。格好良い、と晃に言ってもらえるのが嬉しくて通っているが、そういった出費にも、これは使ってよかったのかな、と考えてしまうのがやめられない。
だというのに、晃に渡したい、と強く思った指輪のことを考えるとわくわくする。調べるだけで楽しい。買い物って楽しいのかもしれない、と初めて思った。
安倍と岸田も、親元を離れ、アルバイトをして奨学金を借りて、節約しながら生活している。あの二人が、上等なものでない、と言うなら、一太にも買える値段なんじゃないかと思うから、店へ行くのが楽しみだった。
「それは、三人で行くってこと?」
「うん、そう」
以前、岸田と二人で出かけるのは駄目だと言われたことがある。ちょうど一年前だ。一年前の、安倍の誕生日の前。安倍の誕生日プレゼントを買いに行くという岸田と一緒に一太のエプロンも買い足しに行こうとしたら、恋人がいる人が恋人以外の人と二人で出かけるのは浮気だと誤解されるから駄目だ、と晃に教えてもらったのだ。
実際、二人で仲良く話していただけで、浮気? と声をかけられたから、止めてもらって正解だった。
だが、今回は三人。三人なら浮気じゃない。
「一人だけ置いていかれるのは、寂しいんだけど」
「え? あ……」
一太は、晃のその言葉を聞くまで、三人で出かけるということは晃を一人置いていく事なのだ、と気付いていなかった。浮気じゃない、とそればかり。
「ご、ごめん」
もし自分がそれをされたら、と考えて、一太は胸がきゅっと痛くなった。
ああ。一太はいつも一人だったから。側には誰もいなかったから。だから気付いていなかった。だから、ついうっかりしてしまったのだ。
「あの。晃くんも……」
「一緒に行きたい。駄目かな?」
「も、もちろん」
晃に内緒で調べようと考えていたこともすっかり忘れて、一太は慌てて返事をした。
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