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209 ♢最高の誕生日
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「晃くん、おはよう。晃くん」
ゆさゆさといつも通りに揺さぶられて、むうっと晃は目を開ける。眠い……。
「んんー」
「晃くん。誕生日おめでとう!」
あ。
目を開けると、一太がにこにこ笑っていた。
「おめでとう」
「ありがと」
ぼんやりしたまま、晃は、にへと笑う。そうだ。今日は誕生日だ。何だか、すでにたくさん誕生日を祝ってもらったような気がするけれど、実際二十歳になったのは今日だった。
昨夜から一太が、一番に祝いたいと言ってくれていたことを思い出して、晃はまた、にひゃと笑った。一太は、約束通り一番に祝ってくれたんだな。
嬉しい気持ちのままに一太を抱きしめようとして、晃は、ん? と首を傾げる。一太が上から覗き込んでいる?
「あれ?」
「あのね、晃くん。俺、陽子さんを手伝ってくるから、もう少し寝てていいよ。どうしても、誕生日おめでとうだけ言いたくて、起こしてしまってごめんね」
「え?」
一緒に寝ていたはずの一太は、布団から抜け出して上着を羽織っていた。昨日の朝は、同じ布団の晃の腕の中で動けずに、そっとそおっと晃のことを起こしてくれたのに、たった一日で抜け出す術を見つけてしまったらしい。いや、本当は昨日も、抜け出そうと思えばできたのにいてくれたんだろうな、きっと。
晃が、枕元の携帯電話で時計を確かめると六時半だった。携帯電話のメール通知欄には、メッセージがいくつも届いていることを示す数字が示されている。きっと、夜中の誕生日おめでとうメッセージだ。
ふふ、と晃は少し笑って、立ち上がろうとする一太の腕を掴んだ。
「いっちゃんのおめでとうが、一番のりだ」
「そう? それなら嬉しい」
にこっと笑う一太の腕をそのまま引っ張ると、駄目、と抵抗された。
「もう六時半だもん。陽子さんが仕事で八時半に家を出るなら、もう起きないと」
なぜ、母が八時半に家を出る予定だからと一太が六時半に起きるのか、晃にはさっぱり分からない。
「起きた時に、いっちゃんが腕の中に居てくれないと寂しい」
少しふて腐れた声が出てしまった。
「あ、え?」
戸惑った一太は、うろうろと視線をさ迷わせてから、俺も、と小さな声で言った。
「俺も、目が覚めた時に晃くんがいないと寂しいから、また一緒に寝てほしい……」
やった! と晃は思った。
やった! 昨日、一昨日は、寝ぼけている一太を勝手に腕の中に入れたまま同じ布団で寝てしまったようなものだから、今夜からはどうやって同じ布団で寝ることを誘おうかと思っていたのだ。こうして、一太の方から、一緒に寝てほしいと言ってもらえるなんて、思ってもみなかった。一太も、同じ布団で寝るのが嫌でなかった事が分かっただけで、ものすごい誕生日プレゼントをもらった気分だ!
「じゃ、今日も明日も明後日も、一緒の布団で寝よう?」
「あ、うん。嬉しい……」
嫌でないどころか、嬉しいと言ってくれた!
晃はすっかり目が覚めて、布団からがばりと起き上がった。わ、と驚く一太を抱きしめて、キスをする。
最高だ! 最高の誕生日だなあ!
ゆさゆさといつも通りに揺さぶられて、むうっと晃は目を開ける。眠い……。
「んんー」
「晃くん。誕生日おめでとう!」
あ。
目を開けると、一太がにこにこ笑っていた。
「おめでとう」
「ありがと」
ぼんやりしたまま、晃は、にへと笑う。そうだ。今日は誕生日だ。何だか、すでにたくさん誕生日を祝ってもらったような気がするけれど、実際二十歳になったのは今日だった。
昨夜から一太が、一番に祝いたいと言ってくれていたことを思い出して、晃はまた、にひゃと笑った。一太は、約束通り一番に祝ってくれたんだな。
嬉しい気持ちのままに一太を抱きしめようとして、晃は、ん? と首を傾げる。一太が上から覗き込んでいる?
「あれ?」
「あのね、晃くん。俺、陽子さんを手伝ってくるから、もう少し寝てていいよ。どうしても、誕生日おめでとうだけ言いたくて、起こしてしまってごめんね」
「え?」
一緒に寝ていたはずの一太は、布団から抜け出して上着を羽織っていた。昨日の朝は、同じ布団の晃の腕の中で動けずに、そっとそおっと晃のことを起こしてくれたのに、たった一日で抜け出す術を見つけてしまったらしい。いや、本当は昨日も、抜け出そうと思えばできたのにいてくれたんだろうな、きっと。
晃が、枕元の携帯電話で時計を確かめると六時半だった。携帯電話のメール通知欄には、メッセージがいくつも届いていることを示す数字が示されている。きっと、夜中の誕生日おめでとうメッセージだ。
ふふ、と晃は少し笑って、立ち上がろうとする一太の腕を掴んだ。
「いっちゃんのおめでとうが、一番のりだ」
「そう? それなら嬉しい」
にこっと笑う一太の腕をそのまま引っ張ると、駄目、と抵抗された。
「もう六時半だもん。陽子さんが仕事で八時半に家を出るなら、もう起きないと」
なぜ、母が八時半に家を出る予定だからと一太が六時半に起きるのか、晃にはさっぱり分からない。
「起きた時に、いっちゃんが腕の中に居てくれないと寂しい」
少しふて腐れた声が出てしまった。
「あ、え?」
戸惑った一太は、うろうろと視線をさ迷わせてから、俺も、と小さな声で言った。
「俺も、目が覚めた時に晃くんがいないと寂しいから、また一緒に寝てほしい……」
やった! と晃は思った。
やった! 昨日、一昨日は、寝ぼけている一太を勝手に腕の中に入れたまま同じ布団で寝てしまったようなものだから、今夜からはどうやって同じ布団で寝ることを誘おうかと思っていたのだ。こうして、一太の方から、一緒に寝てほしいと言ってもらえるなんて、思ってもみなかった。一太も、同じ布団で寝るのが嫌でなかった事が分かっただけで、ものすごい誕生日プレゼントをもらった気分だ!
「じゃ、今日も明日も明後日も、一緒の布団で寝よう?」
「あ、うん。嬉しい……」
嫌でないどころか、嬉しいと言ってくれた!
晃はすっかり目が覚めて、布団からがばりと起き上がった。わ、と驚く一太を抱きしめて、キスをする。
最高だ! 最高の誕生日だなあ!
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