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二十六
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余四郎と伊之助が許婚同士になってから、四年が過ぎた。余四郎は九つ、伊之助は十二歳。二人は、変わらず仲良く過ごしていた。
寺子屋の仲間に別れを告げた後、伊之助は真剣に勉強に取り組み始めた。まずは、梅千代と小太郎にお願いして、藩校での勉強について教えてもらうことにした。二人は、藩校終わりに伊之助の暮らす医者の良庵の屋敷に遊びに来ることが日課となっていたので、いつでも聞くことができた。もちろん共にいる余四郎も、三つ年上の三人と同じことをやりたがり、必死に頑張った。
誰も、あいつらはいらない若様とその許婚なんだ、なんて表立っては言えなくなるほどに、四人共に能力を示してみせたのだ。
剣の稽古は、伊之助はどうしても苦手であったが、他の三人は素晴らしい腕前をみせていた。特に小太郎は、細くて背が低く、力も強いわけではないのにめっぽう強かった。受け止めるようにして相手の剣を流したかと見た時には、返す手で撥ね上げ、相手の剣が、体に当たるか当たらないかというぎりぎりの距離を見極めて躱して、態勢を崩した相手に軽く一撃を入れて倒してみせた。大きな体格と力の強さを生かして強い梅千代とはまた違う強さに、伊之助は憧れていた。同級の中では、二人が飛びぬけて強く、伊之助は飛びぬけて弱かった。
落ち込む伊之助に、私が守るから大丈夫だ、と余四郎が言った。伊之助たちと共に剣の稽古もしていた余四郎は、もう同級の者たちでは相手にならないくらいに強い。頼もしいです、ありがとうございます、と伊之助は答えたけれど、余四郎が伊之助を守るというのは駄目に決まっている、と心の内では考えていた。何か事があれば、伊之助が身を挺して余四郎を守ろう。若様が前に出て戦ってはいけません、と話を聞いていた護衛にも言われていた。
余四郎の小姓は四年の間に何人か変わったが、護衛は変わらず同じ者が務めてくれていた。余四郎と伊之助が小さな頃は、二人まとめて抱き上げてくれることもあった大柄な男は、その名を山中正平と言った。次男で、継ぐ家ももらえる財産もなかった自分でも、お役に立てる仕事があって良かった、と言って、余四郎の側に居続けてくれていた。
余四郎はすくすくと大きくなって、八つになった今では、小柄な小太郎より少しだけ背が高いくらいになっていた。良庵の屋敷に暮らすようになってから、急にぐんと大きくなった伊之助よりはまだ小さいけれど、そのうち抜かれそうだ。
いや、このまま良庵先生のうちで暮らしていたら、抜かれないかもしれないけれど。
そう。伊之助は、四年経った今も良庵の屋敷にいた。骨が傷んでいた腕が治った後もここにいたらいい、と良庵が言ってくれたのだ。良庵は、伊之助が寺子屋へ別れの挨拶をしに行った後すぐの頃に、そう言ってくれた。おかげで伊之助は、怪我が治ったら、もともと住んでいた屋敷へ戻らなければならない、という心配をすることなく、美味しいものをたくさん食べてのびのびと過ごしてきた。
何も言われないなら、このまま共に暮らしたらいいじゃないですか、と提案してくれたのは草庵であったらしい。ありがたいことだ。
そうして、特にどこからも自分の家へ戻れと言われることなく、四年が過ぎた。
寺子屋の仲間に別れを告げた後、伊之助は真剣に勉強に取り組み始めた。まずは、梅千代と小太郎にお願いして、藩校での勉強について教えてもらうことにした。二人は、藩校終わりに伊之助の暮らす医者の良庵の屋敷に遊びに来ることが日課となっていたので、いつでも聞くことができた。もちろん共にいる余四郎も、三つ年上の三人と同じことをやりたがり、必死に頑張った。
誰も、あいつらはいらない若様とその許婚なんだ、なんて表立っては言えなくなるほどに、四人共に能力を示してみせたのだ。
剣の稽古は、伊之助はどうしても苦手であったが、他の三人は素晴らしい腕前をみせていた。特に小太郎は、細くて背が低く、力も強いわけではないのにめっぽう強かった。受け止めるようにして相手の剣を流したかと見た時には、返す手で撥ね上げ、相手の剣が、体に当たるか当たらないかというぎりぎりの距離を見極めて躱して、態勢を崩した相手に軽く一撃を入れて倒してみせた。大きな体格と力の強さを生かして強い梅千代とはまた違う強さに、伊之助は憧れていた。同級の中では、二人が飛びぬけて強く、伊之助は飛びぬけて弱かった。
落ち込む伊之助に、私が守るから大丈夫だ、と余四郎が言った。伊之助たちと共に剣の稽古もしていた余四郎は、もう同級の者たちでは相手にならないくらいに強い。頼もしいです、ありがとうございます、と伊之助は答えたけれど、余四郎が伊之助を守るというのは駄目に決まっている、と心の内では考えていた。何か事があれば、伊之助が身を挺して余四郎を守ろう。若様が前に出て戦ってはいけません、と話を聞いていた護衛にも言われていた。
余四郎の小姓は四年の間に何人か変わったが、護衛は変わらず同じ者が務めてくれていた。余四郎と伊之助が小さな頃は、二人まとめて抱き上げてくれることもあった大柄な男は、その名を山中正平と言った。次男で、継ぐ家ももらえる財産もなかった自分でも、お役に立てる仕事があって良かった、と言って、余四郎の側に居続けてくれていた。
余四郎はすくすくと大きくなって、八つになった今では、小柄な小太郎より少しだけ背が高いくらいになっていた。良庵の屋敷に暮らすようになってから、急にぐんと大きくなった伊之助よりはまだ小さいけれど、そのうち抜かれそうだ。
いや、このまま良庵先生のうちで暮らしていたら、抜かれないかもしれないけれど。
そう。伊之助は、四年経った今も良庵の屋敷にいた。骨が傷んでいた腕が治った後もここにいたらいい、と良庵が言ってくれたのだ。良庵は、伊之助が寺子屋へ別れの挨拶をしに行った後すぐの頃に、そう言ってくれた。おかげで伊之助は、怪我が治ったら、もともと住んでいた屋敷へ戻らなければならない、という心配をすることなく、美味しいものをたくさん食べてのびのびと過ごしてきた。
何も言われないなら、このまま共に暮らしたらいいじゃないですか、と提案してくれたのは草庵であったらしい。ありがたいことだ。
そうして、特にどこからも自分の家へ戻れと言われることなく、四年が過ぎた。
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