【完結】余四郎さまの言うことにゃ

かずえ

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百十三

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 もちろん寝直すことなどできなかった伊良は、夜明けと共に動き出した下働きの者を一人捕まえ、大急ぎで届けてほしいと文を渡した。まずは、ほどほどの手当を渡し、きちんと届けて返信をもらってきてくれれば更に手当を出す、と言ってみると、大張り切りで引き受けてくれた。もちろん、その者がいない分仕事が増えてしまう者たちにも、丁寧に礼を言って特別手当を渡す。こちらも、二つ返事で引き受けてくれて、ほっと息を吐いた。 

「本当にありがとう」
「あの。おいらたちこそ。こんなにもらっちまって、その、本当に、よろしいんですか」

 庭周りの手入れをする四人の若い男たちは、伊良に頭を下げられ恐縮しきりだった。

「もちろんだ。こんなに早くから申し訳なかった」

 良時が、信頼できる城住まいの部下を、藤兵衛以外全て連れて出てしまったので、伊良の使いをしてくれる者が誰もいなかったのだ。彼らが引き受けてくれて、伊良はとても助かった。もう少しすれば、城住まいでない、良時直属の部下たちが登城することは分かっているのだが。虫の知らせ、とでもいうのだろうか。本日の伊良には、それを待つことができなかった。

「日が昇れば仕事なのはいつも通りなので、問題ねえです」
「そうか。ご苦労様」

 急いでいると言えば、足に自信のある者が走ってくれると言う。伊良は、もう一度丁寧に頭を下げた。
 そうだ、私で良ければ仕事を手伝おう、という申し出は、全員から止められて諦めることになったが。
 そうして、皆の働く様子を眺め、出された朝食と向き合っていると、早くも草庵が城へと足を運んできてくれた。伊良と同じく、御典医、青池良庵の養子となり、また自らも玉乃川伊良の担当医として御典医となった草庵は、もう城の中をうろついても止められることはない。まっすぐに、なかなか喉を通らない朝食に四苦八苦している義弟、伊良の元へとやってきてくれた。

「伊良さま」
「義兄上」

 草庵が、決まりの通りに平伏するのを待って、伊良は声を上げる。
 草庵は、すぐに頭を上げて伊良を見つめてきた。

「私だけで出ます。行列の道程を」

 良庵は、あまり体を動かすのが得意ではない。だから、剣術ではなく医術を学んで身を立てた。急いで怪我人の元へ駆けつけるなら、草庵一人の方が早い。伊良からの文を読んだ良庵と草庵はそう判断して、城へも草庵一人で駆けつけてくれたのだろう。ありがたいことだ。伊良は、優秀な医師である二人を怪我人の元へ送れば、少しでも助かる人が増えるかもしれないと、そればかりを考えていた。

「ありがとう……」

 ございます、という言葉は口の中に飲み込んだ。
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