【完結】余四郎さまの言うことにゃ

かずえ

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百三十八

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 そうして、二人で過ごす部屋の一室へ書類を運んだ。あまり使用人の往来もなく、静かな一室。側仕えや侍従、護衛はいるが、信頼できる者達で固めた一室にくつろいだ二人は、しばらく静かに書類に目を通す。やがて、どちらからともなく顔を見合わせた。
 大まかに目を通しただけですぐに気付く。いくら金額が大きくても分かる。これは……。

「足りて、ない……」
「なんだ、これは……。何故、こんな……」

 年によって、作物の実りは様々である。良くできる年もあれば、不作の年もある。不作の年は、当然、実入りが少なくなる。農民たちに、いつも通り出せと言ったところで、無いものはないのだ。そして、実入りが少なくとも、お上へ納める年貢は変わらない。となれば、寂しくなるのは藩主の懐。
 懐が寂しいならば、使う方も減らさねばならぬのが道理。だが、書類を確かめてみれば、豊作の年も不作の年も支出に変わりはなかった。玉乃川家の暮らし向きに使う金も、家臣たちへ払う扶持も、将軍様のお膝元へ行って帰る道行きの際に必要な金も、いつも同じだけ計上されていた。
 壊れた堤の補修や崩れた崖の補修などを行う頻度は年によってまちまちである。だが、城で使用する金はどんな年も変わることはなかった。いや、直近の数年分を確認しただけであるが、少しずつ増えている。
 当然、足りない年があった。では、どうするか。

「借り入れがこんなに……」
「くそ」

 足りなくなれば、商人から借りて賄っていたのだ。借り入れであるから、当然利子がつく。利子はどんどん膨れ上がり、元金を返すどころか、利子の分を月々払って次にまた貸してもらえるようにするだけで精一杯の状態となっていた。
 これでは、今、長雨で壊れた堤を修理するための元手がどこにも……。

「あ」

 伊良は、青くなった。今年は、堤が壊れるほどの雨が降った。ということは。

「不作……」
「なに?」
「此度の長雨で、作物にも被害が出るのでは……と」

 堤が壊れた。つまりその地域は、畑や田んぼが水に浸かってしまったという事だろう。それ以外の地域でも、雨が降りすぎて作物が傷んでいるかもしれない。雨は、降らなくても困るが降りすぎても困る。
 今年の実入りは少なくなる、と予想しておいた方が良さそうだ。その上、堤の補修などの支出が多くなる。
 ならば。

「使う金を減らさねば」 
 
 
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