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第二章 人として生きる
10 成人 7
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「たのもう!」
乙羽と廊下の拭き掃除をしていたら、大きな声が玄関から響いた。
今まで訪ねてきた人は、確かピンポンとなるベルを押していたと思ったんだけど。
「はい、ただいま参ります」
使用人の女の人の返事が、微かに聞こえる。俺と乙羽が掃除してるのは、広い屋敷の一番奥まった所で、玄関の声なんてそうそう聞こえるものじゃないはずなのだ。
「うちの可愛い生松はおるか。義父が来たと言ってくれ」
うん、聞こえるね。
ものすごーく、声の大きな人なのだろう。そして、生松は可愛くないと思うんだ。
「あれは、九条のおじ様ね。生松は確か出かけていたわよね」
乙羽が雑巾を持って立ち上がった。生松が出かけているのは知っていたので、うん、と頷く。
「大人しい斑鹿乃には荷が重い相手だから、行ってくるわ」
うん。
俺は、雑巾を乙羽に渡した。右手だけでは絞れないので、やってるのは拭くだけ。一人で掃除はできない。
「なるは、部屋で休んでて。ちゃんとお水を飲むのよ」
頷く間に、ぱたぱたと乙羽は玄関に走って行った。
「おおー、これは乙羽姫、ますます麗しい。この度はご結婚おめでとうございまする!」
九条のおじ様という人の声は、本当によく響く。普段、決まった人間としか顔を合わせていないので、何だか珍しくて面白くて、そのまま廊下で聞いていた。
「留守? おお、そうか。昨日、合格発表で、今日は免許発行の手続きであるか。いやー、実に目出度い。優秀な息子を得て、わしは鼻が高くてな。一緒に祝いたいので酒を持ってやって来たのだ。常陸丸と乙羽姫の結婚祝いも兼ねて、宴会をしようではないか!」
生松は、ずっと頑張って勉強していた試験に合格したのだ。たくさんの人が受けたけれど、合格者はたったの二人だったらしい。生松は本当にすごい。九条のおじ様が喜ぶのも分かるよ!
「でも、おじ様。そんな急に料理が揃いませんことよ」
「姫、そんな豪華なものでなくて良いのだ。普通の食事でも構わぬ。この年寄りはな、理由をつけて、酒を飲みたいだけだよ」
がっはっは、と笑う声。
聞いてるのが楽しい。
「昼には、息子も戻るか? 殿下、いや、緋色さまは? まずは、ご挨拶じゃ」
あれ? どんどん声が近づいて……。
緋色の仕事部屋そばの廊下にいたので、慌てて自分の部屋に入る前に、姿を見られてしまった。
乙羽と廊下の拭き掃除をしていたら、大きな声が玄関から響いた。
今まで訪ねてきた人は、確かピンポンとなるベルを押していたと思ったんだけど。
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「うちの可愛い生松はおるか。義父が来たと言ってくれ」
うん、聞こえるね。
ものすごーく、声の大きな人なのだろう。そして、生松は可愛くないと思うんだ。
「あれは、九条のおじ様ね。生松は確か出かけていたわよね」
乙羽が雑巾を持って立ち上がった。生松が出かけているのは知っていたので、うん、と頷く。
「大人しい斑鹿乃には荷が重い相手だから、行ってくるわ」
うん。
俺は、雑巾を乙羽に渡した。右手だけでは絞れないので、やってるのは拭くだけ。一人で掃除はできない。
「なるは、部屋で休んでて。ちゃんとお水を飲むのよ」
頷く間に、ぱたぱたと乙羽は玄関に走って行った。
「おおー、これは乙羽姫、ますます麗しい。この度はご結婚おめでとうございまする!」
九条のおじ様という人の声は、本当によく響く。普段、決まった人間としか顔を合わせていないので、何だか珍しくて面白くて、そのまま廊下で聞いていた。
「留守? おお、そうか。昨日、合格発表で、今日は免許発行の手続きであるか。いやー、実に目出度い。優秀な息子を得て、わしは鼻が高くてな。一緒に祝いたいので酒を持ってやって来たのだ。常陸丸と乙羽姫の結婚祝いも兼ねて、宴会をしようではないか!」
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「昼には、息子も戻るか? 殿下、いや、緋色さまは? まずは、ご挨拶じゃ」
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