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病室にて
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手に入れたティアロットの薬草を煎じて飲ませるとフェリクスの容体はすっかり良くなった。
病室を見舞うとフェリクスが笑顔で私を迎えてくれた。
フェリクスの顔色はずいぶん良くなってる。本当に良かったわ。一時はどうなることかと思ったけれど。
私はフェリクスのベッドの脇の椅子に腰をおろした。
「フェリクス、調子はどうです?」
「もうすっかり良くなったよ。すべて君のおかげだ、エマ。本当にありがとう」
そう言ってフェリクスがにっこりと笑う。
……フェリクスって笑うとすごく可愛らしいのね。そういえばフェリクスが笑った顔をあまり見たことがなかったわ。
この間は気がつかなかったけれど、眼鏡を外したフェリクスってすごく綺麗な顔をしている。バランスの取れた目鼻にすっきり通った鼻筋。長い睫毛に漆黒の髪。陶器のような肌。
「眼鏡、かけなくても大丈夫なの?」
私がサイドテーブルに置かれていた眼鏡を手に取ってかけてあげようとするとフェリクスは慌てた様子でそれをひったくった。
……そんなに慌てて奪い返さなくても壊したりなんかしないのに。そんなに大切なものなのかしら。まあ、眼鏡が壊れたら物が見えなくなるでしょうからそりゃ困るわよね。
でも他人様のメガネを簡単に壊すほど私うっかり者ではないわ。よほど信頼されていないのかしら。
私の考えごとをよそに眼鏡をかけたフェリクスが朗らかに言う。
「ティアロットの薬草を取ってくるのはさぞかし大変だったろう? 本当にありがとう」
「とんでもありませんわ。私ときたら、ルーク様に止められていたのに一人で森へ行って、結局ルーク様に助けられる始末で……」
……全くその通り。私は自分の不始末がただただ恥ずかしい限りです。
「ルーク様から聞いたよ。でも君とルーク様が無事で本当に良かった」
「もっと訓練して魔力を磨かなければ駄目ですね」
「そんなことはないさ、君はよくやってるよ」
フェリクスがそんな優しい言葉をかけてくれる。
「……ルーク様はやっぱり君のことをすごく気にかけているんだね。ルーク様はどうも君に好意を抱いているように見えるけれど、エマの方は実際ルーク様のことどう思っているの?」
ず、ずいぶん単刀直入に聞くのね?! 急にフェリクスからそんなことを尋ねられて私は驚きのあまり咳払いをした。
まったくフェリクスったら、体調が回復したと思ったら一体急に何を言い出すのかしら。ルーク様が私に好意なんてそんなことあるわけ……あるわけ? ない……ってこともないかもしれないですけど……。
私は私を見つめるルーク様の意味深なまなざしを思い返した。
あれが私に対する特別な気持ちの表れだなんて、そ、そんなことを認めたらまったくもって自意識過剰みたいですわ。
「そ、それはフェリクスの勘違いです」
「……そうかな? ルーク様は君に対しては随分優しいように思えるけど」
「ま、万が一そうだとしても……」
私は続けた。
「それはきっとルーク様の一時の気の迷いです」
私の返答にフェリクスは釈然としないという表情を浮かべる。
「……そうとは限らないんじゃないかな? 君は王太子妃になりたくはないの?」
フェリクスが私にそう尋ねる。
「まあ正直に申し上げますと……全くなりたくはありませんね」
私がそうきっぱりはっきり答えると、フェリクスは意外そうな顔をした。
……そんなに意外な回答だったかしら? だけど私、本当に王太子妃になるなんて興味はないのよね。だってそれって結局はお飾りということでしょう?
国民全員から選ばれてなる王太子妃なら価値はありそうだけど、今私がルーク様に選ばれて王太子妃になったところで、それは単に王太子に愛された女ということを意味するだけのことであって、私自身の能力や価値が評価されたわけでもなんでもないわよね?
それはそれで価値のあることだと言う人もいるでしょうけど、ただ愛されているというだけの立場はなんだかすごく不安定なものに私には思える。そんなことよりも今の私はまずは誰の力を借りなくとも自由に自分の意思を実現できる立場でありたいわ。
「私に王太子妃なんて荷が重すぎますし、他にもっとしたいことがありますから」
「君のしたいことってなんだい?」
フェリクスからそう尋ねられ、私は答えた。
「そうですね……例えば……たくさんお金を貯めてみなし子たちを教育する施設をつくりたいわ」
それはかつて幼い頃の私が望んだことだった。
「生まれ育った環境で教育を受けられない子どもがいることは王国全体にとっても大きな損失ですもの。そしてそれを実現するにはお金が必要だわ。そうして教育された子どもたちはきっと国の力になりますわ」
「なるほど、それはいいね」
フェリクスが優しく微笑む。フェリクスからの質問が止んだところで私は尋ねた。
「今度は私から質問しても?」
「もちろんどうぞ」
私は以前から気になっていたことをフェリクスに尋ねた。
病室を見舞うとフェリクスが笑顔で私を迎えてくれた。
フェリクスの顔色はずいぶん良くなってる。本当に良かったわ。一時はどうなることかと思ったけれど。
私はフェリクスのベッドの脇の椅子に腰をおろした。
「フェリクス、調子はどうです?」
「もうすっかり良くなったよ。すべて君のおかげだ、エマ。本当にありがとう」
そう言ってフェリクスがにっこりと笑う。
……フェリクスって笑うとすごく可愛らしいのね。そういえばフェリクスが笑った顔をあまり見たことがなかったわ。
この間は気がつかなかったけれど、眼鏡を外したフェリクスってすごく綺麗な顔をしている。バランスの取れた目鼻にすっきり通った鼻筋。長い睫毛に漆黒の髪。陶器のような肌。
「眼鏡、かけなくても大丈夫なの?」
私がサイドテーブルに置かれていた眼鏡を手に取ってかけてあげようとするとフェリクスは慌てた様子でそれをひったくった。
……そんなに慌てて奪い返さなくても壊したりなんかしないのに。そんなに大切なものなのかしら。まあ、眼鏡が壊れたら物が見えなくなるでしょうからそりゃ困るわよね。
でも他人様のメガネを簡単に壊すほど私うっかり者ではないわ。よほど信頼されていないのかしら。
私の考えごとをよそに眼鏡をかけたフェリクスが朗らかに言う。
「ティアロットの薬草を取ってくるのはさぞかし大変だったろう? 本当にありがとう」
「とんでもありませんわ。私ときたら、ルーク様に止められていたのに一人で森へ行って、結局ルーク様に助けられる始末で……」
……全くその通り。私は自分の不始末がただただ恥ずかしい限りです。
「ルーク様から聞いたよ。でも君とルーク様が無事で本当に良かった」
「もっと訓練して魔力を磨かなければ駄目ですね」
「そんなことはないさ、君はよくやってるよ」
フェリクスがそんな優しい言葉をかけてくれる。
「……ルーク様はやっぱり君のことをすごく気にかけているんだね。ルーク様はどうも君に好意を抱いているように見えるけれど、エマの方は実際ルーク様のことどう思っているの?」
ず、ずいぶん単刀直入に聞くのね?! 急にフェリクスからそんなことを尋ねられて私は驚きのあまり咳払いをした。
まったくフェリクスったら、体調が回復したと思ったら一体急に何を言い出すのかしら。ルーク様が私に好意なんてそんなことあるわけ……あるわけ? ない……ってこともないかもしれないですけど……。
私は私を見つめるルーク様の意味深なまなざしを思い返した。
あれが私に対する特別な気持ちの表れだなんて、そ、そんなことを認めたらまったくもって自意識過剰みたいですわ。
「そ、それはフェリクスの勘違いです」
「……そうかな? ルーク様は君に対しては随分優しいように思えるけど」
「ま、万が一そうだとしても……」
私は続けた。
「それはきっとルーク様の一時の気の迷いです」
私の返答にフェリクスは釈然としないという表情を浮かべる。
「……そうとは限らないんじゃないかな? 君は王太子妃になりたくはないの?」
フェリクスが私にそう尋ねる。
「まあ正直に申し上げますと……全くなりたくはありませんね」
私がそうきっぱりはっきり答えると、フェリクスは意外そうな顔をした。
……そんなに意外な回答だったかしら? だけど私、本当に王太子妃になるなんて興味はないのよね。だってそれって結局はお飾りということでしょう?
国民全員から選ばれてなる王太子妃なら価値はありそうだけど、今私がルーク様に選ばれて王太子妃になったところで、それは単に王太子に愛された女ということを意味するだけのことであって、私自身の能力や価値が評価されたわけでもなんでもないわよね?
それはそれで価値のあることだと言う人もいるでしょうけど、ただ愛されているというだけの立場はなんだかすごく不安定なものに私には思える。そんなことよりも今の私はまずは誰の力を借りなくとも自由に自分の意思を実現できる立場でありたいわ。
「私に王太子妃なんて荷が重すぎますし、他にもっとしたいことがありますから」
「君のしたいことってなんだい?」
フェリクスからそう尋ねられ、私は答えた。
「そうですね……例えば……たくさんお金を貯めてみなし子たちを教育する施設をつくりたいわ」
それはかつて幼い頃の私が望んだことだった。
「生まれ育った環境で教育を受けられない子どもがいることは王国全体にとっても大きな損失ですもの。そしてそれを実現するにはお金が必要だわ。そうして教育された子どもたちはきっと国の力になりますわ」
「なるほど、それはいいね」
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私は以前から気になっていたことをフェリクスに尋ねた。
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