変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi

文字の大きさ
26 / 56

妹ざまぁ その2

しおりを挟む
「国王の義理の姪にってその前に……、今のあなた、王太子殺害の重要容疑者なのですわよ?」

  私の言葉にユリアは何を言っているのだろうという表情を浮かべる。

「……あのう、お姉さま? おっしゃっている意味が分かりかねますけれど」

  ユリアが尋ねる。私の代わりにフェリクスが口を開いた。

「……まあ順に説明しよう。君は先ほど予言者の言葉は外れたと言っていたがそれは適切ではない」

「はあ」

「まず公にされている王太子の誕生日は本当の俺の誕生日ではない。王族の公にされている生年月日は基本的にすべて嘘だ」

「どうしてですの?」

「正確な生まれ月と日が分かると闇魔法の呪術などに利用される可能性があるからな。俺の正確な誕生日は明日。つまり俺はまだ20歳を迎えてはいない」

  フェリクスの話に焦れたようにユリアが言う。

「ですから、それが一体なんだって言うのです?」

「つまり俺の死の運命はまだ去ってはいない。今日がその最後の日だった。そしてその最後の日に、偽の王太子であるルークに薬を盛った人間がいる。それが君だ」

「薬って……そんなもの盛った覚えはありませんし、仮に盛っていたとしたって人を死なせるようなものではないでしょう。現にルークはこうして生きていますし……。一体さっきからなんのお話をしているのか……」

  ユリアが話している途中で部屋のドアがノックされた。先ほどルークの血液を調べるよう持たせた王国の使者が検査結果を持って戻って来たらしい。検査結果を聞いた私はユリアに向かって言う。

「……ユリアちゃん、やっぱりあなた、ルークに媚薬を盛ったのね?」

「……なっ?! 媚薬だと?! 道理でおかしいと思った……!」

  私の言葉を聞いたルークが小さく叫んだ。

「王室直属の薬師から報告があったわ。先ほど採取したルークの血液から多量のラブシーズの花粉の成分が検出されたって」

「そんなこと言われても私にはなんのことかさっぱりわかりませんわ」

  ユリアの言葉にルークが言う。

「俺は昨日、家で取った朝食以外には君が淹れてくれた紅茶しか飲んでいない。もしなんらかの薬を飲まされたとすればあの紅茶しか考えられない」

「……で、ですけれど……」

「これがあなたが王太子殺害の容疑者である証拠よ」

「ですから……っ! 仮に私が何かの薬をルーク様に飲ませていたとしても、あくまでも検出されたのは媚薬のラブシーズの成分なのですわよね? そんなもので人が死ぬことは……!」

「あるのよ」

  私は言った。

「フェリクスはラブシーズの花粉にアレルギーを持っているの。それもかなり危険なレベルの」

  それはこの間、学園の教室でたまたま知った事実だった。

「え……?」

「もしルークがフェリクスと入れ替わっていなかったとして、媚薬を盛られたのがフェリクスだったとしたら、フェリクスは今頃アナフィラキシーショックを起こして死んでしまっていたことでしょうね」

「なっ……?!」

「アナフィラキシー……博学なユリアちゃんならもちろんご存知よね? アレルギー源に対する体の免疫反応が強すぎて死に至ってしまうことのある病態よ。検査してみたら、ルークは通常の媚薬に用いられる量の10倍の量のラブシーズを飲まされていたみたいね。もーうユリアちゃんったらやりすぎだわぁ」

  ユリアは黙って私の言葉を聞いている。

「つまり予言者の言っていた『王太子を殺害する光の魔術師』というのはあなたのことだったということよ」

「な……な……、ま、待って! でも私はルーク様とフェリクスが入れ替わっていることも、フェリクスがラブシーズの花粉にアレルギーを持っていることも知らなかったわ!」

「それはそうでしょうけど……もしあなたが盛った媚薬で王太子が死亡してしまっていたらそんな言い逃れは通用しなかったであろうことくらい、あなたにだって分かるでしょう? ルークとフェリクスが入れ替わっていたことによって本物の王太子であるフェリクスは死を免れた。ユリアちゃん、そうなればあなたは王太子殺害の実行犯になってしまっていたところですのよ? あなたも命拾いしましたわねぇ、」

「本来なら先日の王太子即位のパレードに俺が正式に顔出しをして入れ替わりが終わる予定だった。国王もここまで俺の身に何も起こらなかったことに安堵していて、即位を数週間早まらせたところで問題はないだろうと楽観視していたからな。だが俺とルークの入れ替わりに気付いていたエマの助言で正確な誕生日まで即位を遅らせることにした。まさかそれによって本当にこうして命拾いすることになるとはな」

  フェリクスがそう事の顛末を説明する。ユリアの思惑に気がついた私はルークとフェリクスの入れ替わり期間を延長させることをフェリクスに提案していたのだ。

  ユリアの顔色が青ざめる。

「で、ですけれど、実際に私が媚薬を盛ったのはルークですし、結局はこうして何事も起こらず済んでいるわけですから……」

「あら、じゃあルークに媚薬を盛ったのは認めるのね?」

「み、認めるわけないじゃありませんの!」

「ならこのルークの血液を正式に調査機関に提出するしかなさそうねぇ。そうでなければ無理やりあなたと結婚させられてしまうルークが可哀想だもの。だけどそうなったらどんな大ごとになるか分かっているかしら? ユリアちゃん?」

「……っ」

「偽物とは言え王太子におかしな薬を盛ってしまったんですものねぇ。しかももし王太子が本物だったら死んでしまっていたはずの薬よ? なにか陰謀めいたものを疑われて拷問でもされてしまうかもしれないわねぇ」

  ユリアは黙って聞いている。

「ルークに媚薬を盛って睦言を引き出したことをこの場で認めるのなら、すべてはこの場限りのことで納めてあげますわよ? だけどそれを拒否するのであれば……あなたもきっととことんまで調べ上げられることになるでしょうね」

「だ、だけど私は本当にフェリクスとの入れ替わりのこともフェリクスのアレルギーのことも本当に知らなかったのよ……!」

  ユリアの言葉に私は慈愛の表情を浮かべて言う。

「それは可愛い可愛い妹のユリアちゃんの言うことですもの、私は信じますけれども……。果たして王国の調査官の方たちはどうかしらねぇ? ならどうしてルークに媚薬を盛ったのか? そのことからじっくりねっとり調べ上げられるかもしれませんわねぇ」

「……くぅぅぅっ」

  ユリアが白目を剥いて獣のように唸った。……ちょっと怖いんですけど。ユリアは観念したのか絞り出すような声で答えた。

「わかりましたわ……。私がルークに媚薬を盛りました……! これでよろしくてっっっ?!」

「うふふ、わかってくれたのならそれでいいのよユリアちゃん。これに懲りたら、誰かれ構わず媚薬を盛るのはおやめになることね? 単なる媚薬ってユリアちゃんは思っているかもしれないですけれど、それによって命を落とすことだってあるんですのよ?」

  ユリアは顔を真っ赤にして私を睨んでいた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

悪役令嬢、追放先の貧乏診療所をおばあちゃんの知恵で立て直したら大聖女にジョブチェン?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜

華梨ふらわー
恋愛
第二王子との婚約を破棄されてしまった主人公・グレイス。しかし婚約破棄された瞬間、自分が乙女ゲーム『どきどきプリンセスッ!2』の世界に悪役令嬢として転生したことに気付く。婚約破棄に怒り狂った父親に絶縁され、貧乏診療所の医師との結婚させられることに。 日本では主婦のヒエラルキーにおいて上位に位置する『医者の嫁』。意外に悪くない追放先……と思いきや、貧乏すぎて患者より先に診療所が倒れそう。現代医学の知識でチートするのが王道だが、前世も現世でも医療知識は皆無。仕方ないので前世、大好きだったおばあちゃんが教えてくれた知恵で診療所を立て直す!次第に周囲から尊敬され、悪役令嬢から大聖女として崇められるように。 しかし婚約者の医者はなぜか結婚を頑なに拒む。診療所は立て直せそうですが、『医者の嫁』ハッピーセレブライフ計画は全く進捗しないんですが…。 続編『悪役令嬢、モフモフ温泉をおばあちゃんの知恵で立て直したら王妃にジョブチェン?! 〜やっぱり『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件~』を6月15日から連載スタートしました。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/500576978/161276574 完結しているのですが、【キースのメモ】を追記しております。 おばあちゃんの知恵やレシピをまとめたものになります。 合わせてお楽しみいただければと思います。

「この結婚はなかったことにしてほしい、お互いのためだ」と言われましたが……ごめんなさい!私は代役です

涙乃(るの)
恋愛
男爵家の双子の姉妹のフィオーリとクリスティナは、髪色以外はよく似ている。 姉のフィオーリ宛にとある伯爵家から結婚の申し込みが。 結婚式の1ヶ月前に伯爵家へと住まいを移すように提案されると、フィオーリはクリスティナへ式までの代役を依頼する。 「クリスティナ、大丈夫。絶対にバレないから! 結婚式に入れ替われば問題ないから。お願い」 いえいえいえ、問題しかないと思いますよ。 ゆるい設定世界観です

令嬢から成り下がったメイドの分際で、侯爵様と目が合ってしまって

真好
恋愛
彼はメイドの私に手を差し出した。「私と、踊っていただけませんか?」 かつては公爵令嬢として、誰もが羨む生活を送っていたエルナ。 しかし、国家反逆罪で家は没落し、今は嫌な貴族の下で働く「身分落ち」のメイド。 二度と表舞台に立つことなどないはずだった。 あの日の豪華絢爛な舞踏会で、彼と目が合うまでは。 アルフォンス・ベルンハルト侯爵。 冷徹な「戦場の英雄」として国中の注目を集める、今もっともホットで、もっとも手が届かない男。 退屈そうに会場を見渡していた彼の視線が、影に徹していた私を捉えて。 彼は真っ直ぐに歩み寄り、埃まみれの私に手を差し出した。 「私と、踊っていただけませんか?」 メイドの分際で、英雄のパートナー!? 前代未聞のスキャンダルから始まる逆転劇。

ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人
恋愛
 私は冒険者ギルド職員ロックウィーナ。25歳の女で担当は回収役。冒険者の落し物、遺品、時には冒険者自体をも背負います!  素敵な恋愛に憧れているのに培われるのは筋肉だけ。  しかし無駄に顔が良い先輩と出動した先で、行き倒れた美形剣士を背負ってから私の人生は一変。初のモテ期が到来です!!  ……とか思ってウハウハしていたら何やら不穏な空気。ええ!?  私の選択次第で世界がループして崩壊の危機!? そんな結末は認めない!!!! ※【エブリスタ】でも公開しています。  【エブリスタ小説大賞2023 講談社 女性コミック9誌合同マンガ原作賞】で優秀作品に選ばれました。

追放された悪役令嬢は貧乏になっても図太く生きますわ!

ワールド
恋愛
貴族の娘として生まれた公爵令嬢クラリッサ。 陰謀の濡れ衣を着せられ、華やかな社交界から追放――そして辿り着いたのは、ボロ小屋と畑だけの辺境村!? 「結構ですわ! 紅茶がなければハーブティーを淹れればいいじゃありませんの!」 貧乏生活でも持ち前の図太さで、村の改革に乗り出すクラリッサ。 貧乏でも優雅に、下剋上でも気高く! そんな彼女の前に現れたのは、前世(王都)で彼女を陥れた元婚約者……ではなく、なぜか彼の弟で村に潜伏していた元騎士で――? 「俺は見てた。貴女の“ざまぁ”は、きっとまだ終わっちゃいない。」 ざまぁとスローライフ、そしてちょっとの恋。 令嬢、辺境で図太く咲き誇ります!

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

【完結】あなたに抱きしめられたくてー。

彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。 そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。 やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。 大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。 同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。    *ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。  もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。

処理中です...