聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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【10話】

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 突然だがサイヒは大のお風呂好きである。
 カカンは浴場設備がかなり整っていた方なので、入浴には特に困った事は無い。
 それでも5日に1回は同盟国である隣国の”温泉と宝石の国スティルグマ”に、わざわざ温泉に浸かり良く位にはお風呂が好きだ。
 
 ガフティラベルはスティルグマの反対側の隣国のため温泉設備はそれほどない。
 入浴文化は発達しているので浴場設備は整ってはいるが。

 サイヒ的には隣国に行くならまずはスティルグマに向かいたかった。
 そうすれば毎日温泉に入りたい放題だ。
 だが同盟国であるが故、サイヒの名前と容姿はスティルグマでは一般人にもカカンの聖女だと認識されてしまう。

 仕方なしにガフティラベルを選んだのである。

 旅人の国というだけあって、どんな人間でも受け入れるガフティラベルは身を隠すに最適だった。
 更には後宮に宦官として潜り込んでいるので、いくらカカンの者が探してもおいそれと見つかることは無いだろう。
 手のかかる友人や妹分も出来てそれなりに快適に暮らしている。

 だが問題がある。

 サイヒは今宦官だ。
 女風呂に入る訳にはいかない。

 だからと言って宦官用の風呂に入るなどもっての外だ。
 あいつ等は竿と玉が無いだけで性別はしっかり男である。

 第1皇太子妃のスカート捲れ事件以来宦官の間ではカスタットが無毛である事は有名である。
 あの場にいた5人の宦官によって噂が流れたのだ。
 それ以来、宦官のカスタットを見る目には下卑た光が宿されている。
 心のチ〇コは殆どの宦官の中で健在しているようだ。
 そのようなオオカミと一緒に風呂に入るなど言語道断だった。

 なので後宮に入ってから2か月、サイヒは風呂に入っていない。

 ここで勘違いしないで貰いたいのは、風呂に入っていないと言うだけで清潔は保たせていると言うことだ。
 カカンには1000年前に聖女召喚した時の魔術師長が作ったとされる”シャボンミストボール”と言う名の変わった魔道具がある。
 【消臭】と【浄化】の魔力が込められている丸い小さな水晶玉だ。
 魔力を込めると発動する。

 【発動】

 サイヒから力ある言葉が発生される。
 同時に暖かいミストがサイヒを包み込んだ。
 一瞬でミストは消えたがその一瞬で起きた超常現象。
 その一瞬で身体だけでなく着込んでいた服も下着から何から洗い立てのような爽快感だ。

「うん、綺麗にはなるのだが満足感が物足りんのだよな……」

 服から何から洗濯もしなくて良いので大変便利ではあるのだが。

「我慢の限界だ。【認識阻害】の術を使って女風呂に行くとしよう!」

 サイヒは念のためと持参してきたお風呂セットを持って侍女専用の女風呂へ向かった。

 :::

 【認識妨害】の術を使っているサイヒは宦官姿のまま堂々と女子風呂へ入る。
 悲鳴は聞こえない。
 うまく起動しているようだ。

 服は魔道具で綺麗にしいるので帰りに着ても問題ないだろう。
 ハラリと服を脱いでいくサイヒの服の下には晒が巻いてある。
 無駄に大きい胸を押しつぶす為だ。

 晒を取るとサイヒの豊満なバストが露になる。
 胸は大きいがウエストには無駄な贅肉は付いていない。
 どころか綺麗な曲線を描いてくびれている。
 下腿の衣類を脱ぐと筋肉で締った尻と足が露になる。
 ヒップはキュ、と上がり、カスタットにも負けない美脚をしている。

 【認識阻害】の魔術が働いているのにも関わらずやたらと視線を感じる。

 視線の方に顔を向けると顔を赤くした少女たちがバッ、と顔を背けた。

(おかしい…何故か目立っている気がする…?)

 【認識阻害】の魔術は可能な限り存在感を消し、術者が何者であるか認識させない魔術だ。
 現に今、サイヒが宦官職であると気づいている者はいない。

 サイヒは気づいていなかった。
 自分の魅力にちゃんと気付いていなかったと言うべきか。
 サイヒが己にかけた【認識阻害】の魔術は軽いものだ。
 それで大丈夫だと思っていた。 
 宦官の姿でも騒がれることも無かったし術はちゃんと発動している。
 それ以上に裸体のサイヒの存在感が上まっているのだ。

 解かれた艶やかな黒髪もサラリと背中に広がって美しい。

 ほう、と溜息をつく少女たち。
 まるで絵から出て来たかのような理想的な裸体。
 同性でも見惚れる程だ。

 視線を感じて訝しげに首を捻りながらもサイヒは浴場へと足を向けた。

 :::

 浴場でも視線が注がれる。

 解せぬ。

 確かに【認識阻害】の魔術は働いているはずだ。
 現にサイヒを=宦官のサイヒと認識している者はいない。

「あの、お姉様。隣よろしいでしょうか?」

「綺麗な黒髪です。どんなお手入れをされていらっしゃるの?」

「肌も肌理細やかでお美しいですわ…」

 なぜ自分はこれ程女官たちに囲まれているのだろう?
 サイヒはまた首を捻った。

 やたらと自分に関わろうとする女官たちを押しのけてサイヒはようやく浴槽に浸かることが出来た。

「ふ~~~~っ」

 暖かい湯が骨身に染みる。
 久しぶりの風呂はサイヒを大いに満足させた。
 足を伸ばせるのも嬉しい。
 サイヒは恍惚の笑顔を浮かべる。

「「「「「はぁ~~~~っ」」」」」

 サイヒを見て女官たちが溜息をつく。
 同じ女なのに見惚れてしまう。

(しかしこの視線はどうにかならんものか…?)

 無事入浴はすませたものの、やたらと精神的に疲れてしまった。

 こんな時、自分専用の浴場をもつ皇太子妃たちが羨ましくなる。

「流石にコレはマロンにもねだれんしなぁ…」

 これからは入浴は外の銭湯ですまそうとサイヒは心に決めた。
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