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【13話】
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現在サイヒとルークは宦官用の食堂でランチタイムだ。
今日のメニューはサイヒがオムライス。
ルークが魚のA定食であった。
相変わらずあーん”をしながらお互いのメニューを分け合う。
【認識阻害】の術がかけられていなかったらサイヒはゲイだと思われていただろう。
実際には女なのでノーマルなのだが。
それ以前にサイヒはルークに庇護愛と友情を感じているが恋愛感情はない。
ルークにとってもサイヒは生まれて初めての親友であり恋愛感情はない。
ただサイヒの性格と匂いには惚れ込んでいるが、恋愛感情に結びつけていない。
この2人に恋愛感情は芽生える日は来るのだろうか?
「この後は魔の森に行くのだろう?式神の方は大丈夫なのか?」
ルークが心配げに聞いてくる。
それはそうだろう。
大陸中探しても同時に複数の術を扱えるものは殆ど存在しない。
「別に式神を作動させながら戦闘するのは無理じゃないぞ?今回使う魔術は【式神】【隠匿】【飛行】【結界】の4つだから問題ない」
「同時に4つも術を使えるのか!?」
「5つ迄なら同時使用したことはある。実際の処同時に5つ以上術を使ったこと無いから限界は分からないな」
ふむ、とサイヒが考え込む。
ルークも外の世界と言うものをあまり知らないので、サイヒがそう言うならそうなのだろうと納得する。
実際の処、大陸中探しても5つ同時に術を行使出来る者など何百年単位でしか現れはしない。
世間知らずの2人はそんな事は知らない。
もし2人の会話を認識出来る者が居たならサイヒは皇帝陛下の前に連れて行かれるだろう。
それ程に同時に術を行使できることは物凄い事なのだ。
天然2人は事の大きさを理解していない。
2人とも天然の世間知らずだからこそ気が合うのかもしれない。
実際にはルークがサイヒの匂いを気に入っているように、遺伝子レベルで相性が良いのだが。
人間はより遺伝子が違う異性に惹かれる。
複数の遺伝を獲得して強い子孫を残すためだ。
かわりに遺伝子の近い近親者の匂いはあまり心地よくは感じないだろう。
そこ迄に惹かれ合っているのに恋愛感情に移行しない2人はとんでもないレベルで恋愛に興味が無いのだろう。
まぁサイヒは男装をしているし、男同士の付き合いをしているのだから恋愛に発達しないのも無理な話なのかもしれない。
:::
「お兄様。約束していたクグロフです♡」
ランチボックスと水筒をマロンがサイヒに渡す。
今日は武道大会に向けて軽く腕慣らしをしてくるのだと聞いていたので、持ち運びのできる菓子を用意してくれていたのだ。
「ありがとうマロン。疲れた時には甘味は良いからな。有難く食べさせて貰う」
「はい。お兄様のお友達様も召し上がって下さいね」
ニッコリとマロンが笑う。
無垢な笑顔は魅力的だ。
男性としてはそれほど身長が無いサイヒと並んでもマロンは15センチほど低いので並んでいるとお似合いのカップルに見える。
「あぁ、私も有難くいただく。この前のクッキーも美味しかったので期待している」
「お口に合えば良いのですが。たっぷりあるので是非食べて下さい。お兄様、独り占めしたらいけませんわよ?」
大人ぶっていてもマロンの可憐さは失われない。
むしろ少女の背伸びが愛らしく感じるだろう。
愛らしい顔。
鈴を転がしたような可憐な声。
サイヒを見つめる熱の籠った大きな瞳。
献身的な優しい性格。
サイヒとマロンは誰が見てもお似合いだろう。
事実ルークもそう思った。
ズキリ
ルークの胸に痛みが走る。
サイヒの法術で体は完全に健康体であるはずなのに。
(今日は術の効き目が悪かったのだろうか?後でサイヒに見て貰おう)
サイヒの法術に信頼をしていながらも、そう考えてしまうくらい胸が痛かった。
「ルーク、裏の広場に行くぞ」
「あぁ分かった。差し入れを有難う第3皇太子妃」
「いえ、お兄様もお友達様も気を付けて行って下さいまし」
笑顔で見送るマロンを見て、ルークは再び胸の痛みを感じるのだった。
:::
「さて抜け出すのを見られないように【隠匿】の魔術を使う。同時に【飛行】の魔術を扱うから私にしっかり摑まっておけよ」
言うがいなやサイヒはルークの腰を抱き寄せた。
いきなり体が密着してルークの心臓がドキリと跳ねる。
ルークはサイヒの首に腕を廻す。
その首筋に顔を埋めた。
(あぁやはりサイヒの匂いは落ち着く…先程の胸の痛みが嘘みたいに引いていく……)
「心音が速いな、飛行に緊張しているのか?」
「そうかも知れない…」
「心配するな、絶対落としはしない。ルークは私にしっかり抱き着いていれば大丈夫だ」
「うん」
ギュッ、とルークはサイヒに抱き着く。
サイヒのルークを抱きしめる力が強まった。
それだけでルークは幸せを覚える。
フワリ、と2人の体が宙に浮く。
そしてドラゴンも真っ青なスピードで空を駆けた。
:::
「空を飛んだのは初めてだ。【飛行】の魔術は普通の魔術師が使う空を飛ぶ魔術とは違いがあるのか?こんなスピードで人が空を飛べるなんて聞いたことがない。それにしても空から見る景色の雄大さに驚いた。地平線まで見る事が出来るなんて思いもしなかった!」
頬を上気させ珍しく興奮したルークがサイヒに尋ねる。
「あぁ、普通の魔術師は【無重力】の術を使って浮いた体を【風】の魔術で操作するからな。2つ同時に魔術制御をしなければならないし、まず【重力】の魔術を使えるものが事態が少ないからな。私に言わせれば要領が悪過ぎる。【飛行】の術式をしっかり編めば単独の魔術で飛べるし、スピードもでる。まぁスピードについては個人差があるだろうが」
「サイヒは何時も私に奇跡を見せてくれる」
うっとりとルークがサイヒを見つめる。
流石にサイヒもルークほどの美貌の持ち主にそんな表情をされて、何とも思わないほど情緒が無いわけでは無い。
(うむ、凄まじい美貌だ。私でもクラリと来そうだぞ…にしても本当に庇護欲を擽るな)
サイヒがルークの頭をわしゃわしゃと撫でる。
マロンと違ってヘアーセットを気にしなくて良いので、少々手荒に扱っても問題ない。
「?」
「ルークは可愛いな」
「可愛い!?可愛いのは第3皇太子妃のような少女の事を言わないか普通は?」
「いや、私から見ればルークもマロンに劣らず可愛いぞ」
にこりとサイヒに微笑まれルークは耳まで真っ赤になった。
今日のメニューはサイヒがオムライス。
ルークが魚のA定食であった。
相変わらずあーん”をしながらお互いのメニューを分け合う。
【認識阻害】の術がかけられていなかったらサイヒはゲイだと思われていただろう。
実際には女なのでノーマルなのだが。
それ以前にサイヒはルークに庇護愛と友情を感じているが恋愛感情はない。
ルークにとってもサイヒは生まれて初めての親友であり恋愛感情はない。
ただサイヒの性格と匂いには惚れ込んでいるが、恋愛感情に結びつけていない。
この2人に恋愛感情は芽生える日は来るのだろうか?
「この後は魔の森に行くのだろう?式神の方は大丈夫なのか?」
ルークが心配げに聞いてくる。
それはそうだろう。
大陸中探しても同時に複数の術を扱えるものは殆ど存在しない。
「別に式神を作動させながら戦闘するのは無理じゃないぞ?今回使う魔術は【式神】【隠匿】【飛行】【結界】の4つだから問題ない」
「同時に4つも術を使えるのか!?」
「5つ迄なら同時使用したことはある。実際の処同時に5つ以上術を使ったこと無いから限界は分からないな」
ふむ、とサイヒが考え込む。
ルークも外の世界と言うものをあまり知らないので、サイヒがそう言うならそうなのだろうと納得する。
実際の処、大陸中探しても5つ同時に術を行使出来る者など何百年単位でしか現れはしない。
世間知らずの2人はそんな事は知らない。
もし2人の会話を認識出来る者が居たならサイヒは皇帝陛下の前に連れて行かれるだろう。
それ程に同時に術を行使できることは物凄い事なのだ。
天然2人は事の大きさを理解していない。
2人とも天然の世間知らずだからこそ気が合うのかもしれない。
実際にはルークがサイヒの匂いを気に入っているように、遺伝子レベルで相性が良いのだが。
人間はより遺伝子が違う異性に惹かれる。
複数の遺伝を獲得して強い子孫を残すためだ。
かわりに遺伝子の近い近親者の匂いはあまり心地よくは感じないだろう。
そこ迄に惹かれ合っているのに恋愛感情に移行しない2人はとんでもないレベルで恋愛に興味が無いのだろう。
まぁサイヒは男装をしているし、男同士の付き合いをしているのだから恋愛に発達しないのも無理な話なのかもしれない。
:::
「お兄様。約束していたクグロフです♡」
ランチボックスと水筒をマロンがサイヒに渡す。
今日は武道大会に向けて軽く腕慣らしをしてくるのだと聞いていたので、持ち運びのできる菓子を用意してくれていたのだ。
「ありがとうマロン。疲れた時には甘味は良いからな。有難く食べさせて貰う」
「はい。お兄様のお友達様も召し上がって下さいね」
ニッコリとマロンが笑う。
無垢な笑顔は魅力的だ。
男性としてはそれほど身長が無いサイヒと並んでもマロンは15センチほど低いので並んでいるとお似合いのカップルに見える。
「あぁ、私も有難くいただく。この前のクッキーも美味しかったので期待している」
「お口に合えば良いのですが。たっぷりあるので是非食べて下さい。お兄様、独り占めしたらいけませんわよ?」
大人ぶっていてもマロンの可憐さは失われない。
むしろ少女の背伸びが愛らしく感じるだろう。
愛らしい顔。
鈴を転がしたような可憐な声。
サイヒを見つめる熱の籠った大きな瞳。
献身的な優しい性格。
サイヒとマロンは誰が見てもお似合いだろう。
事実ルークもそう思った。
ズキリ
ルークの胸に痛みが走る。
サイヒの法術で体は完全に健康体であるはずなのに。
(今日は術の効き目が悪かったのだろうか?後でサイヒに見て貰おう)
サイヒの法術に信頼をしていながらも、そう考えてしまうくらい胸が痛かった。
「ルーク、裏の広場に行くぞ」
「あぁ分かった。差し入れを有難う第3皇太子妃」
「いえ、お兄様もお友達様も気を付けて行って下さいまし」
笑顔で見送るマロンを見て、ルークは再び胸の痛みを感じるのだった。
:::
「さて抜け出すのを見られないように【隠匿】の魔術を使う。同時に【飛行】の魔術を扱うから私にしっかり摑まっておけよ」
言うがいなやサイヒはルークの腰を抱き寄せた。
いきなり体が密着してルークの心臓がドキリと跳ねる。
ルークはサイヒの首に腕を廻す。
その首筋に顔を埋めた。
(あぁやはりサイヒの匂いは落ち着く…先程の胸の痛みが嘘みたいに引いていく……)
「心音が速いな、飛行に緊張しているのか?」
「そうかも知れない…」
「心配するな、絶対落としはしない。ルークは私にしっかり抱き着いていれば大丈夫だ」
「うん」
ギュッ、とルークはサイヒに抱き着く。
サイヒのルークを抱きしめる力が強まった。
それだけでルークは幸せを覚える。
フワリ、と2人の体が宙に浮く。
そしてドラゴンも真っ青なスピードで空を駆けた。
:::
「空を飛んだのは初めてだ。【飛行】の魔術は普通の魔術師が使う空を飛ぶ魔術とは違いがあるのか?こんなスピードで人が空を飛べるなんて聞いたことがない。それにしても空から見る景色の雄大さに驚いた。地平線まで見る事が出来るなんて思いもしなかった!」
頬を上気させ珍しく興奮したルークがサイヒに尋ねる。
「あぁ、普通の魔術師は【無重力】の術を使って浮いた体を【風】の魔術で操作するからな。2つ同時に魔術制御をしなければならないし、まず【重力】の魔術を使えるものが事態が少ないからな。私に言わせれば要領が悪過ぎる。【飛行】の術式をしっかり編めば単独の魔術で飛べるし、スピードもでる。まぁスピードについては個人差があるだろうが」
「サイヒは何時も私に奇跡を見せてくれる」
うっとりとルークがサイヒを見つめる。
流石にサイヒもルークほどの美貌の持ち主にそんな表情をされて、何とも思わないほど情緒が無いわけでは無い。
(うむ、凄まじい美貌だ。私でもクラリと来そうだぞ…にしても本当に庇護欲を擽るな)
サイヒがルークの頭をわしゃわしゃと撫でる。
マロンと違ってヘアーセットを気にしなくて良いので、少々手荒に扱っても問題ない。
「?」
「ルークは可愛いな」
「可愛い!?可愛いのは第3皇太子妃のような少女の事を言わないか普通は?」
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