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【18話】
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クオンは焦っていた。
この目の前の宦官が敵か味方か分からない。
敵ならば速やかに処理しなければならない。
だがもし味方なら?
サイヒの魔術の能力はクオンの精霊眼をも上回る。
味方に出来るならこれ程力強い者はいない。
ただでさえ今政権は2つに分かれようとしているのだ。
ルークは兄の様に慕っているが、従兄弟であるアンドゥアイスをクオンは信用していなかった。
アンドゥアイスはあまりにも完璧だ。
貴族たちにはアンドゥアイスを皇帝にと望む者も存在する。
アンドゥアイス自身は己はルークの補佐として国を支えると宣言しているが、クオンはその言葉を信用出来ない。
清廉潔白の身なら、何故時折その体に暗い魔力粒子を纏わせているのか?
アレは間違いなく”負”の魔術の残り香だ。
精霊眼を持つクオンだからこそ見抜くことが出来た。
しかしクオンが声を上げたとて、アンドゥアイスはすでに皆から支持を受けている。
口に出せば下手をしたら不敬罪でクオンが処理されるだろう。
それではルークを護ることが出来ない。
何か決定的な証拠があればクオンも動くことが出来るのだが。
何よりルーク自身がアンドゥアイスを慕っていることが糾弾出来ない1番の理由であった。
(もしこの宦官が本当に殿下のに好意を抱いているなら、味方としては申し分ないのだが…)
「どうしたクオン、顔が怖いぞ」
「殿下は呑気で良いですね…」
「失礼な。これでも私は皇太子としての務めは果たしているつもりだぞ?」
「まぁ皇太子としての働きは申し分ないのですが…仕事を離れるとマイペースですからね。普段からもう少し気を張って頂きたいのですが……最近は出歩くようになったとは言え、少し前まではずっと自室に籠りきりできたからね……」
はぁ、と溜息をつくクオンにサイヒが否定の言葉をあげた。
「それは仕方ない。むしろあれだけ体が毒に侵されて、良く皇太子としての務めを果たせていたと思うぞ?」
「毒?」
「そう毒だ。随分内臓が侵されていた。ほおっておいたら後1年もルークは生きられなかったはずだ。よくアレで誰にも気づかせずに公務を務めあげていたものだ」
「毒など…俺の精霊眼でも殿下に呪いも【毒】の魔術もかけられてはいなかったぞ?」
「あぁ、アンタは精霊眼があるからソレに頼り過ぎているな。毒と言っても魔術は関係ない。ポピュラーに使われる一般的な経口摂取するタイプの毒だ。おそらく毒を摂取させられているのに気づかせないために、何年もかけて微量を体に蓄積させるようにしていたのだろうな」
サイヒの言葉にクオンの顔が蒼ざめる。
もしこの言葉が真実ならルークの敵は既に身近にいる事となる。
「殿下!真実なのですか!?」
「私自身にも自覚は無かったがサイヒの言うことは真実だと思っている。サイヒと出会ったのも、この場で倒れている私をサイヒが助けてくれたのが始まりだ」
「大したことはしておらんぞ?あまりに弱っていたから【解毒】【治癒】【体力回復】の法術をかけただけだ」
「法術?お前は魔術師ではないのか!?」
「一応、魔術も法術も扱える」
「サイヒは術なしでの戦闘でも凄いのだぞ!」
何故かルークが自慢げである。
「魔術と法術が使える?ではお前は”賢者”なのか!?」
クオンが驚きの声をあげる。
魔術師と賢者では話が違い過ぎる。
賢者など大陸中を探しても両手で足りるかどうかの人数しか存在しないのだ。
その賢者が後宮に潜り込んでいる?
全くもって意味が分からない。
「ルーク、私は賢者なのか?」
「クオンが言うならそうではないだろうか?」
2人して首を傾げる。
「賢者なら俺の目で見抜けないのもわかる。それより、本当に殿下は毒に侵されていたのか?」
クオンの問いに答えたのはルークだった。
「ずっと黙ってはいたが、日常生活をこなすだけで体中に激痛が走るくらいには辛かったな」
「何故おっしゃってくれなかったのですか!?」
「医者に体を見せても問題ないと言われていたからな。時間が解決するだろうとほおっておいた。まさか自分の寿命が後1年まで弱っているとは思わなかったがな」
ルークが自嘲気味に笑う。
「今でも何らかの形で毒を摂取せさられているぞ。毎日の昼寝は【解毒】と【体力回復】の法術をけかけるためにしている日課だからな」
「なっ、今でも毎日!?」
「ルークは毒に慣れ過ぎて1日くらいなら毒が体に入っても無自覚だからな…昼寝と言う形で毎日術をかけているが、もう少し自衛の手段を身に着けるべきだな。前に言っていた法術の訓練も武道大会が終わったら本格的に始めよう」
「それは楽しみだな」
呑気に笑っている2人を見ながらも、クオンは足元が崩れて落ちていくような感覚を味わった。
自分の仕えている主が毒に侵されていた?
残りの寿命が後1年だった?
クオンは己の持てる力の限りルークを護ってきたつもりだ。
つもりだった。
だが現実には全然護れていなかったのだ。
「では誰がどのように毒を……?」
「普通に考えて飲食物に紛れ込ませていたのだと考えるのが当たりだろうな」
「しかし殿下には専用の毒見役が付いている。あの毒見役から魔力は検知できない。どう解毒を行っていたと言うのだ?もう5年も殿下専用の毒見をはたしているのだぞ?」
「毎日摂取するのは本当に少しずつだからな。【解毒】の術を使わなくても後で毒消し草を使っていたか?」
「いや、それなら監視にバレるはずだ」
クオンが答える。
「なら思いつくのは魔石だな」
「「魔石?」」
ルークとクオンの声が重なる。
「本来デメリットが多すぎてそんな手段を使うものはいないが、術を封じ込めた魔石を体に埋める事で術を扱う事が出来る。魔力・法力回路を持たない人間でも有効だ。術を使う瞬間しか魔力は発動しない。それならアンタの精霊眼も出し抜ける可能性がある。
ただ魔石を体に埋め込むのはとんでもない痛みが伴う。おそらく埋め込まれた場所は常に激痛があるはずだ。熱もあるだろうな。
正直なところ毒にやられたのなら毒消し草を使うか、法術師に【解毒】の法術をかけて貰う方がよっぽど楽だ。そもそも高額な魔石を買ってまでやることでは無い。
なら考えられるのは魔石を用立てられる程の資金を持った存在と、デメリットを覚悟して迄魔石を体に埋め込んでまで毒見をしなければならない存在が居ると考えるべきか…」
サイヒの説明にルークとクオンは顔色を蒼くしている。
もしこれが事実なら、何という執念か。
「あの少年がそんな惨い真似を……」
ルークが悲痛な表情を浮かべる。
毒を摂取させられた事より、そのために人が傷ついたことに心を痛めることができる人間なのだ。
だからこそサイヒはルークの事が気に入っている。
そしてクオンの脳内は1人の男の存在でいっぱいになっていた。
ルークが死んで得をする者。
魔石を秘密裏に用意できる資産と権力を持つ者。
己が1番警戒しつづけた危険人物。
アンドゥアイスの存在がクオンの頭に浮かび上がる。
「サイヒと言ったな。お前の力を殿下のために貸して欲しい」
クオンはサイヒを一先ず敵ではないと位置付けた。
怪しさは拭えない。
だがそれ以上に味方に引き込めることが出来たならこれ以上の力の持ち主など存在しないだろう。
ルークを護るためなら私情は今は捨てるべきだ。
だからクオンはサイヒに助力を求めた。
「ルークの身の危険がかかっているからな。私で良ければいくらでも力を貸そう。今までルークが正体を隠していたから、あまり深くは関われなかったが今なら別だ。ルークを狙う輩、見つけるのを手伝おう」
こうしてルークの命を狙うものを一掃すべく、クオンはサイヒと手を組むことを決断した。
この目の前の宦官が敵か味方か分からない。
敵ならば速やかに処理しなければならない。
だがもし味方なら?
サイヒの魔術の能力はクオンの精霊眼をも上回る。
味方に出来るならこれ程力強い者はいない。
ただでさえ今政権は2つに分かれようとしているのだ。
ルークは兄の様に慕っているが、従兄弟であるアンドゥアイスをクオンは信用していなかった。
アンドゥアイスはあまりにも完璧だ。
貴族たちにはアンドゥアイスを皇帝にと望む者も存在する。
アンドゥアイス自身は己はルークの補佐として国を支えると宣言しているが、クオンはその言葉を信用出来ない。
清廉潔白の身なら、何故時折その体に暗い魔力粒子を纏わせているのか?
アレは間違いなく”負”の魔術の残り香だ。
精霊眼を持つクオンだからこそ見抜くことが出来た。
しかしクオンが声を上げたとて、アンドゥアイスはすでに皆から支持を受けている。
口に出せば下手をしたら不敬罪でクオンが処理されるだろう。
それではルークを護ることが出来ない。
何か決定的な証拠があればクオンも動くことが出来るのだが。
何よりルーク自身がアンドゥアイスを慕っていることが糾弾出来ない1番の理由であった。
(もしこの宦官が本当に殿下のに好意を抱いているなら、味方としては申し分ないのだが…)
「どうしたクオン、顔が怖いぞ」
「殿下は呑気で良いですね…」
「失礼な。これでも私は皇太子としての務めは果たしているつもりだぞ?」
「まぁ皇太子としての働きは申し分ないのですが…仕事を離れるとマイペースですからね。普段からもう少し気を張って頂きたいのですが……最近は出歩くようになったとは言え、少し前まではずっと自室に籠りきりできたからね……」
はぁ、と溜息をつくクオンにサイヒが否定の言葉をあげた。
「それは仕方ない。むしろあれだけ体が毒に侵されて、良く皇太子としての務めを果たせていたと思うぞ?」
「毒?」
「そう毒だ。随分内臓が侵されていた。ほおっておいたら後1年もルークは生きられなかったはずだ。よくアレで誰にも気づかせずに公務を務めあげていたものだ」
「毒など…俺の精霊眼でも殿下に呪いも【毒】の魔術もかけられてはいなかったぞ?」
「あぁ、アンタは精霊眼があるからソレに頼り過ぎているな。毒と言っても魔術は関係ない。ポピュラーに使われる一般的な経口摂取するタイプの毒だ。おそらく毒を摂取させられているのに気づかせないために、何年もかけて微量を体に蓄積させるようにしていたのだろうな」
サイヒの言葉にクオンの顔が蒼ざめる。
もしこの言葉が真実ならルークの敵は既に身近にいる事となる。
「殿下!真実なのですか!?」
「私自身にも自覚は無かったがサイヒの言うことは真実だと思っている。サイヒと出会ったのも、この場で倒れている私をサイヒが助けてくれたのが始まりだ」
「大したことはしておらんぞ?あまりに弱っていたから【解毒】【治癒】【体力回復】の法術をかけただけだ」
「法術?お前は魔術師ではないのか!?」
「一応、魔術も法術も扱える」
「サイヒは術なしでの戦闘でも凄いのだぞ!」
何故かルークが自慢げである。
「魔術と法術が使える?ではお前は”賢者”なのか!?」
クオンが驚きの声をあげる。
魔術師と賢者では話が違い過ぎる。
賢者など大陸中を探しても両手で足りるかどうかの人数しか存在しないのだ。
その賢者が後宮に潜り込んでいる?
全くもって意味が分からない。
「ルーク、私は賢者なのか?」
「クオンが言うならそうではないだろうか?」
2人して首を傾げる。
「賢者なら俺の目で見抜けないのもわかる。それより、本当に殿下は毒に侵されていたのか?」
クオンの問いに答えたのはルークだった。
「ずっと黙ってはいたが、日常生活をこなすだけで体中に激痛が走るくらいには辛かったな」
「何故おっしゃってくれなかったのですか!?」
「医者に体を見せても問題ないと言われていたからな。時間が解決するだろうとほおっておいた。まさか自分の寿命が後1年まで弱っているとは思わなかったがな」
ルークが自嘲気味に笑う。
「今でも何らかの形で毒を摂取せさられているぞ。毎日の昼寝は【解毒】と【体力回復】の法術をけかけるためにしている日課だからな」
「なっ、今でも毎日!?」
「ルークは毒に慣れ過ぎて1日くらいなら毒が体に入っても無自覚だからな…昼寝と言う形で毎日術をかけているが、もう少し自衛の手段を身に着けるべきだな。前に言っていた法術の訓練も武道大会が終わったら本格的に始めよう」
「それは楽しみだな」
呑気に笑っている2人を見ながらも、クオンは足元が崩れて落ちていくような感覚を味わった。
自分の仕えている主が毒に侵されていた?
残りの寿命が後1年だった?
クオンは己の持てる力の限りルークを護ってきたつもりだ。
つもりだった。
だが現実には全然護れていなかったのだ。
「では誰がどのように毒を……?」
「普通に考えて飲食物に紛れ込ませていたのだと考えるのが当たりだろうな」
「しかし殿下には専用の毒見役が付いている。あの毒見役から魔力は検知できない。どう解毒を行っていたと言うのだ?もう5年も殿下専用の毒見をはたしているのだぞ?」
「毎日摂取するのは本当に少しずつだからな。【解毒】の術を使わなくても後で毒消し草を使っていたか?」
「いや、それなら監視にバレるはずだ」
クオンが答える。
「なら思いつくのは魔石だな」
「「魔石?」」
ルークとクオンの声が重なる。
「本来デメリットが多すぎてそんな手段を使うものはいないが、術を封じ込めた魔石を体に埋める事で術を扱う事が出来る。魔力・法力回路を持たない人間でも有効だ。術を使う瞬間しか魔力は発動しない。それならアンタの精霊眼も出し抜ける可能性がある。
ただ魔石を体に埋め込むのはとんでもない痛みが伴う。おそらく埋め込まれた場所は常に激痛があるはずだ。熱もあるだろうな。
正直なところ毒にやられたのなら毒消し草を使うか、法術師に【解毒】の法術をかけて貰う方がよっぽど楽だ。そもそも高額な魔石を買ってまでやることでは無い。
なら考えられるのは魔石を用立てられる程の資金を持った存在と、デメリットを覚悟して迄魔石を体に埋め込んでまで毒見をしなければならない存在が居ると考えるべきか…」
サイヒの説明にルークとクオンは顔色を蒼くしている。
もしこれが事実なら、何という執念か。
「あの少年がそんな惨い真似を……」
ルークが悲痛な表情を浮かべる。
毒を摂取させられた事より、そのために人が傷ついたことに心を痛めることができる人間なのだ。
だからこそサイヒはルークの事が気に入っている。
そしてクオンの脳内は1人の男の存在でいっぱいになっていた。
ルークが死んで得をする者。
魔石を秘密裏に用意できる資産と権力を持つ者。
己が1番警戒しつづけた危険人物。
アンドゥアイスの存在がクオンの頭に浮かび上がる。
「サイヒと言ったな。お前の力を殿下のために貸して欲しい」
クオンはサイヒを一先ず敵ではないと位置付けた。
怪しさは拭えない。
だがそれ以上に味方に引き込めることが出来たならこれ以上の力の持ち主など存在しないだろう。
ルークを護るためなら私情は今は捨てるべきだ。
だからクオンはサイヒに助力を求めた。
「ルークの身の危険がかかっているからな。私で良ければいくらでも力を貸そう。今までルークが正体を隠していたから、あまり深くは関われなかったが今なら別だ。ルークを狙う輩、見つけるのを手伝おう」
こうしてルークの命を狙うものを一掃すべく、クオンはサイヒと手を組むことを決断した。
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