30 / 297
【28話】
しおりを挟む
建国祭まであと5日。
王都は活気づいて来ている。
勿論後宮も活気づいている。
何せ年に何度も無い婚活の場でもあるもので。
当日どの衣装を着ようかと張り切る女性たちを見るのも良いものだ。
恋に酔いしれる女性は美しいとサイヒは思っているので中々に気分は良い。
「楽しそうだなサイヒ」
ルークがジトリとした目でサイヒを見る。
サイヒが後宮の女官たちがはしゃいでいる様子を楽し気に見ているのがお気にさわったらしい。
「恋する女性は魅力的ではないか?」
「私は特にそう思わない」
頬を膨らますルークにサイヒがクスクスと笑う。
「むくれるな。1番可愛いのはお前だよルーク」
「サイヒ、其方は可愛いと言っていれば私の機嫌が良くなると思っていないか?」
「ふむ、本音なのだがルークが嫌なら止めるぞ?」
「い、嫌ではない……」
「そうか、それは良かった。私も自分の気持ちに嘘はつきたくないからな。可愛いと思ったら可愛いと言うのが私の主義だ。そして私はルークを可愛いと思っているので、可愛いと言えないのは辛いからな」
「も、もうそれ以上はいい……」
ルークの顔が耳まで真っ赤になる。
ついつい緩みそうになる顔を我慢するだけでルークはいっぱいいっぱいだ。
そんな付き合いたてのな恋人同士のような光景を、微笑ましくホストであるマロン、従者のクオン、そして使用人たちが見ている。
「今日もルーク様は初々しいですわね。一向にお兄様の言動に慣れずに振り回されている様が可愛いですわ。そう思いませんかコーン様?」
「私はマロン妃の方が可愛いと思いますが……」ボソリ
「何か言いましたかコーン様?」
「い、いえ。今日もマロン妃の淹れて下さるお茶は美味しいですね」
「ふふふ、そう言って頂けるのが一番のご褒美です」
ニコニコ微笑むマロンをクオンは優し気な目で見つめる。
(愛らしく優しく家庭的で料理も上手く、天使ですか?マロン妃は後宮に舞い降りた天使ですか!?確かにサイヒは見目麗しいが男でしょうに、何故に殿下は男に走ることになったのか…私なら絶対にマロン妃を選ぶ。まぁ人の恋路に口を出すのは余計な世話だろうが、殿下は後継者をどうするつもりなのか?サイヒとの間には子は作れないぞ、男同士なのだから……)
クオンの胸中も中々に荒ぶっている。
すでにクオンの中ではマロンがルークの妻であると言うことは胸の片隅に追いやられている。
仕方も無いだろう。
とうのルークが同性相手に夢中で顔を赤くしているのだから。
言動も乙女である。
正直、後宮はサイヒとの逢引きの場でしかない。
どやってコレを誰かの夫と思えようか?
「そう言えばお兄様は本名で武道大会にエントリーなされたのですか?」
「いや、それは問題があると思って偽名にしておいた。”リリー・オブ・ザ・ヴァリー”だ」
「あら可愛らしいお名前なのですね」
「本名から離れているといざと言うとき呼ばれても反応出来ないからな」
「本名からもじりましたの?」
「あぁ」
「そう言えば私、お兄様のフルネーム知りませんわ」
「まぁわざと隠しているからな。追手に居場所をバレる訳にはいかない」
「「「追手!?」」」
ルークとクオンとマロンの声がはもる。
「サイヒ、お前どんな罪状を犯した!?女性の恨みは恐ろしいぞ!」
「お兄様!どこの女性たちを誑かしたのですか!?」
「サイヒがそんなに多数の女性に追われているなんて…私が絶対に無罪にしてみせるからな!!」
クオンとマロンが身を乗り出してサイヒに迫る。
ルークはふらりと倒れそうになりながらも職権乱用をしようとしている。
何故か皆して”サイヒが女性を誘惑した”と言うのが決定事項になっているのは何故であろうか。
「別に悪い事はしていないがな…居場所がばれたら連れ戻されかねん程度には捜索されているであろうから身は隠しておきたい。それにルークの傍を離れんと誓ったしな」
「そう言えば誓いの柱が上がっていたな」
「やはりコーンには見えたか」
「あんな派手な誓いの柱は始めて見た」
「私とサイヒが互いが半身であると言う誓いだ」
エメラルド色の瞳をウルウルとさせ、うっとりとルークが言う。
うん、コレは乙女だ。
クオンは出来るだけ視界に入れないよう心掛けた。
真正面から見て胃が痛むのは避けたいのだ。
「あ、”リリー”で思い出しました。お兄様のと同じように花から名前を取る国がありましたよね?確か建国祭に招かれている隣国の王太子様とその伴侶の聖女様の名前も花の名前だった気がします」
「何?カカンから王太子と聖女が来るのか!?」
「どうした驚いて?サイヒが驚いてるのを見たのは初めて見るな。でもソレも格好良い……」
ルークの最後のセリフは小声なので周りには聞こえていない。
聞こえていたら又クオンの胃が痛くなっていた事だろう。
「あぁ、カカンはローズ王太子が婚姻を結んだら王位を譲り受けるからな。隣国同士ここいらで交友を深めようと陛下が建国祭に招いた。カカンはガフティラベルの大きさには負けるが大国だからな。しかも1000年もの間国が傾いたことも無い。力ある国とは友好関係を結んでおきたいと言ったところだろう」
「花と美の国カカン、平和でいたるところに花が咲き誇る国なんですよね。何時か行ってみたいものです」
マロンが手を頬にあてて顔を綻ばせる。
(俺も1度行った事あるが確かに美しく、平和でありながら活気づいた国だったな。マロン妃を是非連れて行ってあげたいものだ。きっとお気にいるだろう)
「私もサイヒと行ってみたいな」
「カカンか…嫌でもそのうちに行く羽目になるだろうがな……」
ルークの言葉にサイヒは誰にも気づかれない程度の小さな溜息を吐く。
【認識阻害】を使っていても姉に正体を隠せる気がしない。
そしてサイヒはシスコンなのだ。
愛する姉を目の前にして接触を計らずにいることは出来ないだろう。
なにせ姉のマーガレットはサイヒにとって世界で2番目に愛おしい存在だ。
1番目は誰かと聞くのはクオンの胃の為にも止めておくべきであろう。
だが避けていた祖国だがルークが行ってみたいと言いうなら連れて行ってやりたいと思う。
サイヒとて祖国に愛着がある。
その祖国をルークが気に入ってくれるなら喜ばしいことだ。
既に己は半身であるルークと共にガフティラベル帝国に骨を埋めるつもりであったが、ルークにはあの花が咲き誇る国は良く似合うだろう。
サイヒは花に囲まれ笑顔を浮かべるルークを想像して、甘く疼く心を心地よく感じた。
その甘い疼きが何なのかは今のサイヒには分からない。
何時か分かる時が来るだろうが、それはしばらく先の事になりそうである。
王都は活気づいて来ている。
勿論後宮も活気づいている。
何せ年に何度も無い婚活の場でもあるもので。
当日どの衣装を着ようかと張り切る女性たちを見るのも良いものだ。
恋に酔いしれる女性は美しいとサイヒは思っているので中々に気分は良い。
「楽しそうだなサイヒ」
ルークがジトリとした目でサイヒを見る。
サイヒが後宮の女官たちがはしゃいでいる様子を楽し気に見ているのがお気にさわったらしい。
「恋する女性は魅力的ではないか?」
「私は特にそう思わない」
頬を膨らますルークにサイヒがクスクスと笑う。
「むくれるな。1番可愛いのはお前だよルーク」
「サイヒ、其方は可愛いと言っていれば私の機嫌が良くなると思っていないか?」
「ふむ、本音なのだがルークが嫌なら止めるぞ?」
「い、嫌ではない……」
「そうか、それは良かった。私も自分の気持ちに嘘はつきたくないからな。可愛いと思ったら可愛いと言うのが私の主義だ。そして私はルークを可愛いと思っているので、可愛いと言えないのは辛いからな」
「も、もうそれ以上はいい……」
ルークの顔が耳まで真っ赤になる。
ついつい緩みそうになる顔を我慢するだけでルークはいっぱいいっぱいだ。
そんな付き合いたてのな恋人同士のような光景を、微笑ましくホストであるマロン、従者のクオン、そして使用人たちが見ている。
「今日もルーク様は初々しいですわね。一向にお兄様の言動に慣れずに振り回されている様が可愛いですわ。そう思いませんかコーン様?」
「私はマロン妃の方が可愛いと思いますが……」ボソリ
「何か言いましたかコーン様?」
「い、いえ。今日もマロン妃の淹れて下さるお茶は美味しいですね」
「ふふふ、そう言って頂けるのが一番のご褒美です」
ニコニコ微笑むマロンをクオンは優し気な目で見つめる。
(愛らしく優しく家庭的で料理も上手く、天使ですか?マロン妃は後宮に舞い降りた天使ですか!?確かにサイヒは見目麗しいが男でしょうに、何故に殿下は男に走ることになったのか…私なら絶対にマロン妃を選ぶ。まぁ人の恋路に口を出すのは余計な世話だろうが、殿下は後継者をどうするつもりなのか?サイヒとの間には子は作れないぞ、男同士なのだから……)
クオンの胸中も中々に荒ぶっている。
すでにクオンの中ではマロンがルークの妻であると言うことは胸の片隅に追いやられている。
仕方も無いだろう。
とうのルークが同性相手に夢中で顔を赤くしているのだから。
言動も乙女である。
正直、後宮はサイヒとの逢引きの場でしかない。
どやってコレを誰かの夫と思えようか?
「そう言えばお兄様は本名で武道大会にエントリーなされたのですか?」
「いや、それは問題があると思って偽名にしておいた。”リリー・オブ・ザ・ヴァリー”だ」
「あら可愛らしいお名前なのですね」
「本名から離れているといざと言うとき呼ばれても反応出来ないからな」
「本名からもじりましたの?」
「あぁ」
「そう言えば私、お兄様のフルネーム知りませんわ」
「まぁわざと隠しているからな。追手に居場所をバレる訳にはいかない」
「「「追手!?」」」
ルークとクオンとマロンの声がはもる。
「サイヒ、お前どんな罪状を犯した!?女性の恨みは恐ろしいぞ!」
「お兄様!どこの女性たちを誑かしたのですか!?」
「サイヒがそんなに多数の女性に追われているなんて…私が絶対に無罪にしてみせるからな!!」
クオンとマロンが身を乗り出してサイヒに迫る。
ルークはふらりと倒れそうになりながらも職権乱用をしようとしている。
何故か皆して”サイヒが女性を誘惑した”と言うのが決定事項になっているのは何故であろうか。
「別に悪い事はしていないがな…居場所がばれたら連れ戻されかねん程度には捜索されているであろうから身は隠しておきたい。それにルークの傍を離れんと誓ったしな」
「そう言えば誓いの柱が上がっていたな」
「やはりコーンには見えたか」
「あんな派手な誓いの柱は始めて見た」
「私とサイヒが互いが半身であると言う誓いだ」
エメラルド色の瞳をウルウルとさせ、うっとりとルークが言う。
うん、コレは乙女だ。
クオンは出来るだけ視界に入れないよう心掛けた。
真正面から見て胃が痛むのは避けたいのだ。
「あ、”リリー”で思い出しました。お兄様のと同じように花から名前を取る国がありましたよね?確か建国祭に招かれている隣国の王太子様とその伴侶の聖女様の名前も花の名前だった気がします」
「何?カカンから王太子と聖女が来るのか!?」
「どうした驚いて?サイヒが驚いてるのを見たのは初めて見るな。でもソレも格好良い……」
ルークの最後のセリフは小声なので周りには聞こえていない。
聞こえていたら又クオンの胃が痛くなっていた事だろう。
「あぁ、カカンはローズ王太子が婚姻を結んだら王位を譲り受けるからな。隣国同士ここいらで交友を深めようと陛下が建国祭に招いた。カカンはガフティラベルの大きさには負けるが大国だからな。しかも1000年もの間国が傾いたことも無い。力ある国とは友好関係を結んでおきたいと言ったところだろう」
「花と美の国カカン、平和でいたるところに花が咲き誇る国なんですよね。何時か行ってみたいものです」
マロンが手を頬にあてて顔を綻ばせる。
(俺も1度行った事あるが確かに美しく、平和でありながら活気づいた国だったな。マロン妃を是非連れて行ってあげたいものだ。きっとお気にいるだろう)
「私もサイヒと行ってみたいな」
「カカンか…嫌でもそのうちに行く羽目になるだろうがな……」
ルークの言葉にサイヒは誰にも気づかれない程度の小さな溜息を吐く。
【認識阻害】を使っていても姉に正体を隠せる気がしない。
そしてサイヒはシスコンなのだ。
愛する姉を目の前にして接触を計らずにいることは出来ないだろう。
なにせ姉のマーガレットはサイヒにとって世界で2番目に愛おしい存在だ。
1番目は誰かと聞くのはクオンの胃の為にも止めておくべきであろう。
だが避けていた祖国だがルークが行ってみたいと言いうなら連れて行ってやりたいと思う。
サイヒとて祖国に愛着がある。
その祖国をルークが気に入ってくれるなら喜ばしいことだ。
既に己は半身であるルークと共にガフティラベル帝国に骨を埋めるつもりであったが、ルークにはあの花が咲き誇る国は良く似合うだろう。
サイヒは花に囲まれ笑顔を浮かべるルークを想像して、甘く疼く心を心地よく感じた。
その甘い疼きが何なのかは今のサイヒには分からない。
何時か分かる時が来るだろうが、それはしばらく先の事になりそうである。
35
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました
夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。
全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。
持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……?
これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる