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【55話】
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ルークがクオンの部屋に飛び込んできて1時間。
クオンによるルークへの説明が終わった。
「では兄さんはずっと私の事を護ってくれていたと…」
「些か穏便ではない手ではありますがね」
「ルーク…僕の事は許さなくて良いから、サイヒの事は疑わないで……」
アンドュアイスがサイヒの服の裾を掴みながら勇気を振り絞ってルークに話しかける。
「サイヒを疑う?大丈夫ですよ、私とサイヒは半身同士です。疑うことなどありません」
そう言ったルークのアンドュアイスを見る目は冷たい。
思わずアンドュアイスが恐怖を抱き、サイヒに身を近づけてしまうほどには。
それが悪循環だとは気付きもせず。
アンドュアイスにとってサイヒは初めて自分を欲の為に近づかない、心を開いてよい保護者なのだ。
無意識にその存在に身を預けようとした事を誰が責められようか?
「ルーク、サイヒを嫌わない?」
「私がサイヒを嫌うなどありえません。勿論兄さんの事を嫌ったこともありませんよ。今までずっと尊敬しておりました。嫌う何てありませんでしたよ、今までは」
微笑みながらそう言う、そのルークの言い分にクオンは眉をしかめた。
どう見てもアンドュアイスはサイヒに懐いているし、サイヒもアンドュアイスを庇護対象として見ている。
それは誰の目から見ても明らかであっただろう。
勿論ルークの目から見ても。
(サイヒの誑しの能力が悪い方に転がったな……)
ルークは冷徹な皇太子を演じていたが誰かに嫌悪の目を向けた事は無い。
仕事の為含んだ言葉を使う事はあれど、誰かに悪意のある言葉を吐いたことは無い。
少なくともルークを良く知るクオンはそう見て来た。
だが今のルークはその目の奥に剣呑な光が宿っている。
先程の言葉も、上部では拒否をしていないが言い返せば「これからは違う」と言う言葉だ。
ルークはアンドュアイスを敵と認識している。
サイヒを奪った敵として。
これは雄の本能だろう。
いくらルークの思考回路が乙女のようでも、ルークは成人した男なのだ。
自分の雌に近づく別の雄を排除したくなるのは最早本能だ。
「もう夜も遅い。私は宿舎に帰る。クオン、アンドュを頼んだぞ」
「おい、サイヒちょ、待てっ!」
言うが否や【空間転移】でサイヒはその姿を消す。
「兄さんをクオンに託すのだな、サイヒ」
いつもは澄んだエメラルドの瞳が、こんなに濁って見えるのは初めてだとクオンは恐怖すら感じた。
:::
「ただいま、サイヒ。入るぞ」
昨夜の事は何も無かったかのようにルークはサイヒの部屋へ何時もの様に訪れた。
「お帰り、ルーク。おいで」
ルークがサイヒに覆いかぶさる。
これは普段とは体勢が逆だ。
普段はルークがサイヒに組み敷かれている。
だが今日はルークがサイヒを逃さないと言うように、その身に覆いかぶさっていた。
深い口付けを交わし、サイヒの法術を直接ルークの体内に流し込む。
この瞬間がルークは好きだった。
愛する者の一部が体に流れ込んでくる感覚。
だが今日はそれだけでは足りない。
「サイヒ、もっと其方を私にくれ」
ビッ、と宦官用の衣装を開けさせる。
サイヒの晒を巻いた上半身が露になった。
「ルーク、ちょっと待て!」
ルークがサイヒの肌に所有印を付けていく。
コレは自分の物だと言うように。
己の袖に仕込んであった短剣を抜き、サイヒの晒さえ千切り離す。
サイヒの胸が露になった。
その膨らみにルークは手を伸ばす。
パァッン!
ルークの頬に痛みが走った。
下を見れば恥じらう様子もないサイヒが手を上げていた。
その光景に思考がようやく追いつく。
ルークはサイヒに頬を叩かれたのだ。
「そこまでして良いとは言っていないぞ?」
「私を拒むのか、サイヒ……」
「少なくとも今はな。当て付けと確認のために体を開いてやるほど私は優しくない」
「そんなものでは無い!私はただ、サイヒが欲しいだけだ!!」
「自分の居場所がアンドュに取られていないか確認したいだけだろう?私がどれだけ自分を許してくれるのか試してみたいだけだろう?そんなものは勘弁被る」
「違う!」
「違わないな。それで私がここで体を開いたら「ルークがアンドュを快く受け入れるために身を捧げたのだ」と思うのではないか、なぁルーク?」
「あ、そんな…つもりで、は……」
パチン、とサイヒが指を鳴らす。
破かれた衣服は復元し、曝け出された肌を隠してしまった。
「これでも私は恋愛結婚に夢見る乙女なのだ。初めては好きな相手とムードのある場所でエスコートして貰いながら、と決めている。少なくとも今はそのシチュエーションでは無いな」
固まっているルークを押しのけて、サイヒは部屋の中にある荷物をカバンに詰め込みだした。
「サイヒ、何を……?」
「私が居たら物事がスムーズに進まないようだからな、しばらく旅に出る。お前が目を覚ましたら戻ってくる。それまではお預けだ。私が早く戻ってくれるよう、お前の目が真実を見て受け入れる様になる日を心待ちにしているよルーク」
「待ってくれサイヒ!!」
ルークの叫びもむなしく、サイヒは【空間転移】で姿をくらませてしまった。
残されたルークはエメラルドの瞳からポロポロ涙を零れさす。
己の取った行動を後悔して。
己が早まったが為に、半身を失ってしまった事実。
後悔の念がルークの心を沈め込んだ。
表情も無くただ涙を流す姿が、兄と慕ったアンドュアイスによく似ていた。
サイヒが居たら教えてくれただろう。
でもそのサイヒが今は居ない。
「私が悪かったから…戻って来てくれ、サイヒ……」
サイヒの匂いが残るシーツを抱きしめてルークは、クオンが迎えに来るまでピクリとも動かなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
野獣ルーク期待していた方すみません。
一瞬だけ野獣がチラッと顔を出しましたが…|д゚)チラッ
やっぱりサイヒには敵いませんでした。
まぁ初めてが強〇にならなくて良かったです。
サイヒは結構ルークに厳しいのかも知れません。
闇堕ち何て簡単にさせてくれない女ですから!
PS
サイヒの家出状況が知りたい方は、良ければ「聖女が今日もウザいです~」に目を通してみて下さい☆
クオンによるルークへの説明が終わった。
「では兄さんはずっと私の事を護ってくれていたと…」
「些か穏便ではない手ではありますがね」
「ルーク…僕の事は許さなくて良いから、サイヒの事は疑わないで……」
アンドュアイスがサイヒの服の裾を掴みながら勇気を振り絞ってルークに話しかける。
「サイヒを疑う?大丈夫ですよ、私とサイヒは半身同士です。疑うことなどありません」
そう言ったルークのアンドュアイスを見る目は冷たい。
思わずアンドュアイスが恐怖を抱き、サイヒに身を近づけてしまうほどには。
それが悪循環だとは気付きもせず。
アンドュアイスにとってサイヒは初めて自分を欲の為に近づかない、心を開いてよい保護者なのだ。
無意識にその存在に身を預けようとした事を誰が責められようか?
「ルーク、サイヒを嫌わない?」
「私がサイヒを嫌うなどありえません。勿論兄さんの事を嫌ったこともありませんよ。今までずっと尊敬しておりました。嫌う何てありませんでしたよ、今までは」
微笑みながらそう言う、そのルークの言い分にクオンは眉をしかめた。
どう見てもアンドュアイスはサイヒに懐いているし、サイヒもアンドュアイスを庇護対象として見ている。
それは誰の目から見ても明らかであっただろう。
勿論ルークの目から見ても。
(サイヒの誑しの能力が悪い方に転がったな……)
ルークは冷徹な皇太子を演じていたが誰かに嫌悪の目を向けた事は無い。
仕事の為含んだ言葉を使う事はあれど、誰かに悪意のある言葉を吐いたことは無い。
少なくともルークを良く知るクオンはそう見て来た。
だが今のルークはその目の奥に剣呑な光が宿っている。
先程の言葉も、上部では拒否をしていないが言い返せば「これからは違う」と言う言葉だ。
ルークはアンドュアイスを敵と認識している。
サイヒを奪った敵として。
これは雄の本能だろう。
いくらルークの思考回路が乙女のようでも、ルークは成人した男なのだ。
自分の雌に近づく別の雄を排除したくなるのは最早本能だ。
「もう夜も遅い。私は宿舎に帰る。クオン、アンドュを頼んだぞ」
「おい、サイヒちょ、待てっ!」
言うが否や【空間転移】でサイヒはその姿を消す。
「兄さんをクオンに託すのだな、サイヒ」
いつもは澄んだエメラルドの瞳が、こんなに濁って見えるのは初めてだとクオンは恐怖すら感じた。
:::
「ただいま、サイヒ。入るぞ」
昨夜の事は何も無かったかのようにルークはサイヒの部屋へ何時もの様に訪れた。
「お帰り、ルーク。おいで」
ルークがサイヒに覆いかぶさる。
これは普段とは体勢が逆だ。
普段はルークがサイヒに組み敷かれている。
だが今日はルークがサイヒを逃さないと言うように、その身に覆いかぶさっていた。
深い口付けを交わし、サイヒの法術を直接ルークの体内に流し込む。
この瞬間がルークは好きだった。
愛する者の一部が体に流れ込んでくる感覚。
だが今日はそれだけでは足りない。
「サイヒ、もっと其方を私にくれ」
ビッ、と宦官用の衣装を開けさせる。
サイヒの晒を巻いた上半身が露になった。
「ルーク、ちょっと待て!」
ルークがサイヒの肌に所有印を付けていく。
コレは自分の物だと言うように。
己の袖に仕込んであった短剣を抜き、サイヒの晒さえ千切り離す。
サイヒの胸が露になった。
その膨らみにルークは手を伸ばす。
パァッン!
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その光景に思考がようやく追いつく。
ルークはサイヒに頬を叩かれたのだ。
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「違う!」
「違わないな。それで私がここで体を開いたら「ルークがアンドュを快く受け入れるために身を捧げたのだ」と思うのではないか、なぁルーク?」
「あ、そんな…つもりで、は……」
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「サイヒ、何を……?」
「私が居たら物事がスムーズに進まないようだからな、しばらく旅に出る。お前が目を覚ましたら戻ってくる。それまではお預けだ。私が早く戻ってくれるよう、お前の目が真実を見て受け入れる様になる日を心待ちにしているよルーク」
「待ってくれサイヒ!!」
ルークの叫びもむなしく、サイヒは【空間転移】で姿をくらませてしまった。
残されたルークはエメラルドの瞳からポロポロ涙を零れさす。
己の取った行動を後悔して。
己が早まったが為に、半身を失ってしまった事実。
後悔の念がルークの心を沈め込んだ。
表情も無くただ涙を流す姿が、兄と慕ったアンドュアイスによく似ていた。
サイヒが居たら教えてくれただろう。
でもそのサイヒが今は居ない。
「私が悪かったから…戻って来てくれ、サイヒ……」
サイヒの匂いが残るシーツを抱きしめてルークは、クオンが迎えに来るまでピクリとも動かなかった。
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野獣ルーク期待していた方すみません。
一瞬だけ野獣がチラッと顔を出しましたが…|д゚)チラッ
やっぱりサイヒには敵いませんでした。
まぁ初めてが強〇にならなくて良かったです。
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